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interview with HASE-T and Bose

interview with HASE-T and Bose

パンクからレゲエ/ヒップホップへ、それから30年後の “現代” へ

──80年代日本ラップ黎明期のリアルな物語をHASE-TとBoseが語る

 80年代後半からレゲエDeejayとして活躍してきたHASE-Tが、サウンド・プロデューサー活動25周年を記念したアルバム『Twenty Five』をリリースした。初めてアルバムを聴いたとき、夏の暑さにふらついた身体が、瞬く間に心地よいレゲエのリズムに救われ、気づくといい気分になっていた。「たのしいことだけしようよ」……1曲目の冒頭から言い放つその言葉からは、レゲエ・ミュージックを選んだHASE-Tの揺るぎない姿勢がうかがえる。
 もともと音楽への入り口はUKロック。そこからパンク経由でレゲエに出会ったというHASE-Tは、東京のアンダーグラウンド・クラブ・シーンでTAXI Hi-FiのメインDeejayとして活躍。80年代末期から90年半ばにかけてだろうか。ちょうどその頃は、ヒップホップではニュー・スクール、レゲエではダンスホールといった打ち込みを主体としたスタイルが人気を呼び、そして現場ではヒップホップとレゲエが融合していた時期。それに惹かれた人たちが東京のアンダーグラウンドなクラブに集まり、お互いを刺激し合いながら新しい音楽を生み出していた。それがいまに至る日本のヒップホップ/レゲエの音楽シーンの、ひとつの礎を築いたわけだけど、その頃から活動を続けてきたHASE-Tによる2026年のアンサーが、今作なのではないだろうか。
 アルバム『Twenty Five』では、軽快でグッとくるレゲエ・ミュージックのリズムに乗り、Bose(スチャダラパー)、ARARE、J-REXXX、ナツ・サマー、DOMINO-KAT、KAJA、津川ゆりあといった、HASE-Tとそれぞれ深い付き合いのある豪華キャストが客演。前作にも収録されていた “夕暮れサマー” はさらにアップデートされ、限定プレスの7インチでもリリースされた先行シングルでは、シティ・ポップの代表曲でもある竹内まりやの “プラスティック・ラブ” をレゲトン調でカヴァーした。
 そこで今回はアルバムの参加アーティストの中から、HASE-Tが音楽活動を始めた頃から友人としての付き合いが続いているスチャダラパーのBoseを招き、曲の魅力をはじめ、昔の話や最近感じていることなどを聞いてみた。

たんに現行のジャマイカのものを追っかけて、そこに寄せて作ることは考えてなくて、自分のフィルターを通して自分のやりたいことをやっているので、自分らしさが出ているアルバムなのかなとも。(HASE-T)

HASE-Tさん、プロデュース活動25周年おめでとうございます。振り返ってみて、25年間どんな時間を過ごされましたか?

HASE-T:ありがとうございます。なんかもがいてたら25年経っちゃったみたいな感じで、25周年を一言で言うと “あっという間” でしたね。今回は、とりあえず明るいアルバムにしたかったので、全体的に楽しい感じになってると思います。特に1曲目のBoseさんが参加してくれた “MONDAY TO SUNDAY feat. Bose, J-REXXX & Natsu Summer” なんかは、楽しい毎日を過ごしたいっていうキーワードで、各アーティストの気持ちを乗っけてもらいました。あとビートの感じはレゲエだったり、レゲエからちょっと外れてるものもあったり、通して聴いて飽きない感じにはなってるかなと思います。僕はたんに現行のジャマイカのものを追っかけて、そこに寄せて作ることは考えてなくて、自分のフィルターを通して自分のやりたいことをやっているので、自分らしさが出ているアルバムなのかなとも。

