ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  2. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  3. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  4. R.I.P. 鷲巣功
  5. Loraine James ——ロレイン・ジェイムズの新作、突如のリリース(しかも無料DL)
  6. interview with Kinnara : Desi La 「アートによって、私は世界に満足できるようになりました。アートが、私の孤独の多くを壊してくれたのです」 | ──緊那羅:デジ・ラ、インタヴュー
  7. Fatima Al Qadiri ──ファティマ・アル・カディリが〈Hyperdub〉より新作EPをリリース
  8. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum
  9. sibasi kyoto ──京都のレコード喫茶/カルチャー・スペース「しばし」が展覧会シリーズを始動、初開催はテリー・ライリーのオーディオ・インスタレーション
  10. Tohji - angel
  11. Cornelius - Refractions | コーネリアス
  12. Kim Doeon - SLAPSTICK | キム・ドオン
  13. Future Sound of Jazz ——蘇る「フューチャー・ジャズ」、ドイツの〈Compost〉の人気シリーズが16作目
  14. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  15. Factory Floor - JPN  / Carter, Tutti, Void - Transverse | ファクトリー・フロア
  16. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  17. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  18. This Is Lorelei - The Singer in My Band | ディス・イズ・ローレライ
  19. Columns P-VINE 50th Anniversary Interview Pヴァイン50周年対談
  20. YUKINO INAMINE + AKIO NAGASE ──琉球ダブ・ダンス・サウンドに注目

Home >  Reviews >  Album Reviews > Sun Araw- On Patrol

Sun Araw

Sun Araw

On Patrol

Not Not Fun

Amazon iTunes

三田 格   Apr 01,2010 UP

 騙されてた! サン・アローことキャメロン・ストーローンズは黒人......ではなかった。よく見ると、『ボート・トリップ』(08)のジャケットはO・V・ライトの写真をそのまま貼ってあるだけ(こんなヒドいジャケットはほかにない!)で、『ヘヴィ・ディーズ』(09)はスティーヴィー・ワンダーがうっすらと合成してあるだけ。手塚るみ子風にいうならば「あっちゃー」(「阿川佐和子との対談で泣いたんでしょ?」と聞いた時の返事)、宇川直宏風にいうならば「お返事まってますー!!!! 野際陽子より」(いつでもどこでもそんな感じ)。
 実際にはサン・アローはスウェーデンのサイケデリック・ロック・バンド、マジック・ランターンのメンバーで、バリバリの白人もいいところ(ワルシャワ情報によると、自分ではニコラス・ケイジに似ているといっていたらしい)。まー、騙されていたといっても、ほんの数ヶ月のことです。むしろ、もうしばらく騙されていたかった......かもなーとか。

 サン・アローとしては08年に『ビーチ・ヘッド』をリリースしてから早くも4作目のソロ・アルバム。マッシヴ・アタックから重量感を除いたような独特のダブ・スタイルを確立させ、なおかつ技術面でも格段の進歩を見せた『ヘヴィ・ディーズ』をそのまま受け継ぐダブル・アルバムで、タイトルに仮託された通り、それとなくストーリー性も有し、使用目的もかなり明確に(笑)。あッつー間に売り切れた先行シングル「バンプ・アップ」は、しかし、入ってません(いまのところアナログには)! 聴きたかった!

 基本となるのはソニック・ブームやジミ・ヘンドリックス風のサイケデリック・ロックをダブ風に処理し、ロック的なエッヂを強調することなく、ひたすら煙に巻こうとするスタイル。リズムで人を持っていこうという気はまったくなく、かといってドローンでもないところがほかとは決定的に違う。むしろミニマルが基調で、ベーシック・チャンネルのロック・ヴァージョンというのがいちばん近いだろうか。抑え込もうとしてもロック的な欲望がどうしても噴き出してしまい、その過剰さなり、子どもっぽさが発展の余地として感じられるところが強い。
 導入からふわふわとしたギターのループを繰り返すだけのチル・アウト・モードに始まり、"ビート・コップ"から本格的な旅(=パトロール)が始まる。気がつくとヘンなところにいるようなタイプの曲が多く、集中力があった方が楽しめるのか、そうでもないのかはよくわからないままに曲が進んでいく。それでも最後にサイドD全体を使った"ホロデック・ブルーズ"では足元からどんどん景色が変わっていくようなクライマックスに連れ去られ、目くるめくスピードの世界にやられてしまう。この人はまだいくらでも伸びるような気がするなー。

三田 格