ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Marcellus Pittman ──デトロイト・ハウス珠玉の逸材、マーセラス・ピットマンの来日ツアーが開催
  2. METHOD MOTEL - @名古屋・栄CENTRAL
  3. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  4. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  5. Protomartyr - Hotel Usona | プロトマーター
  6. ゲーセン波乱万丈の100年史
  7. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  8. KING GIDDRA ──キング・ギドラの7インチが3枚同時リリース、DJ KENSEI、DJ KIYO、INOVADERによるリミックス
  9. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  10. Helen - Linda's Head | ヘレン
  11. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  12. Boy Harsher - GET MEAN | ボーイ・ハーシャー
  13. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  14. aya × Violent Magic Orchestra ──初来日を果たす〈Hyperdub〉のアヤと、ブラックメタル・テクノ・プロジェクトVMOによる共同ツアー
  15. ソルトバーン -
  16. The Bug vs Ghost Dubs - Implosion | ザ・バグ、ゴースト・ダブズ
  17. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  18. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  19. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  20. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ

Home >  Regulars >  編集後記 > 編集後記(2022年12月31日)

編集後記

編集後記

編集後記(2022年12月31日)

小林拓音 Dec 31,2022 UP

 2022年はことばに力のある音楽が多く生み落とされた年だった。あくまで自身の体験にもとづきながら、自分をとりまく社会の存在を浮かび上がらせるコビー・セイを筆頭に、パンクの復権を象徴するスペシャル・インタレストやウー・ルーなど、せきを切ったようにさまざまなことばが湧き出てきた。それはもちろん、2020年以降の世界があまりにも激動かつ混迷をきわめていたからにほかならない。
 日本には、七尾旅人がいた。パンデミックやジョージ・フロイド事件以降の世界を鋭く描写しながら、しかしけっして悲愴感を漂わせることなく、ぬくもりあふれるポップな作品に仕上げる手腕は、問答無用で今年のナンバー・ワンだろう。ほかにも、たくさんのことばが紡がれている。それらの動向については紙エレ年末号で天野くんがまとめてくれているのでぜひそちらを参照していただきたいが、個人的にもっとも印象に残ったのは tofubeats だった。
 レヴューで書いたことの繰り返しになってしまうけれど、「溺れそうになるほど 押し寄せる未来」という一節は、どうしたってペシミズムに陥らざるをえない2022年の状況のなかで、「失われた未来」のような思考法と決別するための果敢な挑戦だったと思う。もともと『わが人生の幽霊たち』でその考えを広めたマーク・フィッシャー当人も、つづく著作『奇妙なものとぞっとするもの』では資本主義の「外部」について試行錯誤し、いかにペシミズムから脱却するか、あれこれ格闘していたのだった。来年はいよいよ『K-PUNK』の刊行を予定している。どうか楽しみに待っていてほしい。
 もうひとつ、その『奇妙なものとぞっとするもの』でも論じられていたアンビエントの巨匠、ブライアン・イーノが新作で歌った「だれが労働者について考えるだろう」というフレーズも強く脳裏に刻まれている。振り返れば、2022年の大半はイーノについて考えていたように思う。別エレの特集号、大盛況に終わった展覧会「AMBIENT KYOTO」とその図録の制作、6年ぶりのソロ・アルバム。人民のことを忘れない彼のことばにも、大いに励まされたのだった。

 本をつくるのはほんとうに大変だけれど、それは自分が明るくない分野の知見に触れる、絶好のチャンスでもある。個人的に今年は『ヴァイナルの時代』と別エレのレアグル特集号、そして現在制作中のサン・ラーの評伝に携われたことが、非常に大きな経験になった。エレクトロニック・ダンス・ミュージックのルーツがブラック・ミュージックにあること、それを忘れてはならない。
 2022年、ele-king books は24冊の本を刊行している。あたりまえだが、本はひとりではつくれない。協力してくださった著者、ライター、通訳、翻訳者、カメラマン、イラストレイター、デザイナー、印刷会社や工場、流通のスタッフ、そしてもちろん購読者のみなさま、ほんとうにありがとうございました。来年も多くの企画を準備しています。2023年も ele-king books をよろしくお願いします。

 最後に。故ミラ・カリックスの思い出として、1曲リンクを貼りつけておきたい。

 それではみなさん、どうぞよいお年を。

mira calix - a mark of resistance (radio edit)

COLUMNS