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interview with NF Zessho

interview with NF Zessho

サンプリングは、それを突き詰めればDJプレミアみたいなすごいことになるけど、俺がDJプレミアになれるわけじゃない。だったら自分にないものを埋めたいと思って。

──NF Zessho、インタヴュー

取材・文:高久大輝    協力:二木信、Rio Grande
photo by Kippei
Aug 27,2026 UP

NF Zessho
Ultima

Enpizlab Records / Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV disk union

 NF Zesshoは、メロウなラップやトラップ以降のサウンドが主流の現在の国内ヒップホップ・シーンで、緻密なライミングと自在なフロウ、サンプリング主体のビートを武器に独自のキャリアを切り開いてきたラッパー/ビートメイカーだ。
 現在ではミックスやマスタリングの技能まで身につけている彼だが、それだけの能力を持ちながら、決して「ひとりで完結する」ことだけを選んでこなかった。
 自らの作品を作る一方で、仲間のレコーディングやエンジニアリングを引き受け、Oll KorrectやAWOL CARTELといったコミュニティの活動にも多くの時間を注いできた。そして皮肉なことに、ラップで生計を立てられるようになったからこそ、いつしかラップそのものには慎重になっていったという。
 1993年、福岡市早良区生まれ。15歳より活動を開始し、2013年の1stアルバム『Natural Freaks』、2015年の『Beyond the MoonShine』を経て、2018年の3rdアルバム『CURE』でより広く知られるようになると、翌2019年には『Bad Vibes Only』、Aru-2とのジョイント作『AKIRA』を発表。そうしてソロ・ラッパー/ビートメイカーとして独自のキャリアを築く一方、同世代のラッパーやビートメイカーらによるコレクティヴ兼イベント、Oll Korrectでは中心的な役割を担い、近年は2010年前後のオンライン上のつながりを源流とする緩やかな集合体、AWOL CARTELでも活動している。
 そんなNF Zesshoが、最新EP「ULTIMA」で取り戻そうとしたのは、意外にも「もっと気軽にラップする」ことだった。個人とコミュニティ、遊びと仕事、気軽さと作品主義。相反するようにも見えるものを行き来しながら音楽を続けてきた彼は、33歳の現在、何を手放し、何を残そうとしているのか。EP「ULTIMA」を入口に、仲間との関係、ラップとビートメイク、そして長年構想してきた次のアルバムについて訊いた。

ラップをちゃんと考えてやらなきゃいけないとか、それで金を稼がなきゃいけないとか、シーンがこうだから自分はこうしようみたいな計算とか、全部ダルくなってきて。うぜえな、好きにやろうって。

最新EP「ULTIMA」は客演なしで、ご自身のラップに集中した作品になりました。近年はどのようなモチベーションでラップに向き合っていますか?

NF Zessho:前よりもっと気軽にラップやりたい気持ちになってるかもしれないですね。ビート作るのは、そこに言葉がない分、とりあえずFL Studio(DAWソフト)を立ち上げたら何かできるんで、日常的にずっとやっていて。でも、ラップに対してはめっちゃ腰が重かったんですよ。
 ありがたいことに俺はラップで生計を立ててるんで、ミスったら食えなくなる可能性もある。そう思うと簡単には曲を出せないなって思っていて。そこが最近は吹っ切れたというか、それじゃつまんねえなと思うようになったんですよね。

つまらない?

NF Zessho:ラップをちゃんと考えてやらなきゃいけないとか、それで金を稼がなきゃいけないとか、シーンがこうだから自分はこうしようみたいな計算とか、全部ダルくなってきて。うぜえな、好きにやろうって。

それはラップをはじめた頃の感覚に戻ろうという意識でもありますか?

NF Zessho:近いかもしれないです。あとはYNZ Bounceっていう仲間がいて。出会った頃は何もしていなくて、途中でDJをはじめて、2年くらい前にラップもはじめたやつなんですけど、そいつは身体で作っているというか、どこでも作るし、すぐ形にするんですよ。それがカッコよくて、「これがラッパーじゃん!」って思ったんですよね。一緒にいる時間も多いんで、めっちゃ影響を受けてます。音楽だけじゃなく、人間性だったりも。

「仲間」というのは、NF Zesshoさんの活動において重要ですよね。ラッパーのクリシェというよりも、Oll KorrectやAWOL CARTELのようなクルーでも実際に作品を作ってきたわけで。そんななかで、ご自身のソロはどういった位置付けなんでしょう?