アルバムの冒頭から「楽しいことを考える」という言葉が耳に入ってきて、それでこちらも気持ちが上がりました。

Bose:楽しいのがいいに決まってるのに、でもなんか嫌なことばっかり聞こえてくるからね。ニュースとかさ。でもそれをなんとかユーモアで返すのがぼくらの仕事。おもろくしないと、つまんないなって。つまんない前提からスタートしてるから、なんかオモロくなんないかな? みたいな。それを作れたらいいよね。

その思考回路は大事ですね。

Bose:そうですよ。もうすべてにおいてそうやって生きるしかないと思うし。だからなんとかしてそれをオモロく返すっていうふうに頑張らないとっていう感じかなと思って。

HASE-T:今回の1曲目のBoseさんの歌詞は、植木等さんのからね。

Bose:ハナ肇とクレージーキャッツ(※忌野清志郎や大滝詠一に多大な影響を与えたことでも知られる)の “ウンジャラゲ” のオマージュですよ。「MONDAY TO SUNDAY」って聞いて、「月曜日はウンジャラゲ」って頭に浮かんじゃったから(笑)。

HASE-T:それが凄いなと思って。

Bose:そういうのって変わらないんだよね。なんか血肉化されていて、月曜日って言われたら「ウンジャラゲ」って言っちゃうんだよね(笑)。あれ志村けんさんで有名になったけど、本当はクレージーキャッツでやってた曲で、僕はクレージーキャッツのマニアだから、それが入ってくるといいなって思って。クレージーキャッツの歌詞こそがまさに都会っぽく皮肉ったり、面白かったりするんで、すごく合ってるなって。笑い飛ばすというかね、楽しくやろうよみたいな。

HASE-T:で、終わりもちゃんとクレイジー終わりで締めてもらってるんで。Boseさん、もう徹底してるなと。

曲を聴いていて、おふたりは温度感が似ているのかなと感じました。

HASE-T:ライフスタイルが割と近い友だちだからというのもあるかな。そんなにゴリゴリしてないというか。それこそレゲエでもラップでもそのものに “なりきりたい人” はいたと思うんです。ジャマイカへすぐに行っちゃうみたいな。僕たちはどちらかというと、東京でやるとしたらこういう感じみたいな。

Bose:やっぱりお互い少しサブカル寄りなとこから音楽に入ってるのは大きいと思いますけどね。見てたものもそんな遠くないというか。

ハナ肇とクレージーキャッツの “ウンジャラゲ” のオマージュですよ。「MONDAY TO SUNDAY」って聞いて、「月曜日はウンジャラゲ」って頭に浮かんじゃったから(笑)。(Bose)

おふたりは、いつ頃出会ったんですか?

Bose:HASE-Tとは同い年なんだけど、20歳くらいから友だち。HASE-TがTAXI Hi-Fiでやってたときに、僕ら(スチャダラパー)も出してもらったりしてたもんね。シーンがヒップホップとかレゲエとかみたいにジャンルで分かれてなかったんで。

HASE-T:当時は僕らがいちばん若手みたいな感じでやってました。全体にサブカルチャー時代ですよね。同じクラブでダンスホール・レゲエもヒップホップもその夜に順番にかかるみたいな。ラップだけのクラブとかない時期。

Bose:たしか代々木チョコレートシティでイベントがあって、TAXI Hi-Fiのサウンドシステムを入れたりしてやってたんじゃなかったかな? そこで一緒になったりね。それとたまに芝浦ゴールドとか、インクスティック(インクスティック鈴江ファクトリー)とかでも顔を合わせたり。あの頃はまだクラブも少なかったから、ライヴハウスでそれこそECDさんがイベントをやったりだとか。はるか前のことですけど、その頃に活動していたメンツはいまもまだほとんどやっている。

HASE-T:その頃は、いまよりもやっている人たちがぜんぜん少なかったから、大体みんな同じようなイベントに出ていて割りかし近いところにいたし、お客も含めて100人ぐらいみたいな規模感の世界だった。

HASE-Tさんは何がきっかけでレゲエ道に入っていったんですか?

