Home > Interviews > interview with Buffalo Daughter - ただの雑談
うちはアルバムとアルバムの間隔が長いじゃないですか。だって20年もやってんのに、6枚しか出てないってさ(笑)。でも意図してそうやってるわけじゃなくて、やっぱり完成形が見えるまでに時間かかるものがあったりとか、あと誰かがバッファロー・ドーターやる気分じゃなかったりとかね。
■なるほど......はははは。どうですか、ムーグさんは。変わらない部分ももちろんあると思うんですけど、この20年で変わった部分はものすごく変わったと思うんですね。それこそ音楽のリリースの仕方にしてもそうだし、メディアに関してもそうだし。変化ってものを感じるようなところっていうのは。
山本:社会状況とかメディアのあり方とかっていうのは本当にすごく変わったと思うんですけれども、僕が改めて思うのは、音楽の力を再認識してますね。アナログ・レコードがCDになったり、CDがデジタル配信になったりとか、またアナログがそれと同時に復活したりUSBでリリースしたりとか、容れもの自体は変わるんですけど、やっぱり音楽の力っていうのは変わってないって思ってるんですよ。消費のされ方で軽く扱われる音楽もたしかに多いとは思うんですけど、誠実に作ってそこに込めるものを込めた音楽っていうのはメディアがどうあろうともやっぱり僕は伝わると思うんですよ。だからそれはたんにメディアの技術革新であって。
いっぽう社会状況を見ると、昔平和で好景気だったなと思うんですよ。それがどんどん戦争がほんとに現実的になってきて、しかも地震もあったし放射能問題もほんとリアルに迫ってきてて、平和な時期は終わったんだろうなと思うんですけれども。そこでも音楽の重要性って出てきてて、なんかみんなすごくミュージシャンの発言を聞きたがるじゃないですか。ミュージシャンが何か発言すると、すごくメディアも取り上げるじゃないですか。斉藤和義(さんが「あれはぜんぶ嘘だった」っていうのを素朴な気持ちで上げたら、まあ賛否両論ありましたけど、ものすごく拡散して、結局はそれが支持されてると思うんですけれども。あとは国内だと、忌野清志郎さんのかつてのタイマーズなんかがすごく再評価されて、伝説のミュージシャンみたいになってるじゃないですか。あと教授なんかもすごく精力的に動かれてて、そこに下の世代がいっしょに何かをしたりとか。その一番上にはオノヨーコさんがいらっしゃると思うんですけど。僕らはたまたまハリウッド・ボウルでやったときに、「ぜんぶ繋がったな」と思って。ヨーコさんがいらっしゃって、YMOや小山田くんもいてて、僕らとチボ・マットがいて。だからメディアが変わっても音楽は変わらないし、世のなかがこれだけ危機的状況だと音楽の意味っていうのがすごく問われてるから、そこでちゃんと作っていればやっぱり音楽ってすごく評価されると思ってるし、自分たちもそこはすごく真剣に作ってますね。
■なるほど。
山本:だからそれは、年を経て音楽に携わって良かったと思ってるし、自分はいい音楽を作ってきたっていうちょっと誇りみたいなものを感じてますね。
■僕はそこまで前向きな気持ちになれないんですよね。たとえばいまは売れるものが売れる時代だって言われるんですね。90年代は売れないものも売れたんですよ。でもいまは売れるものしか売れない。だから売れるとみんな買うんですよ。というのがひとつある。音楽の力はあるんだろうけど、録音された商業音楽にもあるのかどうか。
山本:たとえばダンス・ミュージックって、ある意味消費されることを前提に作ってるじゃないですか。
■はい。
山本:リニューアルがダンス・ミュージックの命っていうか、たとえば2年前のダンス・ミュージックをありがたがって聴くひとって少ないと思うし、つねに先端先端をリニューアルしていくことがダンス・ミュージックの使命だと思うんですよ。ここ数年はね。そういうものが消費されて、そこに音楽の力を感じないのは僕もそうなんですけど。それは僕も音楽本来の力じゃなくて、あれはああいうものなんですよ。ただやっぱり、いわゆるダンス・ミュージックと言われているなかでも、僕はリッチー・ホウティンなんかは――。
