ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  2. Cornelius ──コーネリアスがさらなる新曲“Twisting & Glistening”を公開
  3. Beatrice M. - Sinking | ベアトリス・M
  4. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル
  5. Visible Cloaks - Paradessence | ヴィジブル・クロークス
  6. MariMari ——佐藤伸治がプロデュースした女性シンガーの作品がストリーミング配信
  7. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  8. YHWH Nailgun - Magazine | ヤハウェ・ネイルガン
  9. Cornelius ——コーネリアス、ニュー・アルバム『REFRACTIONS』の詳細を発表
  10. Ryo Isobe ——磯部涼の新著は『脱法』
  11. Columns Boards of Canada ボーズ・オブ・カナダの帰還  | ──その軌跡、その影響、そして13年ぶりの新作『Inferno』をめぐって
  12. Tadekui ──北海道出身の期待のバンド、タデクイのファースト・アルバムが全国流通開始&LPもリリース
  13. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  14. Columns #16:ワールドカップ2026 ──時代は変わった(日本代表のことではない)
  15. interview with Mouse on Mars 僕たちはダブを、ジャンルではなく社会的なものとして捉えたい | ——リー・ペリーとの共作を発表したマウス・オン・マーズ、インタヴュー
  16. Jeff Mills × Jun Togawa ──ジェフ・ミルズと戸川純によるコラボ曲がリリース
  17. AMBIENT KYOTO - TOKYO ——坂本龍一と高谷史郎による「async - immersion」がついに東京で開催
  18. FUTURE FREQUENCIES FESTIVAL 2026 ──新たなフェスティヴァルが始動、ジョイ・オービソンやザ・セイバーズ・オブ・パラダイス、ノウワーらが出演
  19. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  20. interview with Loraine James ロレイン・ジェイムズの“ポップ”な冒険 | ——来日直前インタヴュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Ebi Soda- Honk If You're Sad

Ebi Soda

DubJazz Funk

Ebi Soda

Honk If You're Sad

Tru Thoughts / ビート

小川充   Aug 04,2022 UP

 UKジャズの中心はロンドンで、ほかにマンチェスターやブリストルにもシーンは存在しているが、それら以外の都市からも面白いアーティストが登場している。そのひとつがブライトン出身のエビ・ソーダだ。ブライトンは英国の南部海岸沿いの街で、産業都市というよりもリゾート地として有名なのだが、そうした土地柄もあって昔から陽気なパーティー・ミュージックが盛んで、ナイトクラブも多い。トロピカルな南国調の音楽も根付いていて、レゲエやダブなども人気だ。ロンドンやマンチェスターをはじめ、UKの音楽には一般的にダークでシリアスなものが多いのだが、それらとは一線を画すムードがあるのがブライトンである。レーベルでは〈トゥルー・ソウツ〉が有名だろう。現在の〈トゥルー・ソウツ〉はムーンチャイルドをリリースするなどUK以外のアーティストも扱っているのだが、レーベル初期はボノボクアンティックという地元ブライトン出身アーティストが看板だった。中でもクアンティックはラテンやレゲエなどを取り入れた音楽性で、ブライトンらしいアーティストだったと言えよう。

 エビ・ソーダはブライトン出身の5人組で、リーダー格のヴィルヘルムことウィル・イートン(トロンボーン)ほか、コナー・ナイト(ギター)、ハリ・リー・イートン(ベース)、ルイス・ジェンキンス(キーボード)、サム・シュリック・デイヴィス(ドラムス)というメンバーに、楽曲によってサックスやトランペットなどが加わる。2019年にデビューした若いバンドで、これまでに『エビ・ソーダ』と『ベッドルーム・テープス』という2枚のEPや数枚のシングル、2020年にはファースト・アルバムとなる『アーグ』をリリースしている。デビュー作の『エビ・ソーダ』を聴いた印象では、ジャズ・ファンクをベースとしたソリッドなビートを刻むリズム・セクションは、ヒップホップやドラムンベースをはじめとしたクラブ・ミュージックの影響下にあるもので、南ロンドンの新世代ジャズと同じ地平にあるものだ。そうした中でトロンボーンが前面に出てきた演奏はレゲエやダブ、アフロ・ジャズの影響も感じさせ、南ロンドン勢で言うとサンズ・オブ・ケメットにも近いところがあるようだ。

 ファースト・アルバムやEPはロンドンのレーベルの〈ソーラ・テラ〉からのリリースで、ライヴ活動もロンドンで積極的におこなってきたエビ・ソーダだが、この度リリースしたセカンド・アルバム『ホンク・イフ・ユー・アー・サッド』は地元の〈トゥルー・ソウツ〉からとなる。『アーグ』では男女ヴォーカリストをフィーチャーしたよりクラブ・ミュージック寄りの作品もやっていたが、『ホンク・イフ・ユー・アー・サッド』はそもそもの原点であるインスト・バンドに立ち返ると同時に、厚みのあるホーン・セクションやチェロなども交え、全体的に深みを増した演奏を展開している。ゲストではヤズ・アーメッドの参加が目を引くところだ。

 そのヤズ・アーメッドが参加する “チャンドラー” は、重低音の効いたリズム・セクションとホーン群の情熱的な演奏にエレクトロニクスを交え、全体的にはダビーな空間構成がなされている。ダブの影響下にあると共に、クルアンビンとかテーム・インパラあたりに通じるサイケデリックな風味もまとった楽曲だ。“セウドクリーム” もダビーでサイケデリックな空間構築と、ジャズ・ファンクともクラウトロックともニューウェイヴともつかないミクスチャーな演奏が融合した楽曲。ココロコバッドバッドナットグッドローニン・アーケストラなど同時代のアーティストと共に、カン、ラウンジ・リザーズ、ザ・フォールなど過去のアーティストも影響減に挙げるエビ・ソーダならではの楽曲だ。“クリスマス・ライツ・イン・ジューン” は人力ドラムンベースや人力ダブステップ的なビートの楽曲で、ルーツ・レゲエやラスタファリズムに通じるミステリアスな音色をホーン・アンサンブルが奏でていく。ブライトンをベースとするエビ・ソーダの個性が前面に出た楽曲と言えるだろう。

小川充