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Ebi Soda

DubJazz Funk

Ebi Soda

Honk If You're Sad

Tru Thoughts / ビート

小川充   Aug 04,2022 UP

 UKジャズの中心はロンドンで、ほかにマンチェスターやブリストルにもシーンは存在しているが、それら以外の都市からも面白いアーティストが登場している。そのひとつがブライトン出身のエビ・ソーダだ。ブライトンは英国の南部海岸沿いの街で、産業都市というよりもリゾート地として有名なのだが、そうした土地柄もあって昔から陽気なパーティー・ミュージックが盛んで、ナイトクラブも多い。トロピカルな南国調の音楽も根付いていて、レゲエやダブなども人気だ。ロンドンやマンチェスターをはじめ、UKの音楽には一般的にダークでシリアスなものが多いのだが、それらとは一線を画すムードがあるのがブライトンである。レーベルでは〈トゥルー・ソウツ〉が有名だろう。現在の〈トゥルー・ソウツ〉はムーンチャイルドをリリースするなどUK以外のアーティストも扱っているのだが、レーベル初期はボノボやクアンティックという地元ブライトン出身アーティストが看板だった。中でもクアンティックはラテンやレゲエなどを取り入れた音楽性で、ブライトンらしいアーティストだったと言えよう。

 エビ・ソーダはブライトン出身の5人組で、リーダー格のヴィルヘルムことウィル・イートン(トロンボーン)ほか、コナー・ナイト(ギター)、ハリ・リー・イートン(ベース)、ルイス・ジェンキンス(キーボード)、サム・シュリック・デイヴィス(ドラムス)というメンバーに、楽曲によってサックスやトランペットなどが加わる。2019年にデビューした若いバンドで、これまでに『エビ・ソーダ』と『ベッドルーム・テープス』という2枚のEPや数枚のシングル、2020年にはファースト・アルバムとなる『アーグ』をリリースしている。デビュー作の『エビ・ソーダ』を聴いた印象では、ジャズ・ファンクをベースとしたソリッドなビートを刻むリズム・セクションは、ヒップホップやドラムンベースをはじめとしたクラブ・ミュージックの影響下にあるもので、南ロンドンの新世代ジャズと同じ地平にあるものだ。そうした中でトロンボーンが前面に出てきた演奏はレゲエやダブ、アフロ・ジャズの影響も感じさせ、南ロンドン勢で言うとサンズ・オブ・ケメットにも近いところがあるようだ。

 ファースト・アルバムやEPはロンドンのレーベルの〈ソーラ・テラ〉からのリリースで、ライヴ活動もロンドンで積極的におこなってきたエビ・ソーダだが、この度リリースしたセカンド・アルバム『ホンク・イフ・ユー・アー・サッド』は地元の〈トゥルー・ソウツ〉からとなる。『アーグ』では男女ヴォーカリストをフィーチャーしたよりクラブ・ミュージック寄りの作品もやっていたが、『ホンク・イフ・ユー・アー・サッド』はそもそもの原点であるインスト・バンドに立ち返ると同時に、厚みのあるホーン・セクションやチェロなども交え、全体的に深みを増した演奏を展開している。ゲストではヤズ・アーメッドの参加が目を引くところだ。

 そのヤズ・アーメッドが参加する “チャンドラー” は、重低音の効いたリズム・セクションとホーン群の情熱的な演奏にエレクトロニクスを交え、全体的にはダビーな空間構成がなされている。ダブの影響下にあると共に、クルアンビンとかテーム・インパラあたりに通じるサイケデリックな風味もまとった楽曲だ。“セウドクリーム” もダビーでサイケデリックな空間構築と、ジャズ・ファンクともクラウトロックともニューウェイヴともつかないミクスチャーな演奏が融合した楽曲。ココロコ、バッドバッドナットグッド、ローニン・アーケストラなど同時代のアーティストと共に、カン、ラウンジ・リザーズ、ザ・フォールなど過去のアーティストも影響減に挙げるエビ・ソーダならではの楽曲だ。“クリスマス・ライツ・イン・ジューン” は人力ドラムンベースや人力ダブステップ的なビートの楽曲で、ルーツ・レゲエやラスタファリズムに通じるミステリアスな音色をホーン・アンサンブルが奏でていく。ブライトンをベースとするエビ・ソーダの個性が前面に出た楽曲と言えるだろう。

小川充