HASE-T:僕は厳密に言うと、レゲエから入って音楽をやったわけじゃなくて、もともとはイギリスのロックをずっと聴いてて、そこからクラッシュみたいなパンクを通って、そうするとレゲエに結びついちゃうんで、そこからレゲエをずっと聴いてます。ただ、当時はダイレクトなレゲエの情報なんてほぼなかったから、UK経由のレゲエを聴いていました。例えばポリスとかカルチャー・クラブもレゲエじゃないですか。当時はレゲエのビートが流行ってたから、そっち寄りのUKのバンドを聴いていて、アメリカのディスコや「ベストヒットUSA」みたいなのはまったく自分には響かなかったですね。「なんで踊るんだ、男だったら拳上げろ!」みたいな(笑)。レゲエは、なんだろうな、何か変な電波が出てたんだよね。

変な電波(笑)。

HASE-T:それにすごくハマってしまって、レゲエを聴くようになって。厳密に言うと、イギリスのロックはザ・スミスぐらいまで聴いていたんだけど、ヒップホップもレゲエも、その頃から打ち込みに変わっていった時期で。ヒップホップに関しては、〈デフ・ジャム〉の初期の頃の作品は「ロックだけどヒップホップだ!」みたいな。もともと生まれは新潟ですけど、そんな頃に東京へ出てきて、クラブに行ったりしてたらBoseさんに出会うみたいな。

Bose:東京の人は、パンクからはじまってる人が多いんじゃない? 音楽に興味を持ってカセットテープを作ってみたり、DJをやってる人たちは、LONDON NITEとかからはじまって、そこでクラッシュをかけたり、ヒップホップだとランDMCやビースティ・ボーイズをたまにかけてみたりとか。川辺ヒロシは同じ世代だけど、その頃からヒップホップとレゲエを混ぜてかけていた。

HASE-T:情報をもらう媒体もみんなほぼ一緒。

Bose:『宝島』では、(高木)完ちゃんと(藤原)ヒロシ君たちがやってた連載があったからね(※1980年代~1990年代頭まで『宝島』で連載されていた、藤原ヒロシと高木完が担当した連載「ラストオージー」。日本のヒップホップ黎明期において唯一の情報源であり、圧倒的な影響力を持っていた)。雑誌のなかでもすごく狭いところにあって、見ていたところはそこだけ。僕もHASE-Tと同じで、ラップに関してはビースティ・ボーイズ、ランDMCの存在が完全に大きくて、〈デフ・ジャム〉も、もちろんLLクール・Jとかも聴いてたけど、ビースティ・ボーイズがパンクみたいな感じで超格好いいみたいな。で、輸入盤のレコードを売っていたのはシスコくらいしかなかったから、ラップの新作が出たらそこで買って、ジャケットの情報を睨みながらプロデューサーは誰とかチェックしたり。そういえば、ECDがやっていたチェック・ユア・マイクのコンピ(※『CHECK YOUR MIKE』、1992年に〈メジャー・フォース〉よりリリース)にHASE-Tも入って、それが盤になったけど、あのときの衝撃みたいなのはあった?

HASE-T:あれはめちゃくちゃ嬉しかった。90年だと思うけど、全部のタワレコへ見に行ったりして(笑)。

Bose:ラップでいうと、いとうせいこうさんがアルバム出したとかさ、レゲエだと、ランキンさんがちょこっと出してたくらいだしね。だからあの頃は、自分たちがCDとかレコードでアルバムを出して、それが店に並ぶなんて想像していなかったもんね。ただそこに集まってるってことが珍しかったし、そこにいた人たちはみんな尖ってた。だって主流じゃないもん。その頃はディスコが流行っていて、渋谷なんかでは大学生なんかがコンパとかやってたけど、僕たちはそれからは外れてオタクっぽかったりとか、マイノリティだったしね。

自分たちがCDとかレコードでアルバムを出して、それが店に並ぶなんて想像していなかったもんね。ただそこに集まってるってことが珍しかったし、そこにいた人たちはみんな尖ってた。だって主流じゃないもん。(Bose)

5年前の前作と比べて音がさらに進化した感じがしましたが、この数年で何かありましたか?