NF Zessho:ソロが本筋ではあります。Oll KorrectやAWOL CARTELだったりは、仲間を上げたいって意識がめっちゃ強くて。なぜかと言うと、一緒にやっている仲間は、そもそも音楽以前に、遊んでいて楽しい友だちで。友だちがラップで稼いでたら、その分仕事しなくていいからめっちゃ遊べるじゃないですか。ビジネスも一緒にできたら、必然的に一緒にいる時間が作れる。それがいいなと思って。そのために自分のことをある程度犠牲にしながら周りのことをやっていたというか。もちろんやりたくてやってるんですけど、例えばクルーの作品作りの舵取りだったり、ラップのレコーディングを俺ん家に呼んでやらせたり、それをミックスしてマスタリングして、じゃあどう出していくかまで考えることもあったり。
 本当はソロも同じくらいやりたかったんですけど、思った以上にめちゃくちゃ時間が取られてしまって。でも、そっちも一回生んだ流れだから無駄にはしたくない。それでソロが控えめになっていた感じですね。だから本当は自分の曲をめっちゃやりたいです。

普通にボーッとゲームしてる時間もめちゃくちゃある。だったらそれも俺のリアルじゃないですか。そういう言葉が自然に出てくるから採用してるって感じです。

ミックスやマスタリングもかなりの数を手がけてきたと思いますが、エンジニアリングにはどういった感覚で取り組んでいますか?

NF Zessho:ミックスやマスタリングは、他の人の曲を触らないとわからないこともめっちゃあるんで、勉強という意味ではやってよかったと思います。でも仕事って意識が強いかもしれないです。
 とはいえ、友だちの作品をやるときはタダで受けてるわけじゃないけど、かかる時間に対しての採算はまったく合ってなくて。一緒にいるのが楽しいし、友だちの曲から刺激もあるし、悪いことばっかりではないけど、人間生活としてやらなきゃいけないこともめちゃくちゃあるわけで。そのバランスはずっと図りかねていますね。

今回のEPだと “Community Pride” はタイトル通りコミュニティについて歌った曲ですが、やはり最終的には仲間と成功することが目標ではあるんですよね?

NF Zessho:理想はそうですけど、仲間がやるかどうかという領域に関して、自分は何もできないじゃないですか。そいつがやりたいと思ったときに不自由のないようにするくらいが自分のできることで、本当にやるかどうかはそいつら次第なんで。

無理にやれとは言えないと。

NF Zessho:昔は言ってましたよ。Oll Korrectでがっつりやりはじめたときは26、27歳くらいで、まだなんとかなる感じがあったから。でも、もう33歳で、若いラッパーもたくさん出てきていて。やっぱり33歳と若い子ではエネルギーが違うんで、ここから何か本気でやっていくんだったら相当苦しみながらやるしかない。ラップじゃなくてもそうだと思いますけど。それを強制することで、その人が不幸になる可能性もあるじゃないですか。そこまでは責任を持てないし、持つべきじゃないと思うんです。仲間がやりたいと思ったらサポートはしてあげたいけど、「なんでやらねえんだよ」って発破をかけるフェーズはもう過ぎたというか。まあ、いまでもたまに言っちゃいますけど(笑)。

NF Zesshoさんが以前SNSでシェアしていた、〈10k〉というオルタナティヴなヒップホップ・レーベルの記事と繋がる気がします。「BUSINESS AS UNUSUAL」というタイトルで、レーベルの機能を持ちつつ、契約などで縛らない緩い繋がりを維持している〈10k〉の実態に迫る内容です。

NF Zessho:日本でいちばん〈10k〉っぽいのは俺らな気がしています。やってる音楽とかじゃなくて、在り方というか。メインストリームのことも面白がってるけど、「俺らはこういう感じ」っていう。それがイケてると思うんですよね。曲の鳴りとかも結構際どくて、ちゃんとしてるけどちゃんとしてない、ちゃんとしてないけどちゃんと鳴ってるというか。「これ録り直した方がいいんじゃない?」ってものも、「いや、でもこういう感じでしょ。もうこれでよくない?」って出してしまうような感覚もあると思うんです。そういうラフさにも共感しますね。

例えば、Oll Korrectではどんなものを共有していますか?