■ムーグさんが、ホントに好きですね。
山本:やっぱりすごく深く見てて。曲のタイトルでもすごく共感できるところがあるんですよ。PVでタルコフスキーの映画をサンプリングして作っているやつがあるんですけど。
■へえー。
山本:彼はすごくしっかりしたメッセージを持ってると思うし、それはいまの時代にちゃんと発信していると思ってるんですけど。まあ、リッチー・ホウティンがすごく面白かったのは数年前なんですけど。いまも、たとえば昨日シュガーで聴かせてもらったボーズ・オブ・カナダの新作なんかはいまの時代に対して、寡黙ですけどちゃんとメッセージしているんですよ。
■まあそうですね。
山本:それは言葉で言わないで、音に込めてるんですよね。それがやっぱり音楽の力だと思うんですけど。あとウェブの使い方もすごくスマートで機能的だと思うし、ボーズ・オブ・カナダが僕はすごくいいと思いますね。まだ買ってないですから言えないんですけど、ウェブはざっと見て、すっごいわかりやすいなと思ったし。
■なるほど。
山本:あとやっぱり、ダフト・パンクの新作とかも、まあいろいろあるんですけど、僕はダフト・パンクはすごく力を持ってるひとたちだと思いますね。彼らはメッセージはあんまり出さないけど、どっちかって言うとこう――。
■僕はあれが売れるのは悔しくてしょうがなかったですけどね。
(一同笑)
■なんかね......、ファレル使ってナイル・ロジャース使って、お金かけてディスコ・クラシックやって、まあいいんですけど(笑)。
山本:彼らはメッセージというか、ファンなんですよね。音楽の楽しさなんですよ。それはそれでひとつのあり方だと思って。......いいですよ、それで。
(一同笑)
山本:ただ僕はルーツとしては、世代的にパンク直撃だったんですよ。76年。それこそピストルズ超ハマって、で、ニューヨーク・パンクも好きでしたけど、最初はやっぱりロンドン・パンクがあったので。ハウスのときになってKLFとかコールド・カットにすごくハマったんですよ。そこはやっぱりイギリス人ならではのパンク・スピリットを感じたし。とくにKLFは超ハマってて、いまでも大好きですけど。ダフト・パンクはそれに比べると、やっぱりフランス人だし、あんなにポリティカルじゃないですけど。やっぱりブリティッシュ・パンク、ロンドン・パンクが好きですね、精神的には。
■KLFといえば、ビル・ドラモンドの本を8月末に出しますよ。
山本:ほんとに? うわ、楽しみ!
■翻訳はほぼ終わってるんですけど。すっごい面白いですよ。
山本:でしょうね。
■すっごい面白いけど、売れんのかなーと思って(笑)。
山本:でもそれは出す意味はすごくあると思いますよ。彼は『ザ・マニュアル』っていうのも出しましたよね。あれも僕はすごく好きで。
■僕も大好きです(笑)。
山本:だってKLFっていちいち言うことが格好良くて。
■その本はビルが自分で書いているので、どちらかと言えば格好悪い話が多いですけどね。KLFが作品を最後に出したのは......は「ファック・ザ・ミレニアム」が最後だよね? 弘石くん。
弘石(U/M/A/A株式会社代表):90年代後半に、2K 名義でリリースしたんですよね。
山本:ヒロシくんって呼ばれてるんだ?(笑)
■いやいや、弘石くんです!
(一同笑)
■お金を燃やしたりね。
山本:ちょっと現代美術なんかもあるし。
■ていうかね、ビル・ドラモンドって、思っていた以上にアートのひとでしたね。あとね、ビルの一番の影響。「このバンドに比べたらローリング・ストーンズなんて酒場のハコ・バンドにすぎない」って言うぐらい大好きなバンドがあって、それがレジデンツなんですよね。
山本:すごいですね!
■そうなんですよ。で、エコー・アンド・ザ・バニーメンのツアー中に、マネージャーだから付き添っていかなきゃいけないのに、リヴァプールにレジデンツが来るって言ってライヴを観に行ってるんですよ。83年ぐらいに。良い話でしょ!
吉永:へえー。
山本:......今度、飲みましょ。
■そうしましょう。
(一同笑)
取材:野田 努(2013年8月12日)