ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns Boards of Canada ボーズ・オブ・カナダの帰還  | ──その軌跡、その影響、そして13年ぶりの新作『Inferno』をめぐって
  2. Columns #15:「すべてのロックンロールに反対してやる」 ──『UKインディ・ロック入門』刊行のお知らせ
  3. Brian Jackson - Now More Than Ever | ブライアン・ジャクソン
  4. Cornelius ——コーネリアスがアルバム『Refractions』のリリースと新曲“Aeons”の配信開始を発表
  5. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  6. Ana Roxanne - Poem 1 | アナ・ロクサーヌ
  7. Boards Of Canada ──ボーズ・オブ・カナダ、13年ぶりのアルバムがリリース
  8. GEZAN - I KNOW HOW NOW
  9. heykazmaの融解日記 Vol.7:皐月 ☆.。.:* 最近の気づき‧+.˚ˎ-
  10. Loraine James - Detached from the Rest of You | ロレイン・ジェイムズ
  11. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  12. Columns 5月のジャズ Jazz in May 2026
  13. heykazma ──デビューEP「15」のリリース記念パーティが開催
  14. Xylitol - Blumenfantasie | キシリトール
  15. Boards of Canada - Tomorrow's Harvest  | ボーズ・オブ・カナダ
  16. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  17. Masabumi Kikuchi ──リイシューされた菊地雅章の幻の『六大』、デジタル配信がスタート
  18. Free Soul × P-VINE ──好評だったコラボTシャツが受注再開
  19. interview with Weirdcore 謎のヴィジュアル・アーティスト、ウィアードコアへの質問
  20. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第4回 奇妙な質問の正体

Home >  Reviews >  Album Reviews > Neue Grafik Ensemble- Foulden Road

Neue Grafik Ensemble

Afro-CaribbeanBroken BeatDubJazz

Neue Grafik Ensemble

Foulden Road

Total Refreshment Centre

Tower HMV Amazon iTunes

小川充   Nov 08,2019 UP

 ロンドンのジャズ・シーンで現在もっとも重要なライヴ・スポット兼スタジオとして名前が挙がる〈トータル・リフレッシュメント・センター〉。以前のレヴューでも触れたことがあるが、サンズ・オブ・ケメットザ・コメット・イズ・カミング、トライフォース、ビンカー・アンド・モーゼス、イル・コンシダードなどがここで作品をレコーディングしており、シカゴからやってきたマカヤ・マクレイヴンがロンドンのミュージシャンたちとセッションを繰り広げた。その模様は『ホエア・ウィ・カム・フロム』として〈トータル・リフレッシュメント・センター〉からリリースされたわけだが、作品数はまだ少ないもののレーベル活動もおこなっていて、その3枚目の作品として発表されたのがニュー・グラフィック・アンサンブルの『フォールデン・ロード』である。

 ニュー・グラフィック・アンサンブルはフレッド・ンセペというアフリカ系フランス人によるユニットで、そもそもニュー・グラフィックの名義でいくつか作品リリースをおこなってきている。現在はロンドンを拠点としていて、〈22a〉や〈リズム・セクション・インターナショナル〉などでもリリースがある。それらはディープ・ハウスやブロークンビーツ、ダウンテンポなどのエレクトロニック・サウンドで、ヘンリー・ウー(カマール・ウィリアムズ)やテンダーロニアスなどに通じるものだ。ニュー・グラフィック・アンサンブルはそんなフレッドによる初のバンド・ユニットで、彼自身はピアニスト、コンポーザー、アレンジャー、プロデューサーとしてこの『フォールデン・ロード』に関わっている。ヘンリー・ウーもテンダーロニアスも、最初はDJ/プロデューサー/ビートメイカーからキャリアをスタートして、その後ミュージシャンや作曲家としてグループを率いるようになっていったのだが、フレッドも同じような経緯を辿っているわけだ。
 『フォールデン・ロード』の参加ミュージシャンは、サウス・ロンドンの最重要プレイヤーのひとりであるヌビア・ガルシア(サックス)、ジャイルス・ピーターソンのコンピ『ブラウンズウッド・バブラーズ』にも作品が収録されたことがあるエマ・ジーン・ザックレー(トランペット)、〈トータル・リフレッシュメント・センター〉のリリース第一弾となったヴェルズ・トリオのドゥーガル・テイラー(ドラムス)、〈リズム・セクション・インターナショナル〉の主宰者であるブラッドリー・ゼロ(パーカッション)、イル・コンシダードやマイシャに参加するヤーエル・カマラ・オノノ(パーカッション)などのほか、オーストラリアの30/70のメンバーでソロ・アルバム『アケィディ:ロウ』もリリースするアリーシャ・ジョイ(ヴォーカル)もフィーチャーされる。30/70も〈リズム・セクション・インターナショナル〉からアルバムをリリースしており(最新作『フルイド・モーション』もリリースされたばかり)、そうした繋がりからアリーシャも参加しているようだ。

 オープニングを飾るタイトル曲“フォールデン・ロード”は、力強く律動するドラムが印象的なダンサブルなナンバーで、ブロークンビーツ経由のジャズ・ファンク~フュージョンといういかにもロンドンらしい作品。続く“ダルストン(もしくはドールストン)・ジャンクション”は〈トータル・リフレッシュメント・センター〉のある交差点のことで、ちなみに“フォールデン・ロード”もその付近のイースト・ロンドンを走る道路のことである。フレッドの演奏するシンセやエシナム・ドッグベイスツのフルートによる浮遊感溢れる空間に、ブラザー・ポートレイトのポエトリー・リーディングがフィーチャーされ、ダブ・ポエットに近いムードの曲である。レイドバックした雰囲気は続く“ヴードゥー・レイン”にも引き継がれ、ヌビア・ガルシアのサックスが深遠なフレーズを奏でていく。
 サウス・ロンドンのジャズにはアフロやカリビアンなどルーツ色を強く打ち出したものが多いが、この作品においてはフレッドのルーツであるアフリカ的なカラーが色濃いと言える。“サムシング・イズ・ミッシング”はそうしたアフリカン・ジャズと、ブロークンビーツなどエレクトロニック・サウンドが融合した作品。ニュー・グラフィックならではのジャズとクラブ・サウンドの中間地点にある曲で、いまのロンドンのジャズを象徴する1曲とも言えよう。
 アリーシャ・ジョイのメロウでソウルフルな歌声をフィーチャーした“ホテル・ラプラス”(ウェスト・ロンドンの中心にあるホテルの名前)を挟み、ブラザー・ポートレイトをフィーチャーした“ヘッジホッグズ・ジレンマ”はジャズ、アフロ、ブロークンビーツ、グライムのハイブリッド。エズラ・コレクティヴあたりと同じ地平にあるナンバーだ。最終曲の“デディケイティッド・トゥ・マリー・ポール”はゆったりとしたビートのアフロ・ダブ的な作品で、ブラザー・ポートレイトのダブ・ポエット的なパフォーマンスが披露される。現在のロンドンのジャズはブロークンビーツなどクラブ・サウンドと密接な関係があり、またアフロ、カリビアン、ダブとも強い繋がりを持っているのだが、それを代弁するような作品と言えるだろう。


小川充