NF Zessho:Oll Korrectや、そこに関わってる友だちはみんないろんな好みがあるのが面白くて。自分がド直球に好きな系統以外だと、例えばKENTAHってDJはニュー・ジャック・スウィングとかをよく流してるし、WhelmeyってDJはSoundCloudやBandcampをめっちゃ掘っていて、謎のリミックスとかばっかかけてるし。DJをやってないやつらのなかにも、メインストリーム好きも、G(ギャングスタ・ラップ)好きも、サウス好きもいるんです。もっと違うのが好きだったりする奴もいるけど、それぞれの領域があって。そこから勉強させてもらってるのと、ドラムキットとかも全然共有したりしているんですよね。 音楽以外も、お笑いの話とか、最近の世間で流行ってるような話題の話もしたりしますよ。あと古(いにしえ)の日本語ラップの話は一生しています。

俺が社会のなかでいていい場所ってそんなにないなとか思って。だから、ラップをしくったら相当まずいことになるなと思ってます。

ちなみに仲間の間で最近流行っているサウンドの傾向はあったりしますか?

NF Zessho:ちょっとあるかもしれないです。わかりやすいところで言うと、近年のジ・アルケミストがよくやっているような、ドラムを足さない、ネタを回したまんまのようなビートというか、そういった流れを踏まえたビートで。J'Da Skitの次の作品やNyQuilCapsのSakaiのソロもそういったビートの雰囲気が多めですね。Sakaiのソロに関しては自分が作ったそういうビートばかり渡しています。

楽しみです。EPの冒頭の “Diamond Run” にわかりやすいですが、スクリュー、スロウド的な手法もNF Zesshoさんのビートのひとつの武器になっていますよね。

NF Zessho:そうかもですね。さっきも言いましたけど、仲間にサウス好きがいて、影響されて一瞬ハマっていた時期があったので、そういうエッセンスも取り入れたくなって。というか単純にピッチとして聴くともう全部よく聴こえるんすよ。“Diamond Run” に関しては、もうもろDJスクリューの “My Mind Went Blank” の一節をサンプリングしていて。「俺が持ってるもん全部仲間にわける、俺はジェラスするタイプじゃない(Sharing what was mines, 'cause I ain't no jealous type)」みたいなことを言ってるラインですね。

リリックの話もさせてください。“Community Pride” には「毎日対峙するスティグマ」というラインもあります。NF Zesshoさんのリリックはワードプレイが多い一方で、かなり身の回りの出来事から書かれている印象があります。

NF Zessho:それがラップだと思ってます。基本的にはビートを聴いた上で書きますけど、最近は何もないところで思いついたらメモしたりもしますね。寝る前にパッと8小節くらい出てきて、それだけ書いて置いといて、合いそうなビートが来たときに使うとか、もっと言うとそれに合わせてビート作ったり。そこも含めて、最初に話した「もっと自由にやりたい」っていうところなのかもしれないです。

ゲームや漫画、アニメなどを絡めたワードプレイもNF Zesshoさんの特徴だと思います。それも日常から自然に出てくる?

NF Zessho:そうですね。別にゲームとかアニメのキャラ付けをしたくて出してるわけじゃなくて、俺が実際に見たり触ったり、そのときハマってるものが出てくるだけなんです。
 例えば俺がストリートでプッシュしてるんだったら、そういうことをラップすると思うんですよ。でも普通にボーッとゲームしてる時間もめちゃくちゃある。だったらそれも俺のリアルじゃないですか。そういう言葉が自然に出てくるから採用してるって感じです。

ビートがない状態でもリリックが出てくるのは、自分のラップに対する自信もある?

NF Zessho:ある意味、自分のラップ・スキルを信用してるんだと思います。

「ULTIMA」では “Grease” でのフロウの切り替えも印象的でした。意識してヴァリエーションを増やしているんでしょうか?

NF Zessho:自分のなかに「俺のフロウ」みたいな基本の型はあると思うんですけど、それだけをやってると自分でつまんなくなってくるんですよ。それと、違うフロウにすることで言えることが変わるとも思っていて。Aっていうフロウには、そこに入れられる言葉の制約がある。でもBのフロウにすれば、その制約が変わることによって、Aでは言えなかった別のことが言えるようになる。そして、逆に制約があるからこそ、面白い言葉やライミングが出てくることもあって。「自分の頭にはなかったけど、俺が出したにしてはめっちゃすげえじゃん」みたいなものが出てくる。それがラップの面白いところだと思います。自分以上のものが出せるというか。

二木:ちなみにビートメイクをはじめたのはいつ頃だったんですか?