HASE-T:特に何があったわけではないけど、前よりも少しだけミックスが上手くなったとか、打ち込みがもう少し細かく上手くできるようになったとか、そういう多少の進化はあったかな。使っているソフトは変わらず一緒なんだけど、思っていた以上に使うのが上手くなったのかも。

Bose:まだ上手くなっているんだね。具体的にどこがとかある?

HASE-T:レゲエもヒップホップも同じかもしれないけど、キックとベースのEQとかコンプレッサーとか細かくまだ発見し続けたり。

Bose:ちなみに僕が一緒にやった曲(“MONDAY TO SUNDAY feat. Bose, J-REXXX, Natsu Summer”)は何から作ってるの?

HASE-T:ギターはサンプルで、あとベースはサンプルの音だけど、サンプル音と自分で打ち込んだものと混ぜてやってる。厳密に言うとサンプルのチョップする前の2小節くらいをループしてる感じ。楽器はギターとベースをちょこっと弾くんですけど、録るところまではしていなくて、基本的にはすべてPCでやってます。まだまだ突き詰めたいですね。

Bose:その作り方、90年ぐらいから変わっていないんじゃないの? それが逆にむしろ不思議だけど、そこがいいと思うんだよね。

HASE-T:別に進化しないの(笑)。

Bose:ループからはじまることが好き。全体的にドラムがループしてるところとか、ギター・ループが曲の頭の部分にアイデアとしてあって、やっぱりダンス・ミュージックだからループだよねって。

HASE-T:最初にその魅力、魔力みたいのに取り憑かれちゃってから、ずっとそれが好きだしね。ヒップホップもそうだと思うけど。

やっぱりループしている方がリリックは乗せやすいですか?

Bose:一部分がループされることによって違うムードが生まれて、それに引っ張られてみんな詞を書くから、まったく別のものになるのが面白いんだよね。今回の場合も最初にHASE-Tが作っていたデモのサビの部分を聴いて、なんとなくの歌詞も見えたから、僕はもう乗っかるだけっていうか。この世界をちょっと邪魔しないように変える、みたいな感じでした。

HASE-T:アンサーしてもらいましたよね。初めは俺がサビと自分の歌を録って、それを渡して、歌詞が上がってきたものを聴いて。それをJ-REXXに渡して、歌詞が戻ってきたものを最後は合わせて自分でミックスしたって感じです。

いまはレゲエもヒップホップも進化しましたが、時代を経てもいいと思う部分はなんですか?

Bose:レゲエもヒップホップも結局やってることがそんなに変わらない感じが好き。結局はループだったり、ベースラインとドラムがかっこいいかどうかみたいなことは変わらないから。とか言って最新の若い人が歌ってるやつとかほとんどわかってないけど、やっぱり変わってきてるの?

HASE-T:音はすごい変わって、トラップになっちゃった。ジャマイカの人たちが作るものは、どんどんUSに近くなっているかな。情報がいっぱい入ってきてるから。昔は想像しながらそれっぽくやっていたのが面白かったけど、いまはそのズレが修正されて、すごく(ジャマイカとUSが)近くなってるみたいな。

Bose:前は、距離がちょっと遠いなっていうのが面白かったよね。なんか伝聞でずれていく感じが。それを僕らがやると、それこそ東京っぽさが自然と入ったりしてて良かったり。でもいまは割とすぐに繋がりそうだもんね。

日本のレゲエでも、東と西でも空気感が違いますよね。

HASE-T:レゲエDeejayで、関西弁ですごく上手にハマってる人が出てきたときは、やっぱりいいなと思いましたよね。

Bose:僕とJ-REXXXは岡山出身で、世代は違うけど高校が隣りっていうくらい近いんだけど、J-REXXXの周りにいる津山のやつらは、岡山弁でベラベラとやったりとかする。いまはそっちの方が力強いわみたいな。NYやLAのラッパーがそれぞれの言葉でやっているところに、アトランタから訛りのあるラップが出てきて、それがめちゃめちゃかっこいい! みたいのと同じですよね。それにいまは、ジャマイカのレゲエがニューヨークに行くといろいろ混ざってレゲトンに変わったりするし。

