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RIP

R.I.P. Miru Shinoda

R.I.P. Miru Shinoda

追悼:篠田ミル

小林拓音 photo by Yuichiro Noda   Jun 22,2026 UP

 突然の知らせに絶句する。去る6月20日土曜日、東京のバンド yahyel(ヤイエル)が声明を発表し、メンバーの篠田ミルが4月14日に亡くなっていたことが明らかになった。
 最近も『別冊ele-king 音楽は世界を変える』で取材したばかりだった。1992年生まれだから、まだ33歳か、34歳。あまりにも早すぎる逝去に動揺を隠せない。

 篠田ミルの音楽家としてのキャリアは2015年、まさにその yahyel をスタートするところからはじまっている。当時大学の仲間だった池貝峻(ヴォーカル)、杉本亘(シンセ/2019年脱退)、山田健人(VJ)らとともに結成された同バンドは、アンダーグラウンドのプロデューサーからシンガー・ソングライターへと転身したジェイムズ・ブレイクが大きな存在感を放っていた2010年代前半、その流れに連なるマウント・キンビーやホンネ、ライ、チェット・フェイカーといったアーティストから影響を受けていて、そうしたポスト・ダブステップとインディR&Bの合流をここ日本でも実現しようと奮闘する珍しいバンドだった。池貝によるブルージィなヴォーカルとIDM的なテクスチュアを特徴とする彼らのスタイルはファースト・アルバム『Flesh and Blood』(2016年)ですでに整えられ、以後セカンド・アルバム『Human』(2018年)やパンデミックの活動休止期間を挟んでからのサード・アルバム『Loves & Cults』(2023年)でますます洗練されていくことに。

 yahyel の復活と並走するかのように、2023年以降は篠田個人の動きも活性化していた。直近では butaji のアルバムでの仕事が耳に残るが、ラッパー ACE COOL の “虚無主義” をプロデュースしたり、2024年にはピアニストの原摩利彦とともにガザにまつわる共同プロジェクト「THEY ARE HERE」を始動させたりしつつ、相模原のベッドルーム・ラッパー、松永拓馬のアルバム『Epoch』を手がけてもいる。とくに後者、いい意味でつかみどころのない松永の発声を繊細な電子音でくるんでいく手腕は、パンデミック後のダンス・フィーヴァーにたいする解熱剤のようにも感じられた。
 そしてなにより2025年10月。篠田はEP「Pressure Field」で待望のソロ・デビューを果たしたばかりだった。これまでの経験を踏まえながら果敢にグリッチに挑んだ同作は、もしかしたら2020年代後半を牽引することになるかもしれない新たな電子音楽家の誕生を予感させるもので、じっさいこれは
ロレイン・ジェイムズの耳にとまり、去る11月28日のワットエヴァー・ザ・ウェザー東京公演では篠田が前座を務めるにいたっている(ちなみにこの日が、筆者が彼と直接対面した最後の日となってしまった)。

 もうひとつ、忘れてはならない功績がある。篠田が盟友 Mars89 らとともに2019年にはじめた抗議行動、〈Protest Rave〉だ。2003年のイラク反戦サウンドデモの精神を継承しつつ、渋谷や新宿のような超巨大繁華街、なかでもハチ公前、アルタ前、都庁前といったとりわけ目立つ場所で空間を占拠し、サウンドシステムを導入、メッセージとともに低音を轟かせる彼らは、文字どおり「一時的自律空間(T.A.Z.)」の紡ぎ手だろう。しかもそれを一回限りの記念イヴェントに留めることなく、こんにちまで継続しつづけてきている彼ら〈Protest Rave〉は、日本の音楽史および運動史における、けして小さくはない足跡のひとつとなっている。
 音楽家としても、ひとりの思惟する人間としても、いよいよこれからというタイミングだっただけに、ただただ残念でならない。

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