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Tom Misch & Yussef Dayes

FusionJazz

Tom Misch & Yussef Dayes

What Kinda Music

Beyond The Groove /Blue Note / キャロライン・インターナショナル / ユニバーサル

Midori Aoyama   May 20,2020 UP

「『What Kinda Music』はサウス・ロンドン・ジャズ・シーンの集大成なのか?」

 昨今の音楽シーンを語る上でいまや欠かせない存在となったトム・ミッシュとユセフ・デイズ。今年の2月頃にふたりのコラボ・リリースのアナウンスがされたときはもちろん衝撃的だったが、トムが18年にリリースしたソロ・アルバム『Geography』のツアーの合間にインスタグラムでユセフとのスタジオ・セッションの動画をアップしたときに「いよいよこのときが来るのか!?」と興奮したのを鮮明に覚えている。それからあっという間に2年の歳月が経ち、ジャズ名門レーベルの〈Blue Note〉からこうして陽の目を浴びることになった。

 いまさらここの読者にふたりの経歴について語るのも野暮かもしれないので、クラブ畑で育った僕がふたりを知ったキッカケを少し綴りたい。どちらも4~5年前のこと、ユセフ・デイズに触れたのはカマール・ウィリアムスとのコラボ・ユニット、ユセフ・カマールの『Black Focus』が最初。カマール・ウィリアムスの別名義、ヘンリー・ウーの存在がすでにハウス界隈で騒がれていたし、このアルバムが所謂「UKジャズ・シーン」というコトバに火をつけたキッカケになっているのは間違いない。17年に Billboard Live Tokyo で来日した際はカマール・ウィリアムスがまさかのドタキャンで驚かせてくれたが、残念半分で観たライヴで「あのヤバイドラマーは誰なんだ!?」とそれを超える驚きを見せてくれたのはいい思い出だ。
 対するトム・ミッシュは16年にリリースしたシングル「Watch Me Dance」がハウス・プロデューサーのクラカザットにリミックスされた辺りから。翌年に発表した「South Of The River」はオランダのディープ・ハウス・デュオ、デトロイト・スウィンドルにもリミックスされるなど、ハウス/ディスコ界隈でその名を目にしていた記憶がある。その後リリースした『Geography』からは言うまでもないだろう。サマーソニックやフジロックにもその名を連ねるなど、その勢いは止まることを知らない。

 つまり多少距離はあったにせよ、どちらも「界隈」にいたわけで、今回のコラボはお互いの活動の延長線上、起こるべくして起こった化学反応なのは間違いない。どちらもサウス・ロンドンを拠点に活動し、世代も近く、アレサ・フランクリン、マーヴィン・ゲイ、ニーナ・シモンらアメリカのジャズやソウルの教科書的アーティストもしっかりと通過し、ジャンルに縛られることなく自由に横断する「フュージョン感」はアルバムの中にも随所に散りばめられている。

What Kinda Music - Documentary

 『Geography』のファンであればアルバムの冒頭から随分とダークな内容に仕上がっていると感じるだろう。この部分は実験的なサウンドを好むユセフ・デイズのカラーが前に出ている。アルバム・ドキュメンタリーで「大半はジャムをしながら作っていった」と語っているように、日頃からのライヴで培ったユセフのスキル溢れるドラムにトムがギターで重ねてセッションしていくというのが主な制作の流れだったんだろう。アルバムすべてにおいて、まさにドラムがメイン・パートになっており、彼の十八番でもある高速ドラミングから4曲目の “Tidal Wave” のようにスローだがグルーヴの感じるトラックまで様々だ。

 多くの曲のクレジットに「Produced by Tom Misch」と書かれているのにも注目して欲しい。ベッドルーム・スタジオでのビートメイク上がりのトム・ミッシュが自身のアルバムを通して、レコーディングのスキルをより充実させより理論的にサウンドをプロデュースしていく部分も非常に興味深い。「ジャムで作った」と簡単に言いながらも、音楽に対する間違いのない技術と豊富な経験値や知識がなければこのレヴェルの高い作品はできるはずがない。

 ドキュメンタリーの後半では「15年前くらいにユセフが学校のイベントでドラムを叩いてるのを観たことがある」、「お互いの親父がアルバムを通していまでは自分たちより仲良くなってる」と語るように、親の世代でも距離が近く、世代や人種、ジャンルを超えてコラボレーションが盛んなロンドンのミュージック・シーンならではのコンセプトがこのアルバムのなかに強烈に落とし込まれている。何度もアルバムを聴き返し、彼らの言葉にも耳を傾けると、ある種2015年ごろから火がついた「UKジャズ・シーン」と呼ばれる一種のムーヴメントの集大成的アルバムの位置付けのような気もしてくる。トム・ミッシュしか知らなかった人はユセフ・デイズや彼の関連作品を、逆もまた然り。このアルバムをキッカケにまた色々な作品を掘り下げていけばジャンルを超えた新たな音楽体験が待っているのかもしれない。

Midori Aoyama

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