竹内まりやさんのカヴァー “プラスティック・ラブ” はまさにレゲトンですね。

HASE-T:レゲトンはレゲトンで面白くずっと聴いているんです。もともと根底にあるものはレゲエだから質感は似てるし。レゲトンが出てきてから20年以上は経ってるけど、そこからかなり進化して、レゲトンがいまのダンス・ビートっぽかったり、エレクトロっぽかったり、表現の幅が広がってより音楽っぽくなっていてそれが面白いんですよ。

“プラスティック・ラブ” のカヴァーは7インチ・レコードでもリリースされますが、シティ・ポップ・ブームで人気になった曲です。なぜこの曲を選んだんですか? 昔から好きだったのでしょうか?

HASE-T:もちろん昔から知っていて好きだったのもあるけど、今回は昔の曲を新しく蘇らせたいっていうのがキーワードにあって。シティ・ポップの歌に対して、レゲエDJやヒップホップの人からのアンサーとして被せるっていうことをしたかったんです。ネタを明かすと “プラスティック・ラブ” の前に候補としてあったのが、松原みきの “真夜中のドア”。だけど権利問題でできなくなってしまって、ストレートにカヴァーしましょうということで “プラスティック・ラブ” になった。

Bose:カヴァーをやる最初の時点で、「こんなことをやりたいんだ」と僕に教えてくれたことがあったじゃん。それに僕もめっちゃ賛同して、絶対に格好良くなると思ったんだよね。

HASE-T:だから、カヴァーを自分でやるなら何だろうと考えたときに、自分の得意なジャンルはレゲエだなと。だけど、ワンドロップでレゲエにしてカヴァーしているものは世の中にたくさんあるから、それはひねりがないなと思って、もっと踊れるダンス・ビートでカヴァーしたいなと思って考えていたら、レゲトンっぽい感じでハメたら面白いかもと思いついて。アメリカなんかでは “プラスティック・ラブ” ってすごく聴かれているし、レゲトンとかラテンがいまは人気なので、そのアレンジで日本語でカヴァーしたら、向こうの人も聴いてくれるのかなっていう、ちょっとした考えもあって。それでレゲトンをハメてみました。

シティ・ポップは海外の人からも人気ですものね。

HASE-T:原曲がすごく出回っているはずなんで、こちらの作戦通り曲に引っかかってもらって、それでいっぱい曲が回ったら嬉しいな、みたいな(笑)。

Bose:なんか突然びっくりするようなヒットが出たりするじゃん。シティ・ポップっていう日本の音楽が、こんなに世界で聴かれるなんて想像してなかったし。でもそれって凄くいいことで、曲が良ければそういうことが起こるんだみたいな。レコード出すなら帯付きがいいよね。日本独特じゃん。向こうのマニアは縦書きの日本語で書いてある帯付きが好きだし、そういうレコードはすごく高いしね。

アルバムのジャケットの絵にもシティ・ポップ感があります。どなたがデザインされたのですか?

HASE-T:TAXI-Hi-Fiのセレクターをやってるバースさんがデザインをしていて、自分が持ってる写真を元にお願いしました。写真は2001年か2002年に僕がジャマイカに行ったときに撮ったものですね。まだエアポートがボロボロの頃でした。国際空港って言ってるけど、飛行機が到着すると、タラップを使って階段を降りるみたいな。そこからゲートに続く廊下を通ると、木造のイミグレーションが出てきて、イミグレを出て、じゃあキングストンへ向かおうとタクシーを拾おうとしたら、タクシーの運転手が30~40人くらい俺の周りにブワッと集まってきて、「俺のに乗れ!」って、凄いことになるんですよ。そこでジャマイカの洗礼を受ける。

Boseさんはジャマイカへ行ったことはありますか?

