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Ego Ella May

JazzSoul

Ego Ella May

Good Intentions

Believe UK / Silent Trade

Bandcamp

小川充 Mar 20,2026 UP

 ここ数年来で気になるUKの女性シンガー・ソングライターの名前を挙げると、ジョルジャ・スミス、ヤスミン・レイシー、クレオ・ソルなどの名前が挙げられる。ネオ・ソウルをベースに、ジャズやフォーク、レゲエなど幅広い流儀も持ち合わせ、ときにエレクトリックなアプローチを見せたり、R&Bやヒップホップなど現代的なサウンドとの相性も良いという人たちだ。エゴ・エラ・メイもそうしたうちのひとりである。UKの女性シンガー・ソングライターの源流にはリンダ・ルイスがいて、彼女はカリブをルーツに持つ黒人だった。UK、なかでもロンドンの音楽にはアフリカやカリブからの移民が深く関わっていて、それはシンガー・ソングライターの世界においても同様である。リンダ・ルイスの後継的な存在のコリーヌ・ベイリー・レイもカリビアン・ルーツであるし、2010年代に台頭してきたローラ・マヴーラやリアン・ラ・ハヴァスもそうである。エゴ・エラ・メイのルーツはアフリカのナイジェリアで、ラッパーのリトル・シムズと同じだ。父親がジャズのファンで、エラという名前は往年のジャズ・シンガーのエラ・フィッツジェラルドからとられたそうだが、そうして幼少期からジャズやゴスペルなどを聴いて育つなかで、アフリカというルーツも彼女の音楽性のDNAに刻みこまれていったことは想像に難くない。

 19歳の頃から独学でギターをマスターし、そしてビートメイクも習得して自身で音楽を作るようになった彼女は、ロンドンのICPM(The Institute of Contemporary Music Performance)に進学し、本格的に音楽を学ぶと同時に音楽仲間のコネクションを広げていった。そして、2013年に自主制作となるEPの「The Tree」を発表してデビューし、その後も2014年に「Breathing Underwater」、2015年に「Zero」をリリースしてキャリアを積んでいく。この頃のサウンドは、オーガニックなネオ・ソウルとジャズの折衷的なスタイルにエレクトリックな要素もブレンドしたもので、それが彼女の基本的なスタイルと言える。USのネオ・ソウルの源流であるエリカ・バドゥの影響が見られるのは当然ながら、アコースティックなジャズやソウルとエレクトリックなサウンドとのバランスでは、UKのファティマやヤスミン・レイシーなどのスタンスが近いのかなとも思う。

 そうしたエゴ・エラ・メイの本領発揮となるファースト・アルバム『So Far』(2019年)では、いろいろなプロデューサーたちとコラボするなか、ウー・ルー(Wu-Lu)との共演が目に留まった。彼は南ロンドン・シーンに深く関わるプロデューサーであり、エゴ・エラ・メイも当然その影響を受ける。そして、次作『Honey For Wounds』(2020年)ではジャズ・ミュージシャンとのコラボが目につき、アルファ・ミストジョー・アーモン・ジョーンズオスカー・ジェローム、エディ・ヒック、アシュリー・ヘンリー、シオ・クローカーらと共演しするわけだが、シオ・クローカーを除いて南ロンドンのジャズ・シーンで活躍する面々だ。また、『Honey For Wounds』においてはアフロ・ジャズ・バンドのヌビヤン・ツイストのリーダーであるトム・エクセルがプロデューサーとして参加していて、逆に彼女がヌビヤン・ツイストのアルバム『Freedom Fables』(2021年)で客演するなど、関係性を深めていく。ヌビヤン・ツイストはアフロビートを軸とする音楽性なので、エゴ・エラ・メイの音楽的ルーツとも好相性だったのだろう。

 エゴ・エラ・メイの新作『Good Intensions』は、彼女がこれまで組んできたプロデューサー/ミュージシャンと再びタッグを組む。ウー・ルー、アルファ・ミスト、ヤスミン・レイシーのプロデューサーとして知られるメロー・ゼッドなどがそうで、なかでもトム・エクセルがメイン・プロデューサーとして多くの作品に関わる。彼が関わる “What You Waiting For” はアフロとブロークンビーツが融合したようなリズムで、ヌビヤン・ツイストにも通じるような楽曲だ。同様にトム・エクセルのプロデュースによる “Footwork” はタイトルどおりフットワークのビートの作品で、これまでのエゴ・エラ・メイの作品中でも極めてエレクトリックなアプローチが強いものだ。この2曲からわかるように、『Good Intensions』はこれまでになくチャレンジングな作品ということがわかる。ウー・ルーが手掛ける “What We Do” はちょうど1990年代初頭のアシッド・ジャズを思わせるグルーヴィーな楽曲で、全体的にダンサブルなアプローチの楽曲が増えている印象だ。

 一方、“We’re Not Free” や “Tarot” はエゴ・エラ・メイ本来のオーガニックなテイストが出たアコースティック・ソウルで、“Hold On” はジャズとソウルのちょうど中間的な楽曲。“Back To Sea” や “Good Intentions” はギターの弾き語りによるフォーキーな楽曲で、“Love is a Heavy Thing” は往年のジャズ・シンガーのペギー・リーのようなコケティッシュな魅力の歌が印象的。“Pot Luck Baby” はチャールズ・ステップニーがプロデュースしたロータリー・コネクションを思わせる楽曲で、エゴ・エラ・メイの歌もミニー・リパートンを彷彿とさせるところがあって、そこにエリカ・バドゥのようなフレージングもミックスしているようだ。これらの楽曲ではエゴ・エラ・メイのシンガーとしての魅力が一段と深みを増している。

小川充