NF Zessho:16、17歳くらいですね。ラップをはじめたちょっと後ぐらい。そもそもラップにしか関心がなくて。でもラップやってたら自分でビートも作ってみたいと思うタイミングがあると思うんです。その時期はDTM過渡期だったと思うんです。MPCかパソコンかっていう。MPCは買わないといけないけど、パソコンは持っていたんで、自分の周辺で当時SONYのACIDっていうDAWソフトの割れが同じ人から流出して、みんな持っていたんで、それではじめましたね。
 プロデューサーだとJ・ディラが好きで、当時のスラム・ヴィレッジの作品群や、本人名義の作品で言うと『The Shining』ってアルバムが好きでしたけど、自分はJ・ディラみたいにはなれなかった(笑)。でもMFドゥームとかも好きだったので、真似してネタを回してドラムブレイクを乗せるみたいな基本的なところからはじめました。SONYのACIDだとそういうのが作りやすかったみたいな理由もあったと思います。自分でラップするためにYouTubeにあるインストを使って曲を作ったりして、そのなかでJ・ディラ、DJプレミア、ピート・ロック、ジ・アルケミストみたいな、偉大な人たちを知っていった感じですね。知っていったというか、単純にあんま知らずにやべぇって思って聴いてたけど、よくよく調べると凄い人たちだったというか。

NF Zesshoさんの活動を象徴するラインでもありますね。一方で最近はサンプリングだけでなく、ご自身で演奏した要素も増えています。

NF Zessho:それは自然に身についたというより、身につけようと思って身につけました。楽器ができる人に対してコンプレックスがあったんですよ。サンプリングは、それを突き詰めればDJプレミアみたいなすごいことになるけど、俺がDJプレミアになれるわけじゃない。だったら自分にないものを埋めたいと思って。
 鍵盤をちゃんと弾くのは途中で無理だってなったんですけど(笑)、ある程度の理論は勉強して。Oll Korrectにtommgnっていうギター弾けるやつがいるんで、自分で調べた上で「これってこういうこと?」って確認したりもしてましたね。そういう仲間がいるのは心強いです。

じつはNF Zesshoさんとも関係の深い、WORM TOKYOのRioさんからも質問を預かっています。Defalt Copy名義でDJをはじめたことは、ビートメイクにも影響していますか?

NF Zessho:Rioさんありがとうございます! 意外と真面目な質問だ(笑)。それはあるかもしれないですね。DJをやりはじめて、改めてドラムが強い曲っていいなと思ったんですよ。
 ここ数年はドラムがあんまりない、ネタをフリップしてるだけみたいなヒップホップを聴いてる時間が多かったんですけど、DJでクラブでかけようとすると、そういう曲だけじゃ難しいじゃないですか。DJをやることも考えながら曲を掘っていると、自然とドラムの強い曲が耳に入ってくるようになる。その影響は、いま現在作ってる自分のビートにも徐々に現れてきてると思います。

自分にとってアルバムが重要なんです。一個のレガシーを打ち立てることが人生における大義じゃないですか。何かを残したいとか、こいつにはこれがあるからすごいよねっていうものを残したい。

「ULTIMA」には年齢や、ラップを続けていくことへの責任を感じさせるラインもあります。ラップで生計を立てることへの意識は年々強くなっていますか?

NF Zessho:俺、これ仕事なんですよ。本当にこれしかやってないし、これしかできない。昔ミスドで働いてたことがあるんですけど、ミスドって決まった人しかドーナツを作っちゃいけなくて、その店では俺と店長だけが作れたんです。だから店長が休みの日は俺が作るしかないんですけど、一生懸命やってるつもりなのに自分の仕事がトロすぎて、オープンまでに全ラインナップ中の半分くらいのドーナツしか作れてなくて、商品棚がスカスカになってるみたいなことが多々あって。店にも迷惑かかるし、なんか俺が社会のなかでいていい場所ってそんなにないなとか思って。だから、ラップをしくったら相当まずいことになるなと思ってます。中卒だし、本当にこれしかできない。

ラップに賭けている一方で、将来への怖さもある?

NF Zessho:ありますね。「60歳でラップやれんの?」って考えると、たぶん無理だろうなって。でもビートも作れるし、プロデュース的なこともなんとなくできる。ビートやミックスを本気で勉強してきたのは、それもありますね。保険をかけてるし、表現の幅も広げようとしてる。

ご自身で書かれたnoteによると、「ULTIMA」はアルバムには入らない、ラップへの欲望を昇華した作品でもあるんですよね。つまり、アルバムという形式はかなり重要なんでしょうか?

