ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Cornelius - Refractions | コーネリアス
  2. This Is Lorelei - The Singer in My Band | ディス・イズ・ローレライ
  3. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  4. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum
  5. Rough Trade ──50周年イベント開催を祝し、恵比寿KATAにポップアップが出現
  6. Columns Dennis Bovell デニス・ボーヴェルひさびさの新録は無類のカヴァー集
  7. Columns P-VINE 50th Anniversary Interview Pヴァイン50周年対談
  8. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  9. 鷲巣功
  10. interview with Toshimaru Nakamura 世界を魅了する、類い稀なる電子音響 | ──中村としまる、待望の初期ベスト盤リリースと超ロング・インタヴュー
  11. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  12. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  13. Lambchop - Punching the Clown | ラムチョップ
  14. Fishmans ——京都でフィッシュマンズ写真展とトークイベントのお知らせ
  15. Open Mike Eagle & Kenny Segal - DOOMED! | オープン・マイク・イーグル、ケニー・シーガル
  16. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  17. Crack Cloud ──カナダのインディ・バンド、クラック・クラウドの来日公演が決定
  18. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  19. Betty Hammerschlag ——マニア受けしていたZ世代のe-girlシンガーが、実は中年のおじさんだったニュース
  20. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル

Home >  Reviews >  Album Reviews > 少年ナイフ- 大阪ラモーンズ

少年ナイフ

少年ナイフ

大阪ラモーンズ

Pヴァイン

Amazon iTunes

大久保 潤   Jul 29,2011 UP

 少年ナイフには"Ramones Forever"という曲がある。2007年のアルバム『fun! fun! fun!』に収録された曲で、モーターヘッドの"R.A.M.O.N.E.S."と並んでグっとくる名曲である。個人的には聴くたびに泣く。この原稿を書くためにさっき聞き直したが、やはりちょっと泣きそうになった。ある日ラジオでラモーンズの曲を聴いて次の日にレコードを買いに行く。そしてギターを買ってバンドをはじめたパンク・ロック少女がやがてラモーンズのオープニング・アクトをつとめることになる......というストーリーが歌われている。少年ナイフのリーダーであるなおこさんの体験がもとになっていると言っていい内容の曲だ。
 本作『大阪ラモーンズ』はタイトルどおり、全曲ラモーンズのカヴァー・アルバムである。革ジャンにジーンズという姿でレンガ壁の前に立ったモノクロのジャケも雰囲気が出ている。リリースの経緯、ラモーンズとの交流などはオフィシャルサイトに詳しく書かれているので参照されたし。

 ラモーンズといえば、数多のメジャー・アーティストを集めた『ウィー・アー・ハッピー・ファミリー』というトリビュート・アルバムが2003年にリリースされている。マリリン・マンソンによるダウンテンポで陰鬱なアレンジの"KKK"のようにひねりを効かせたものもあれば、オフスプリングによる"アイ・ウォナ・ビー・シディテッド"のようなストレートなものある。振り幅はさまざまだったけれども(ちょっと速くしたメロコア・カヴァーみたいなのがいちばんつまんないと思う)、「大阪ラモーンズ」の場合はほとんどひねりを加えずシンプルに演奏されている。ラモーンズの場合は意外とコードの弾き方ひとつをとっても曲によって細かく変えていたりするのだが、そこまで厳密にコピーしているわけでもない。そのあたりの大らかさもナイフらしい。

 "電撃バップ"ではじまり"ピンヘッド"で終わる全13曲、基本的には代表曲が中心だけれども、あまり取り上げられる機会のない曲もある。なかでも『ロード・トゥ・ルイン』収録の"She's The One"なんかはあまり知られていない曲だが、とてもナイフに似合っている。ラモーンズの曲としては少々異色の部類に入る"ウィ・ウォント・エアウェイヴズ"は原曲以上にヘヴィな演奏だ。そういえば"電撃バップ"と並んでラモーンズの代表曲である"ロックンロール・レディオ"はやっていないが、何か意図があるのだろうか。先述のKISS以外にも、日本でも原爆オナニーズやK.G.G.M.など多くの名カヴァーが存在するだけに「いまさらやらなくていいか」というくらいのノリなんだろうとは思うが......。
 結成30周年を迎えたバンドのこのリリースについて「原点回帰」という表現をよく見かける。が、そもそもおそらく少年ナイフは「原点」を忘れたことはない。その時々で新しい音楽を吸収することはあっても、根っこにはつねにラモーンズやバズコッコスといった音楽がある。それはラモーンズの音楽にはつねに50年代のガール・グループやビーチ・ボーイズがあるのと同じことだ。ティーンのときに影響を受けた音楽をずっと大事にするということも少年ナイフがラモーンズから受け継いだことのひとつだ。もうひとつ、ラモーンズから受け継いだもっとも大きい要素は、シンプルで人懐っこく、とぼけたユーモアがあるところだろう。

 ラモーンズは結成22年にして解散した後、主要メンバーのジョーイやジョニーが燃え尽きたかのように次々とこの世を去った。ドキュメンタリー映画『エンド・オブ・ザ・センチュリー』を観るとメンバー間の確執や長年のツアー生活の疲れなど、想像以上にストレスフルなキャリアだったことがうかがえる。しかし、少年ナイフにそれは感じない。結成30周年を迎えながらその瑞々しさはまったく失われる気配がないのだ。イースタン・ユースの吉野寿はかつて少年ナイフについて「あの佇まいに憧れる」「あんなふうにまっすぐにロックと向き合えたらなあ」といった発言をしているが、おそらくそれは誰にでもできることであり、しかしやはり誰にでもできることではないのだ。

大久保 潤