Bose:僕、ないんですよ。よくニューヨークに行ってからジャマイカへ行くとか聞くけど、一回も行ったことなくて。いつもニューヨーク止まり。

HASE-T:だけど、ニューヨークでヒップホップを追っかけてクラブとかへ行くと、レゲエがかかってたりするし、ブルックリンへ行くと自然にレゲエが聴こえてきたりしますからね。90年代のニューヨークで思い出すのは、DJレッド・アラート。レッド・アラートがやってたラジオ番組を聴くと、前半の初めにレゲエがかかって、後半に変わる途中からヒップホップに変わる時間帯があったんですよね。レゲエのビートがどんどんヒップホップになっていって、ヒップホップにバッと変わっていくみたいな。そのミックスがめちゃくちゃ格好良くて、一生懸命カセットにダビングしていました。

昔の曲を新しく蘇らせたいっていうのがキーワードにあって。シティ・ポップの歌に対して、レゲエDJやヒップホップの人からのアンサーとして被せるっていうことをしたかったんです。(HASE-T)

日々の生活のなかで感じていることをアルバムでは伝えているなと思いますが、表現者としてここ最近どんな世の中だなと思いますか?

Bose:SNSがここまで来て、いい部分と悪い部分がめちゃくちゃ出てる感じ。それこそトランプ大統領が夜中にひとりでつぶやいたことを、世界中の人が気にしなくちゃいけないっていう世の中だよね。それ、ありにしちゃったらダメだろうってやっぱり思うし。それが当たり前に表側に出て、それを子どもたちが見てるのって凄くよくないなと思うんだよね。大統領デタラメなこと言ってんなって子どもたちもわかっているし、それがまかり通っちゃうっていうのは、いやだなって。

HASE-T:少し前は映画みたいだと思ってたことが、実際に起きてるよね。最後に大統領が裏切ったみたいな(笑)。そういうことが本当に起きちゃってるから。コロナもしかりで、もうなんか次に何が起きてもあまり驚かないですよ。

Bose:そうなんだよな。こういうことも起こるんだってことが世界中で起きているし、戦争も実際にやっているし、いつ何が起こるかわかんないっていう。こんなに暑い夏ってのもさ。子どもの頃とか夏っていい思い出だったりするじゃん。あのときのあの夏ってすごい暑くて海に行ったよなとか、ずっと雨だったよなとか緩急があったけど、いまは暑いのがずっとそれが続いちゃったりするからあまり感じなくなってきたっていうか。デコボコがあると感じられるんだけど。

おふたりとも社会を少し俯瞰して見ている感じがします。

HASE-T:世代観もあるよね、だいたい見てきたものも、話を聞いたりしてきたものも同じだし、感想も似てる。

Bose:先輩にそういう人たちがいたから、僕らはそれにくっついてったみたいなのもあるし。それこそ僕たちはクラブ・カルチャー二世代目みたいな感じで、完さんとか、ランキンさんとか、上の人たちが切り開いてくれたことを真似して少し引いて見てやってきたというか。そこから僕たちは、ずっとやり続けている感じだよね。

取材・文・写真:吉岡加奈(2026年8月27日)

Profile

吉岡加奈/Kana Yoshioka吉岡加奈/Kana Yoshioka
1971年生まれ。東京都出身。フリーランス・エディター/ライター。90年代前半ニューヨークへの遊学を経て、帰国後、クラブ・カルチャー系の雑誌編集者となる。2003年~2015年までは、月刊ストリート・カルチャー誌『warp Magazine』の編集者として、2017年~2020年はDJカルチャー・メディア『Mixmag Japan』の編集者として活動。現在はストリート、クラブ・カルチャーを中心に、音楽、アート、ファッションなどの分野にて、ライター/エディターとして活動中。
Instagram @Knt213

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