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Home >  Interviews > interview with Kan Mikami - もうひとりの、“日本のパンク”のゴッドファーザー

interview with Kan Mikami

interview with Kan Mikami

もうひとりの、“日本のパンク”のゴッドファーザー

――三上寛、超ロング・インタヴュー

野田 努    撮影:小原泰広  thanks to Hitoshi Nanbu   Mar 09,2012 UP

わたしはね、人間のなかにある語彙っていうものはね、同じだと思ってるんですよ。大学の先生が多いっていうわけではなく、たとえばうちのじいちゃんなんて無学なひとだったですけれども、それでも何万という言葉を持ってるわけですよね。魚の動きから、風の流れ。それはわたしがわからないだけで。

なるほど。だいぶ時間も経ってますが、まだ訊きたいことがありまして(笑)。90年代以降は吉沢元治さんや石塚俊明さんなどとのコラボレーション、とくに灰野敬二さんとのバサラ(Vajra)とか、いろんなインプロヴァイザーと共演されてますね。

三上:灰野からはいろいろと学びましたしね、もちろん吉沢さんからも。勉強って言っちゃあれだけれども、やっぱり自分のいないところでやってるひとたちっていうのからはね。だってえ灰野なんかは、(ライヴの最中、歌が)全然聴こえてないわけです、爆音すぎて。それでもね、一緒に歌って、演奏できる、何か伝わるっていうことが、さっきの話じゃないけれども、驚きというか、音楽っていうのはこういう力があるんだなと思ったり、「耳ってすげーな」と思ったりね。最近では、そのことをさらに教えてくれたのはね、古澤良治郎さんだよねー。まったくわたしが歌っている音楽と違う解釈で叩いて、わたしの歌を変えちゃうわけですからね。

ドラミングで変えてしまう。

三上:変えてしまう。最初に驚いたのはね、高校の先生に呼ばれて高校生の前で歌ったことがあるのね。そしたらわたしの歌が彼らには難解っちゅうか、言葉が。それを古澤さんのドラムで翻訳してみせたんだから。だからね、そのときはね、「音ってなんだろう?」ですよね(笑)。

なるほど、伝わってしまう。

三上:だからコラボレーションはそうですよ、わたしは。そういうのに限らずね、いまの若いひとたちとやるのもそうだし。「この子たちって何だろう」っていうね。テクニックや年齢は関係ないですよ。だって同じステージに立ってるってことはそこでタメですからね。どっちを聴いてるかっていうのは感じたりするし。これはもう、いつも驚きですよ。何気にやってることだけれども、スケベ心っていうか欲ですよね。物好きっていうと失礼だけども(笑)。やっぱり必ずもらうものがあるんですよね。まあわたしが与えたものもあるでしょうけれど。

最後に、あともうひとつ訊きたかったことがありまして、三上さんにとって寺山修司さんからの影響とは、どういうものだったんでしょう?

三上:いちばん大きい影響ですか、それはやっぱり家を出たことですね。それは昔で言うなら出家ですよね。そこでカタギじゃなくなるわけですから。やくざものになるわけですからね。言うならば、素人じゃないわけですから。曲がりながらも家を捨てたっていうことは、自分の好きなように生きるってわけで。好きなようにって言うと格好いいですけど、まあ世間じゃなくなるってことですからね。家にいて世間じゃないっていう。だからわたしを取り出してくれたっていうか。頭剃ってくれたようなもんですわな。

ははははは(笑)。なるほど。

三上:やっぱりね、大きいことをやっていけばいいと思うんですよね、若いひとたちが。プロとしてのシニカルってあるんだよね。素人とは違って。わたしが世界に行ってわかったのは、要するに「世界には二種類しかいない」ってことで、カタギかやくざか、プロかアマチアか、ふたつしかない。だから若いひとたちがいま置かれているなかに、情報だけじゃなくてある種のやる気、一歩踏み出す感じをい持ってほしい。我々のときはそういうものがありましたからね。「一歩前へ」とか「やっちゃえ」とかね。身体が動いちゃう感じっていうかですね。いまそういう文化がなくなってるよね。みんな同じで、そこがちょっと足りないところじゃないですか。

一線を踏み越えられなくなってるってことですか?

