Home > Interviews > interview with Buffalo Daughter - ただの雑談
やっぱ端っこなんじゃないですか。ついこのあいだまで日本のメジャーのバンドのお手伝いをしてたんだけど、まったく違うもんね。ほんとにうちって極端なところにいるんだなってよくわかった。
■なるほどね。さっきアメリカ・ツアーとおっしゃいましたけど、バッファロー・ドーターにとってはアメリカが一番近かった外国ですよね、きっと。
吉永:そうですね。
■僕は、いろんな国の音楽シーンがあるなかで、アメリカがこの10年とくに面白く変わったなっていう印象があるんですよね。1周回ってしまったというか、いちどレコード屋さんが全部なくなって、そしてまたいまできはじめている状況もあるし。
山本:え、またできてるんですか?
■インディでやってる若い世代がアナログ志向になってるんで。
山本:ああー。
■インディ文化、DIY文化は、いまのアメリカはすごいですよ。生まれたときには家にCDしかなかった世代がメインなんですけど、彼らの活動の象徴が、ヴァイナル、カセット、ライヴ活動で。配信はあるけどCDは作らなかったり。
山本:カセットってダウンロード・カードは入ってるんですか?
■入ってるのと入ってないのとありますね。入ってないのが多かなー。
山本:じゃあ敢えてカセットで聴けっていう。
■録音音楽の形態はカセットとアナログ盤に帰結するという、結局は20世紀のものなんですよ。
山本:下北に「ワルシャワ」があった頃すごくカセットを推してて。
■そうそう。
山本:「ワルシャワ」なくなっちゃったんでしたっけ?
■なくなっちゃったんですよー。
山本:あそこでサン・アローを推してて。サン・アロー僕すっごく好きなんですよ。
■ははははは。だからサン・アローみたいなものが日本では売れないんですよ。アメリカだとSXSWの大きいホールが満員になるぐらい人気があるんですけど。これは海外のアーティストやDJからもよく言われますよ。海外から日本を見ても、この10年っていうのはすごく温度差を感じているんですね、インディでもクラブでも。
山本:たしかにいまの日本の音楽シーンって海外に対して閉ざしてますよね。
■たとえばいま日本で売れる洋楽って、ニュー・オーダーとかさ。
山本:ああ、オヤジが買ってるんですか。
■そう(笑)。
吉永:オヤジが買ってるって(笑)。
■プライマル・スクリームとかマイブラとか。だからきっと僕の世代が頑張って買ってるんですよ(笑)。
吉永:でもそれはファンだから買うんでしょ? 20年前からファンだから。
■その世代のものは相変わらず売れるんですよ。でも、ひとつ例を挙げれば、いまUSでは、もうインディとは呼べないくらいすごく売れているヴァンパイア・ウィークエンドみたいなバンドがいるんですけど、日本でもまあ健闘はしているほうですけど、ニュー・オーダーとかあの世代には敵わないっていうね。
一同:......。
■ほら、だんだん後ろ向きな気持ちになってきたでしょう(笑)?
一同:はははははは!
山本:いや、メディアのひとはたいていネガティヴなんですよ。
吉永:なんでヴァンパイア・ウィークエンドは日本で売れないの?
■いやいや売れてますよ。売れてますけど、アメリカとの温度差はハンパないですよ。
吉永:アメリカでは大スターだよね。もうだって、サタデー・ナイト・ライヴとか出てるよ?
(スタッフの方含め、全員で議論が盛り上がる)
■だから80年代末から90年代初頭のやつが売れるんだよね、大概。
山本:明らかにオヤジが買ってるじゃん。
■そう(笑)。
吉永:だから若いひとたちが買わないってことだよね。
■いや、若いひともオヤジのロックは買うの(笑)。『ラヴレス』が出た頃より、オヤジになったケヴィン・シールズをみんな買うんですよ。
山本:いや、あれはオヤジになったケヴィン・シールズじゃないですよ。シューゲイザーのあの切なさがこの不況の時代にマッチするんですよ。
■それもあると思いますよ。
山本:いや、「それも」じゃなくてそれですよ。
一同:はははははは!
吉永:その言い方でいうと、だからヴァンパイア・ウィークエンドが売れないんじゃない? マッチしてないんじゃない?
山本:マイブラに関しては僕は語りますよ。
■なんでですか?(笑)
山本:いや、僕IKEBANAってバンドをちょっと前までやってたんですけど、それはパートナーだった子がマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのことがすごく好きで、彼女からいろいろオルグされて、フジロックもマイブラだけを観に行きましたし。
■(笑)すごいですね。ムーグさんをオルグするって大変だよね。
山本:あとデヴィッド・バーンがこの間来たときに聞いたんですけど、デヴィッド・バーンはマイブラが好きなんですよね。それが面白くて。
■マイブラが悪いわけじゃないんですよ(笑)。
大野:アダム・ヤウクも好きだったよ、マイブラ。
山本:でもいまのマイブラの受け方っていうのは明らかに、暗い時代のなかで切ないけど......でもすごくフィットするんですよ。マイブラのあの感じが。フィッシュマンズの受け取られ方とちょっと似てるっていうか。
■フィッシュマンズやマイブラみたいにリアルタイムよりもファンを増やしていくようなタイプのバンドっていますよね。マイブラが売れることに関しても、評価が定まっているクラシックっていうか、ロックって、再結成だとか、再発だとか、そんなのばっかでしょ。あと、ムーグさんが言ったように、日本の音楽シーンって、政治的になっていますよね。それはそれで良い面もありますが、音楽っていうのはそれだけではないって僕は思っていて。たとえば、90年代の日本では売れないものも売れたという言い方をしたのは、多様性があったということなんですよね。
山本:そうですね。
■とくにアメリカは多様性が際立っているんですけど、いまの日本の音楽には多様性が見えないっていうか。それって危険なことだなって思うんで。ヘイトじゃないけどね、自分と違うものを否定してしまうことになりかねないじゃないですか。だからいまの若い子たちに90年代の自慢をして、バッファロー・ドーター20周年を盛り上げるっていうのはどうかなって(笑)。
吉永:(笑)
山本:自慢するっていうのはなんか......(笑)。
■寒かったすね(笑)。でも90年代の音って、いま若い子にも売れてるから。その線で行けばバッファロー・ドーターの20周年記念盤は売れますよ。
山本:ああー、じゃあそういう風にして売っていこうか。あの、任せます。
■はははは。いや、わからないですけど。
山本:でもたしかに、さらに遡ればパンクの後のニューウェイヴもそうだったんですけど、いったん焼け野原になったあとにすごくいろんなものが出てきて、自由でしたよね、あの頃って。
■そうですよね。
山本:それがオルタナティヴの頃もちょっとあって。それこそ「シスコ」のラウド店に行くと、知らないものがどんどん入れ替わっていくっていう楽しさがあって。いろいろなものに対して自分たちも受け入れられるっていう、そういう自由さはありましたよね。
■あ、わかった。バッファロー・ドーターはあれだ、レッド・クレイオラになればいいんだ。
山本:知らないよ(笑)。
■初期〈ラフ・トレード〉の精神的な支柱ですよ。
山本:メディアのそういう見方に対して、僕らは「そうじゃないです」とか「そうです」とかって言わない、っていうかそれはメディアを持っている方の署名で原稿書かれているわけですから、僕はその解釈の仕方は自由だと思うんですけれども、個人的には、かなりピンと来てないです(笑)。
取材:野田 努(2013年8月12日)