Home > Columns > Holy Tongue- UKダブを更新するバンド、ホーリー・タンの初来日公演
文:河村祐介
photo by changsu
Jul 24,2026 UP
6月10日(水)にて渋谷〈CLUB QUATTRO〉企画でおこなわれた〈Everything happens〉。現在のテクノとベース・ミュージックとモダン・ダブの汽水域において、いま最も先鋭的な作品をリリースするアル・ウートン、彼が率いるダブ・バンド、ホーリー・タン(Holy Tongue)を招き、そして国内のインディ/アンダーグラウンド・シーンからはバンド、D.A.N. とthe hatch、さらにはDJのMewをラインナップ。ダブの轟音とさまざまな要素が相対する刺激的なひと晩の体験となった。
本公演はロンドンと東京を拠点とするアート・プラットフォーム〈MODE〉と〈CLUB QUATTRO〉の連携によるもので、〈MODE〉の東京本公演となる6月6日(土)のLIQUIDROOMに出演するUKのレフトフィールド・ユニット、Moin。その大阪公演が大阪の〈CLUB QUATTRO〉にておこなわれ、さらにMoinのパーカッショニストのヴァレンティーナ・マガレッティ(Valentina Magaletti)も参加するホーリー・タンの初来日公演として、東京にて組まれたのが本公演だ(ちなみに大阪ではMoinのライヴの他に、以前に大阪でおこなわれたライヴがそのまま音源化されているヴァレンティーナと日野浩志郎のYPY名義のセッションもブックされていた)。と、ヴァレンティーナはいまや即興音楽~アヴァン・エレクトロニクスなどの分野で最も注目されているドラマー/パーカッショニストで、上記のようにアンダーグラウンドで先鋭的なダンス・ミュージックのプロデューサーであるアルが組んだ、しかもダブ・バンドということでダブ好きにとってまさに来日が待望したアーティストであった。

D.A.N.
この日のライヴのトップを飾ったのは、D.A.N.の3人。ここ最近の新曲 “Daydreaming” などにも反映されているように、比較的長尺な楽曲(今回は4曲)を幻想的に、そして圧倒的なスケールを描写して展開していくような感覚でライヴを展開。ビートレスからいつのまにか、その展開とともにグルーヴとともに広大な景色がひろがっていくようなライヴを披露し、表現力の豊かさを見せつける、強い没入感を持ったそんなライヴであった。

the hatch
次なるthe hatch。昨年ついに地元、札幌から東京に拠点を移したバンドで、ここ数年のアンダーグラウンドなシーンにおいて、バンドからDJカルチャーなどなどの交点として注目のバンドと言えるだろう。昨年リリースした『333』は、ノーウェイヴ~ポスト・パンクの痙攣するビート感がアフロ・ビートやラテンへと接続するエネルギッシュな音楽性を獲得していた。この日のライヴも『333』からの楽曲を中心に演奏し、めくるめく幾何学模様のように絡み合いながら展開するドラム、ベース、ギター、そしてパーカション、ときにそこに加わるヴォーカル、トロンボーン、SEシンセが、強力なリズムの磁場を作り出しながら転がっていく、そんなライヴを魅せ会場の熱量をひとつあげていった。

DJ Mew
またDJ Mewによるオープニング、そして各ライヴ・アクトの間のDJプレイも、本イベントには非常に重要な流れとして会場の空気感をひとつにつなげていた。極太なベースラインを伴ったベース・ミュージックやブロークン・テクノが、ときにトライバルに、ときに重いグルーヴを地響びきのように会場を包み込み、それぞれのバンドの存在感を見事に折衷していたと言えるだろう。

Holy Tongueのヴァレンティーナ・マガレッティ
そして初来日のホーリー・タンの登場である。前述のようにドラマーのヴァレンティーナ・マガレッティを中心に、そして向かって左側のベースには、2000年代にはディスコ・パンク・ユニット、Zongaminなどで活動していたススム・ムカイ、そして右側にはアルによるSEやサンプラーなどのエレクトロニクスと、ヴァレンティーナのドダムを生ダブ・ミックスという、3人編成。

Holy Tongueのススム・ムカイ
メタル・パーカッションの尋常ならざる手数と強力なグルーヴを生み出すヴァレンティーナのドラムと、そこに重なっていくムカイのミニマルなベースは、どこかジャマイカのレゲエのシンコペートするグルーヴ感というよりもCANのヤキ・リーベツァイトとホルガー・シューカイのリズム隊を想起させるモータリックな感覚すらあった。あくまでもシンプルに無骨に、ミニマルにループするムカイのベースライン、その上を跳ねるように疾走するヴァレンティーナの超絶ドラムというコントラストがバンドの骨格となる。そこにアルによる発信音やヴォイス・ループ、そしてヴァレンティーナのドラムにジャストのタイミングで絡んでいく深いリヴァーヴやエコー・フィードバックなどが、さらに疾走感を増していく。なんとなくヴァレンティーナのドラムをライヴ・ダブ・ミックスをというのがアルのこのプロジェクトのテーマであり、そのためのムカイのミニマルなベースラインということがよくわかるライヴでもあった。

Holy Tongueのアル・ウートン
ライヴに関しては『Live at Servant Jazz Quarters』というカセット作品が出ているが、それよりもさらに厚みをましてダイナミックに突き進んでいく感覚があった。UKらしいステッパー・リズムの楽曲へとさらにテンポ・アップすると会場からは歓声があがっていった。またサンプリング・ヴォイスなどに顔を覗かせるゴシック感はそれこそバンド化した直後のアンドリュー・ウェザオール率いるトゥー・ローン・ソーズメンなどをも想起させた。それこそポスト・パンクやインダストリル、ゴシック、テクノなどの要素を飲み込んだそのサウンドは、エイドリアン・シャーウッドによる開闢以来さまざまな音楽要素に浸食・拡張してきたUKダブの最新型と言えるだろう。ドラムとベース、そして最低限のサウンドがダブワイズでサイケデリックに響き渡るなかで、矢継ぎ早に圧倒的なグルーヴで怒濤のように進んで行った。まさに約1時間があっという間に過ぎ去ったライヴであった。
河村祐介/Yusuke Kawamura