ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. DJ KRUSH ──LIQUIDROOM(KATA)の74分DJ公演シリーズ、第3回の出演者が決定
  2. Manual - True Bypass
  3. FUTURE FREQUENCIES FESTIVAL 2026 ──新たなフェスティヴァルが始動、ジョイ・オービソンやザ・セイバーズ・オブ・パラダイス、ノウワーらが出演
  4. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  5. The Sleeves - The Sleeves | ザ・スリーヴス
  6. オールド・オーク - THE OLD OAK
  7. interview with Weirdcore 謎のヴィジュアル・アーティスト、ウィアードコアへの質問
  8. Irmin Schmidt - Requiem | イルミン・シュミット
  9. Xylitol - Blumenfantasie | キシリトール
  10. P-VINE 50th Anniversary RARE GROOVE CAMPAIGN VOL.1 ──〈Nodlew Music〉、〈Tribe〉、〈Interim〉などのTシャツ・コレクションが登場
  11. インディ・シーンに広がるヴァイラル・マーケティング
  12. interview with The Lemon Twigs ロック/ポップスの素晴らしき忘れ物 | ザ・レモン・ツイッグス、インタヴュー
  13. Hoyo Moriya ──〈Virgin Babylon〉より森谷抱擁のファースト・アルバムがリリース
  14. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  15. Bill Callahan - My Days of 58 | ビル・キャラハン
  16. Yuki Nakagawa ──チェロ奏者、中川裕貴による初のソロ・アルバムが登場
  17. Galliano ──復活したガリアーノ、日本限定の新作がリリース
  18. Tomoaki Hara and Toru Hashimoto ──橋本徹(SUBURBIA)の人生をたどる1冊が刊行、人類学者の原知章による30時間を超えるインタヴュー
  19. interview with Joy Orbison ダンス・ミュージックは反エリート、万人のためにある  | ジョイ・オービソン、インタヴュー
  20. interview with Dolphin Hyperspace ジャズの時代、イルカの実験 | 話題のドルフィン・ハイパースペース、本邦初インタヴュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > YPY- OVER SMILING DUB

YPY

YPY

OVER SMILING DUB

birdFriend

Bandcamp

DubIndustrialMinimal

YPY

YPY

NYE​/​D IN DUB​!​!​!​!

birdFriend

Bandcamp

河村祐介   Mar 05,2020 UP

 日野浩志郎(goat / GEIST etc)の新作はひさびさとなる自身のレーベルからのリリースとなったカセット2作品。goat は海外ツアー、また昨年の山口 YCAM でおこなわれた GEIST もすさまじく(詳しくはこちらのレポートを)、それでもってこちらの作品も日野の現在の絶好調っぷりを感じる2作品ではないでしょうか。YPY は大雑把にいって、日野による、打ち込みの電子音を中心にしたソロ・プロジェクト。以前に著者がRAでおこなったインタヴューでは、隅々までコンポーズされた goat のようなプロジェクトとも違った、打ち込みだからこそ生まれえる予期せぬサウンドをひとつの核にしているようである。また複数のテレコを使い、カセットテープの組み合わせで構成していくワイルドなライヴも魅力のひとつ(いわゆるDJとも違う)。

 これまで自身のカセット・テープ・レーベル〈birdFriend〉を中心に複数リリースし、〈EM Records〉からは初期作品『Zurhyrethm』やアルバム『Be A Little More Selfish』などがリリースされている(〈EM〉からは〈birdFriend〉の編集コンピも今後リリースされるとか)。また海外からは、ヘルムや先日すばらしいアルバムをリリースしたビアトリス・ディロンなどがリリースする〈Where To Now?〉からも作品があり、またヨーロッパを中心に同名義でツアーなどもおこなっている。そのサウンドは、日本で一時期 “ロウ・ハウス” と呼ばれていたようなインダストリアルなローファイ・テクノ、電子音のコラージュ、エスニックなパーカッション・ダブ、ときにブレイクビーツなダウンテンポなどなど多岐にわたるアプローチがなされている。そのあたりも偶然性をひとつコンセプトにすることで獲得されたサウンドではないだろうか。バラバラといえばバラバラだが、無機質に鳴らされるリズムの応酬と、サイケデリックでフリーキーなスペースを生み出すサウンド、というのがひとつ貫かれているプロジェクトの印と言えるかもしれない。

 と、前置きが長くなりましたが本題を。この2連作はタイトル通り、ダブをひとつテーマにした二卵性双生児な作品といったところ。若干の制作コンセプトが異なるようだが双方とも「録って出し」がかなりの早さでおこなわれた模様である。『OVER SMILING DUB』は、強力なフィルターをかけたヴィンテージ・ドラムマシンによるトラックを下地に、さまざまな生楽器などをオーバーダブした作品。対して『NYE/D IN DUB!!!!』は、ある種ライヴ的な作り方で、同様なヴィンテージ・ドラムマシンによるトラックを下地に生ライヴ・ミックスなど4時間程度録音をおこなった音源を切り取り(ただしエデットはなし)、2曲にまとめた作品。

 『OVER SMILING DUB』、まずはボブ・マーリー&リー・ペリーのドンカマ・レゲエ “ナチュラル・ミスティック” (『Exodus』収録ではないヴァージョン)のバック・トラックを1小節取り出して執拗に繰り返しながら無理矢理インダストリアル・ダブ化したかのようなA1にはじまり、フリーキーな電子音が暴れまわり、最終的にはドレクシアに接続してしまっているサイケデリックなA2。B面は間の抜けたエレクトロ・ダブと海の湿度を全く抜き取ってしまったカリビアンな感覚もありどこかインダストリアル・ダンスホール風味な2曲。特にB面後半はロウ・ジャックダッピー・ガンのようなインダストリアル・ダンスホールにつながりそうでつながらない、メビウスプランク『RASTAKRAUT PASTA』にむしろつながってしまった疑似インダストリアル・ダンスホール・ダブといった趣深い傑作ではないでしょうか。

 『NYE/D IN DUB!!!!』A面は、どこか『OVER SMILING DUB』のA面が反転してしまったかのようなリディムで、こちらもドンカマ・レゲエの名曲、ウェイラーズ・バンド “Higher Field Marshall” (リズム&サウンド “No Partial” とカップリングでリイシューされたあれな)を彷彿とさせるグルーヴで、インダストリアルかつコズミックなダブへとじわりじわりと変化させていきます。B面は、ダンスホールとハンマービートが駆け抜けていくようなクラウトロックなグルーヴもありつつな、ジャリつくスネアとミニマルなベースラインがダブ・ミックスで加速していく楽曲です。

 無機質なジャーマンなエレクトロ趣味もありつつ、いわゆるデジタル・ルーツやミニマル・ダブといったフォーミュラーな借り物のないダブ・ビート、この二品にはまいりました。『ele-king』年末号のダブ特集号の日めくり的な、その後という感じでぜひ。カセットテープは売り切れてるところ多いようですがバンドキャンプで音源そのものは変えます。カセットにはDLコードもついているようですので、末永く楽しめます。

河村祐介