三上:そういうことでしょうね。そしてまず一線を踏み越えるという感覚がまずないですよね。ただね、要するに権力そのものもいま(一線を踏み越えることが)できてないでしょ。意味わかりますか(笑)。権力そのものも同じ飽和状態なんですよ。だから、要するに反権力ってものもないんですよ、若いひとにとっては。同じなんですよ、情報社会のなかで。「あいつらは違う」って感覚ていうのがないんだよ。
 要するにあれでしょ、昔は孤立・孤独っていうのは自分は選んだもんだからね、そこにこそ自由があったんですよ。進んで孤立したわけでしょ。俺なんかは先頭きって孤立してたし、俺は自由だったわけですよ、ある意味では。そういうセンスはいまないかもしれないですね。それは何て言うのかねえ、孤立が怖いっていうのとか、ひとりぼっちになるのが怖いっていうのと違うと思うんだよね。
 要するにね、わたしはですよ、なんで若いひとたちに興味持ってるかっていうとね、やっぱり俺たちよりレヴェルが上だと絶えず思っているわけ。これはほめ言葉でも何でもなくね。後から生まれてきたやつはやばい、といつもわたしは思ってるわけね。というのはこの一瞬でわたしの人生が終わっても、そいつらはその先を経験してるわけじゃないですか。それはおそらくその先と繋がってるわけですよね。ていうことは、俺が見たことのない世界を見る能力が備わってるってことでしょ? それはすごいと思ってますね。
 そうすると、いまのように喋っている孤立・孤独ってものに対する防衛、あるいは利用の仕方っていうのは、我々のときの孤独感や孤立感というものと比べることはできないと思うんです。別の能力で通じ合ってるんじゃないかなと思うな。たとえば若いひとたちが仲がいいって言っても、話聞いてるとそれともちょっと違うんだね。だから40年前の感覚とは違うあり方っていうんでしょうか、人間関係なんじゃないかなあ、きっと。うん。それはまさにその場の連中じゃないと確認できないことだと思います。

でも三上さんの歌には、それこそさっきの17歳とお父さんの話じゃないですけれど、若いひとたちにも強くアプローチできるものがあると信じてますけどね。それでは、いま録音されてるアルバムについて、がんがんプロモーションしてください(笑)。

三上:ありがとう(笑)。わたしは韓国のキム・ドゥスとすごく友人になって。たまたま去年遊びで「ちょっと行ってみようかな」ってなって。韓国のフォーク・ソングの親分みたいなやつだけどね。やっぱりあの、行ったら行ったで、「どうせ来たんなら歌っていけよ」ってことになって(笑)。楽器持って行ってなかったんですけれども、ギターを用意してくれて。で打ち上げかなんかでみんなでガンガン飲んで、朝起きて、フラーっとしてたらね、さっきの津波じゃないけどインスピレーションが沸いてきてですね。古い古い農家からね、いかにも死にそうな真っ白い大きな犬が出てきたんですね。で、犬はその何十年前にも捨てられたガチョウの小屋を守ってるんですよ。ガチョウも逃げちゃったわけ。でもそのガチョウを守ってるんだよね。「これはちょっと、歌だよなあ」っていう(笑)。それが、今度も来ちゃったんですよね(笑)。そういう韓国でのこともあって......まだ全然固まってませんけどね。

リリース予定とかは?

三上:まだないけど、秋頃になりますかねえ。

じゃあ、目先のことで言うと、3月20日の62歳を迎える、生誕記念ライヴ(@西麻布「新世界」)ですね。

三上:そのための話だった(笑)!


私は黙って下を向いたままで
彼らの話を聞かないように
下を向く
"冬の午後"(2010)

三上寛 生誕記念 スペシャルワンマンLIVE
『まだ解らないのか!』




今回の生誕記念ライヴはサプライズとして、三上寛をリスペクトすべくDJ 2741も駆けつけて来てくれる!"ふなよい"っていうだけに、あのお方が? リキッドルーム以来の顔合わせ、万感胸に迫る!

●日時:
3月20 日(火・祝日)
開場18時30分 / 開演19時30分

●出演:
LIVE:三上寛 (Vocal & Guitar)
DJ:DJ 2741

●会場:西麻布「新世界」http://shinsekai9.jp/

●料金: 前売予約:¥2,700(ドリンク別) / 当日券: ¥3,000(ドリンク別)

※〔インフォ・チケット予約・お問い合わせ先〕
西麻布「新世界」
http://shinsekai9.jp/2012/03/20/mikami/
http://shinsekai9.jp/
TEL: 03-5772-6767 (15:00~19:00 )
東京都港区西麻布1-8-4 三保谷硝子 B1F

取材:野田 努(2012年3月09日)

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