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Freddie Gibbs & Madlib

Hip Hop

Freddie Gibbs & Madlib

Bandana

Keep Cool / RCA

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   Aug 26,2019 UP

 これまで自らのグループであるルートパックやJ・ディラとのジェイリブ、MFドゥームとのマッドヴィレインといったユニット、さらにタリブ・クウェリ、パーシー・P、ギルティ・シンプソン、ストロング・アーム・ステディといった様々なアーティストともタッグを組んで、数々のアルバムを生み出してきたマッドリブ。そんな彼にとって、史上最もハードコアなヒップホップ作品となったのが、“ギャングスタ・ギブス”の異名を持つラッパー、フレディ・ギブスと組んで2014年にリリースしたアルバム『Piñata』であり、本作は通称“マッドギブス(MadGibbs)”とも呼ばれる、このふたりのユニットによる第二弾アルバムだ。ちょうどこの原稿を書いているタイミングに、ヨーロッパにてツアーをおこなっている彼らであるが、マッドリブ自ら、フレディ・ギブスとの相性の良さについて、たびたびインタヴューで語っており、このユニットに対する彼らの力の入れようは、そのサウンドにも強く表れている。

 日本の某バラエティ番組のナレーションでも聞き覚えのある音声アプリを使ったと思われるイントロ“Obrigado”にまず驚かされるが、タイトル通りのフリースタイル曲“Freestyle Shit”を挟んでの“Half Manne Half Cocaine”は、本作でも最も注目すべき一曲であろう。この曲で何とマッドリブは、おそらく彼にとっては初となるであろうトラップを披露している。細かい部分にマッドリブならではの感触を残しながらも、そのサウンドはハードなトラップ・ビートそのものであり、フレディ・ギブスのギャンスタ・スタイルなライムとも最高のマッチングで、さらに曲後半での非トラップ・ビートへの切り替えも、絶妙なコントラストになっている。実際、トラップ・ビートはこの曲だけなのだが、マッドリブがフレディ・ギブスと組んだことによって、新たなスタイルへ挑戦するというのは、個人的にも驚きであり、同時にその探究心には恐れ入る。トラップは極端な例にせよ、本作でのマッドリブのサウンドは前作『Piñata』の流れの延長上にあり、サンプリングを全面に押し出したソウルフルなビートが核になっている一方で、フレディ・ギブスのラップにもより強く引っ張られて、間違いなく前作以上にハードコアな作品になっている。また、“Palmolive”でのキラー・マイクとプッシャ・T、“Education”でのヤシーン・ベイ(モス・デフ)とブラック・ソートなど、参加ゲストも前作以上に充実しているのだが、中でも飛び抜けているのがアンダーソン・パークをフィーチャーした“Giannis”だ。NBAプレーヤーの名前からタイトルが付けられたというこの曲だが、不穏な空気が充満したドラマティックなトラックに、フレディ・ギブスとアンダーソン・パークのコンビネーションが見事にハマっており、マッドギブスが描こうとしている世界観のひとつの完成形がこの曲に詰まっているように感じる。

 今後もマッドギブスとしての活動は継続していく予定で、すでに次作には、これまでの2作品と同様にギャングスタ・カルチャーとも結び付いた『Montana』という仮のタイトルが付けられているという。ギャングスタをテーマにした壮大なサウンドトラックというイメージさえも湧き上がってくる、彼らのプロジェクトのさらなる展開に期待したい。