NF Zessho:いちばん重要ですね。最近のラップ・シーンがシングル・ヒット中心だからとかはあまり気にしてなくて、自分にとってアルバムが重要なんです。一個のレガシーを打ち立てることが人生における大義じゃないですか。何かを残したいとか、こいつにはこれがあるからすごいよねっていうものを残したい。
 そういうアルバムを作ってる人って、俺のなかではリスペクトのレベルが一個違うんですよね。例えばケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』、日本で言うんだったら、仙人掌さんの『Be In One's Element』、Jinmenusagiさんの『LXVE』。いまパッと思いついたのはその3つですけど、どの作品も圧倒的に一本の軸がありますよね。そういうものに憧れてきたから、自分もそんな作品を作りたいって思うのは自然かなって。

その一方で、世代的にはDatPiffなどでミックステープを次々出していく感覚も持っていますよね。

NF Zessho:持ち合わせてはいると思います。クルーの方は否が応にも軽くならざるを得ない側面があるというか、みんなで一曲で真面目なことをやるのってちょっと恥ずいじゃないですか。人数がいるなら、その数の利を使った方がいい。集団でいることによる勢いみたいなものが大事だと思うんですよ。例えば女の子に振られた歌を3人でやるかって言ったら、それはちょっとヤバすぎるじゃないですか(笑)。

では、「ULTIMA」の先にある次のアルバムは、かなり以前から構想していたものなんでしょうか?

NF Zessho:もうずっと考えてます。『CURE』を出したあとから、ずっと一個形にしたい “主題” みたいなものがあって。でも、なかなか形にできなかった。実力的なこともあったし、人間生活的な意味での人生のタイミングとしてそういう時期じゃなかったのもある。
 それと、普通に現実的な理由もあって、当時は貯金をすり減らしながら生活していて、「来月やべえかも」ってなると、急いで作品をパッケージして出して、「これでまた数ヶ月は大丈夫だ」みたいなことをやってたんですよ。だから本当は次のアルバムに入れようと思っていた曲も、その過程で出してしまったりして。例えば “Luv Deluxe” や “Paradise” も本当は次の作品に入れたかった曲で。だから『Bad Vibes Only』は事故というか、その構想の残骸みたいなところがあるんです。
 当時の構想としては、サウンド的には、オルタナティヴ・ロックっぽい、当時ハマっていたプーマ・ブルーやメン・アイ・トラスト的なエッセンスを用いつつ、トピックとしては、その形にしたかった “主題” が全編通して聴けば見えてくるといったものが作りたかったのですが、叶いませんでした。それでも、本来の趣旨とは違う形になってしまいましたが、『Bad Vibes Only』は自分でも大事な作品のひとつです。結局 “主題” からは逸れたテーマになってしまいましたが、あの時期に考えていたことをあのとき持っていた能力全て使ってパッケージングできた作品だといまでも思っています。
それで、その “主題” はいまもなお持ち続けているのですが、いまはサウンドの好みが当時と少し変わったので、サウンドの部分では少し違いますが、今度は完遂させようと思っています。

当時は形にできなかったものが、いまなら作れる?

NF Zessho:最近ようやくできそうかなって思ってます。『CURE』からいままでの間にいろんなことがあったから、少しは人間としても成長してると思うし、ビートもずっと作り溜めてきた。当時作ったものをいま聴くと、鳴りとかそもそもの完成度含めて「これあのとき出さなくてよかったな」って思うものもあるんですよ。いまようやく、ちゃんと形にできるところまで来たかなと思っていて。いまめっちゃ作ってますね。ビートはもうほぼ溜まってるんで、年内には完成させます。

どんな作品になりそうですか?

NF Zessho:あんまり人に触れられたくない自分の部分の話をしたいですね。それをひとつの作品に残して、そこでそういうのは一旦終わりにしたいというか。自分自身とこういう感じで向き合い続けてると、シンプルに人生が辛くなっていく一方なので。

では今後はソロに集中していくんですね。

NF Zessho:はい。いま抱えてるOll Korrect周りの作品とか、ミックスしなきゃいけないものがいくつかあるんですけど、それが終わったら一回そういうのを全部止めて、自分のソロだけに集中しようと思ってます。
 でもOll Korrectでツアーはやりたいですね。まず福岡でやりたい。この前、かなり久しぶりに福岡でライヴしたら、「おかえり」みたいなムードがあって、それがめちゃくちゃ嬉しかったんです。
 あとは〈Brain Dance〉っていうDJパーティも不定期で開催していて、そこでは来てくれてる人たちと積極的にコミュニケーションを取りたいし、音楽の趣味が近い人たちのコミュニティみたいなのが築ければいいなって思ってるので、ぜひ遊びに来てほしいです。

取材・文:高久大輝(2026年8月27日)

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高久大輝/Daiki Takaku高久大輝/Daiki Takaku
1993年生まれ、栃木県出身、東京都在住。ライター、音楽メディア『TURN』編集部。

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