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Allysha Joy

JazzSoul

Allysha Joy

Acadie : Raw

Gondwana / OCTAVE-LAB

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小川充   Jan 17,2019 UP

 ハイエイタス・カイヨーテの登場を機に、ジャズやソウルなどとクラブ・サウンドのミクスチャー・バンドが注目を集めることが増えてきた。USのムーンチャイルドやスペース・キャプテン、UKのノヤ・ラオやトロープ、シンガポールのスティーヴ・マックイーンズ、ノルウェーのローヘイなどがそうしたバンドで、ジョーダン・ラカイやキングなども同じような傾向を持つアーティストと言える。同時にハイエイタス・カイヨーテの地元であるオーストラリアの音楽シーンにもスポットが集まるようになった。特にハイエイタス・カイヨーテを輩出したメルボルンはいろいろな音楽が盛んで、かつてはランス・ファーガソンが率いるバンブーズやカイリー・オールディストなどから、近年は30/70、レジャー・センター、エレクトリック・エンパイア、ミッドライフ、カクタス・チャンネル、ハーヴィー・サザーランド、アンドラス・フォックスなど注目のアーティストが続々と登場している。

 この中でも30/70はポスト・ハイエイタス・カイヨーテの筆頭と呼ばれる10人組のグループで、2017年にファースト・アルバムの『エレヴェイト』をリリースしている。彼らはハイエイタス・カイヨーテに通じるオーガニックなバンド・サウンドを持つが、面白いのはリリース元がUKのサウス・ロンドンの〈リズム・セクション・インターナショナル〉だったことで、ロンドンの音楽シーンとメルボルンの音楽シーンの結びつきを示していたことだ。オーストラリアからロンドンに移住したジョーダン・ラカイも〈リズム・セクション・インターナショナル〉から作品を出したし、昨年末もハーヴィー・サザーランドの作品にヌビア・ガルシアやマンスール・ブラウンがフィーチャーされるなど、いろいろとアーティストたちの交流があるようだ。〈リズム・セクション・インターナショナル〉からのリリースということもあり、30/70はハイエイタス・カイヨーテに比べてさらにエレクトリックなクラブ・サウンドの側面も強かったのだが、その中心人物であるドラマーのジギー・ツァイトガイストは2018年初頭に『ツァイトガイスト・フリーダム・エナジー・エクスチェンジ』というソロ・アルバムもリリースした。こちらはエレクトリック・ジャズ/フュージョンにブロークンビーツなどのエッセンスを交えたもので、ディーゴ&カイディからフローティング・ポインツあたりへ繋がる作品だった。同じころに〈リズム・セクション・インターナショナル〉のコンピで『コンピレーション・フォー・ドミニカ』が出たのだが、そこに収録された“セルフィッシュ”という曲を歌っていたのがAJことアリーシャ・ジョイで、彼女もまた30/70の看板シンガーである。ちょうどハイエイタス・カイヨーテにおけるネイ・パームのような存在で、歌声やヴォーカル・スタイルにも似通ったところが見いだせるし、ファッション・センスもネイ同様になかなかのものだ。

 そのアリーシャ・ジョイのソロ・アルバム『アケィディ:ロウ』がリリースされたが、今度のリリース元はマンチェスターの〈ゴンドワナ〉。〈ゴンドワナ〉と30/70及びアリーシャ・ジョイとの間にどのような関係があるのか不明だが、これもUKがメルボルンの音楽シーンを注視していることの表われのひとつだろう。また〈ゴンドワナ〉にとってはノヤ・ラオと並ぶようなアーティストという位置づけで、こうしたネオ・ソウル~フューチャー・ソウル方面をより強化していこうという意向がくみ取れる。『アケィディ:ロウ』は前述の“セルフィッシュ”のほか、2017年にシングルでリリースされた“FNFL”と“アカラ”という曲も収録する。演奏メンバーはドラムのジギー・ツァイトガイスト、ベースのヘンリー・ヒックス、サックスのジョシュ・ケリー、バック・コーラスのダニカ・スミスと、ほぼ30/70のメンバーがバックを務めている。従ってアリーシャ・ジョイのソウルフルな側面にスポットを当てた、30/70のもうひとつ別のアルバムと見ることもできる。アリーシャ自体はヴォーカルのほかに作詞・作曲とキーボード演奏をおこなっており、特にエレピの演奏が歌声とともに本作の重要なポイントとなっている。

 エレピにワードレス・ヴォイスを交えて始まる“FNFL”は、コズミックな質感を持つジャズ・ファンク~フュージョン系のトラックに、自在に動き回るヴォーカルという30/70直系のナンバー。リズム・チェンジを繰り返しながら最後はヒップホップ調のトラックへと変調する様はハイエイタス・カイヨーテと同様で、こうした先の読めない展開や即興性を有したパフォーマンスが彼らの魅力でもある。“セルフィッシュ”や“オネスティ”はメロウネスとブラック・フィーリングに満ちたナンバーで、陰影に満ちたエレピとソウルフルな歌声のコンビネーションはロイ・エアーズの諸作を彷彿とさせる。“スワロウ・ミー”もメロウでジャジーなソウル・ナンバーだが、バックのトラックはアフリカ色が強くて土着性に富む。アリーシャの作品にはスピリチュアル・ジャズとの近似性が感じられることもあるが、それの顕著な一曲だろう。“ノウ・ユア・パワー”はアルバムの中でもっともジャズ色が強く、前半の変拍子から後半のジャズ・ファンクへと変調するが、この展開はエディ・ラスの“シー・ザ・ライト”を思い起こさせるようだ。“アカラ”はスロー・バラードで、幻想的で浮遊感たっぷりのエレピが存分にフィーチャーされる。ダンサブルな曲だけでなく、こうした美しいナンバーをじっくりと聴かせるあたりはムーンチャイルドにも匹敵するものだ。楽器のアンサンブルという点では、サックスとドラム、ベースのコンビネーションで徐々に形を作っていく“ドゥーム”は、30/70のジャズ・バンドとしての力量が見事に反映されている。“イーグル”は歌というよりもポエトリー・リーディングのようなパフォーマンスで、“オネスティ”にもスポークン・ワード的なパートが登場する。実際のところアリーシャはシンガー/ポエットという立ち位置のようだ。ジャズとソウルのブレンド具合、ポエトリー・リーディングを駆使したヴォーカル・スタイル、そしてロイ・エアーズやエディ・ラスなどに通じる音像を見ていると、アリーシャはフューチャー・ソウルとかネオ・ソウル、またはブロークンビーツなどよりも、むしろ知らず知らずのうちにアシッド・ジャズ的なところを受け継いで、それをいまの時代のサウンドとして変換しているアーティストと言えるのかもしれない。

小川充