ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns #15:「すべてのロックンロールに反対してやる」 ──『UKインディ・ロック入門』刊行のお知らせ
  2. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  3. MODE 2026 ──豪華面々が集結、灰野敬二+ダニエル・ブランバーグ、エレン・アークブロ+伶楽舎、シャルルマーニュ・パレスタイン、ジム・オルーク&石橋英子
  4. Loraine James - Detached from the Rest of You | ロレイン・ジェイムズ
  5. 弟の夫 - 田亀源五郎
  6. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  7. interview with Weirdcore 謎のヴィジュアル・アーティスト、ウィアードコアへの質問
  8. Columns #14:マーク・スチュワートの遺作、フランクフルト学派、ウィリアム・ブレイクの「虎」
  9. P-VINE 50TH ANNIVERSARY ──Pヴァイン50周年記念、スリップマット/トートバッグ/Tシャツが発売
  10. Columns ♯10:いや、だからそもそも「インディ・ロック」というものは
  11. Friko - Something Worth Waiting | フリコ
  12. Haruomi Hosono ──細野晴臣7年ぶりのアルバムがリリース、海外では〈Ghostly International〉から
  13. Columns ♯13:声に羽が生えたなら——ジュリー・クルーズとコクトー・ツインズ、ドリーム・ポップの故郷
  14. Nondi_ - Nondi... | ノンディ
  15. Columns ♯7:雨降りだから(プリンスと)Pファンクでも勉強しよう
  16. オールド・オーク - THE OLD OAK
  17. The Sleeves - The Sleeves | ザ・スリーヴス
  18. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第4回 奇妙な質問の正体
  19. Columns ♯6:ファッション・リーダーとしてのパティ・スミスとマイルス・デイヴィス
  20. Columns ♯8:松岡正剛さん

Home >  Reviews >  Album Reviews > Jimi Tenor & Tony Allen- Inspiration Information 4

Jimi Tenor & Tony Allen

Jimi Tenor & Tony Allen

Inspiration Information 4

Strut/Ultra Vibe

Amazon iTunes

野田 努 Nov 18,2009 UP

 トニー・アレンに関しては2006年にロンドンの〈Honest Jon〉が出した『Lagos No Shaking』が素晴らしかったが、昨年の『Lagos Shake: A Tony Allen Chop Up』も面白かった。話題となった"Ole"のモーリッツ・フォン・オズワルドによるリミックスや"Fuji Ouija"のディプロによるリミックスをはじめ、マーク・エルネストゥスやカール・クレイグならまだしも、なんとリオデジャネイロのバンド、ボンジ・デ・ホレのリミックスまで聴けるし、アレンと最近のクラブ・カルチャーとの親密さがよく表れていた。もっともアレンを再評価しているのはクラブ界隈だけではない。アフロビートの父は、この10年かなりの売れっ子で、デイモン・アルバーンからシャルロット・ゲンズブール、エールからジェイヴィス・コッカー、あるいはポール・サイモンまでとその交友関係は異様に幅広い。10年前くらいだろう、僕はこの偉大なドラマーのライヴを、フランスとベルギーの国境沿いで開かれた、リッチー・ホウティンやカール・クレイグなんかが出演するようなフェスティヴァルで観ている。

 何故この10年、アフロビートは求められたのだろうか。フェラ・クティが1997年に他界したことで今年69歳になるドラマーは再評価されたのだろうか。はっきりわからないけれど、結論を言えば、ヨルバ族のリズムとアート・ブレイキーとの結合によって生まれたアレンのビートは、ダンスの時代においてもっとも偉大なドラミングとなった。しかも......、ここ数年アレンを引っ張り回した連中の顔を見ればわかるが、揃いも揃ってインテリはアフロで踊ったというわけである。たしかにアルバーンのように政治的にも、われわれはアフリカを注視すべきなのだろうが......。

 ワールド系やブラック・ミュージックを得意とする〈K7!〉傘下のサブレーベル〈ストラト〉の"Inspiration Information"シリーズの第4弾は、アレンとフィンランドのアーティスト、ジミ・テナーとのコラボレーションになった。ちなみにこのシリーズは昨年、デトロイトのアンプ・フィロラーとスライ&ロビーとのコラボレーション作を出しているが、はっきり言ってパッとしない内容だった。買って損した気分なって、中古屋に売った。そういう苦い経験から、今年の春に出たエチオピアのドラマー、ムラトゥ・アスタトゥケとザ・ヘリオセントリックスとの同シリーズは見送ったし(評判は良いですけど)、今回もまた疑りながらこのアルバムも聴かなければならなかった。ジミ・テナーというのも微妙だったりする。この男は、ハウス、エレクトロ・ポップ、フリー・ジャズ、いろんなことに手を染めすぎている。......が、世界でもっとも偉大なるドラマーがその窮地を救ってくれた。
 70年代から80年代にかけて、アレンの創出したリズムを史家たちは「アフロファンク」と呼ぶが、本作はまさしくアフロファンクの作品だ。ジミ・テナーとテナーが関わっているベルリン在住のバンド、カブ・カブのメンバーたちがこの巨匠を迎えての録音で、アレンのパワーと共振しながら迫力ある演奏を展開する。驚いたのは、ジミ・テナーがベースを演奏してアレンとともにアフロファンクの一部となっていることだ。それは確実にこのダンス・ミュージックのグルーヴを強調している。が、それはお決まりの"アフロ"ではない。サン・ラーめいたオーケストレーションもあれば、ラロ・シフリンかと思わせる洒落た展開、あるいはジャジーでドリーミーなノスタルジア......かと思えばギル・スコット・ヘロンのようなMCも登場する。テナーは歌い、ほとんどのメロディー楽器(フルート、テナー・サックス、キーボード、カリンバ、、マリンバ等々)を操り、この出会いに色気を与えている。
 アレンとテナー、この意外な出会いによって、そして目もくらむような音楽が生まれたというわけだ。

野田 努