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Wolf Alice

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Visions Of A Life

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大久保祐子   Oct 19,2017 UP

 2015年に発売されたウルフ・アリスの『My Love Is Cool』は、新人バンドのデビュー・アルバムとしては文句のない出来だった。ファースト・アルバムにして母国のUKチャート初登場2位、ゴールド・ディスクを獲得、2016年の米国グラミー賞を獲得などなど、 書き連ねているだけでインディ・ロックの優等生バンドであることが嫌というほどよくわかる評価の数々。私も2年前のいまごろは、この良質なアルバムを何度も繰り返して聴いた。ツボを抑えたメロディと耳に残るギターリフが満載のよくできたアルバムで、気に入っていた。

 なのに何故だろう。何となく印象が薄いというか、掴みどころがないというか。いろんなタイプの楽曲がバランスよく並べられていて聴きやすいし、ボーカルのエリー・ロウゼルは容姿端麗、キャミソールのワンピースに鋭い目つきでギターをかき鳴らすなどオルタナ・ガール度100点満点。だけど残念ながら紅一点の似たような構成のロック・バンドは他にも掃いて捨てるほどいたし、いるのだ。ウルフ・アリスは特別ではなかった。しかしそれから2年経ってリリースされたセカンド・アルバム『Visions Of A Life』から先行配信された、やたらパンキッシュでラウドな“Yuk Foo"と、奥ゆかしい歌詞を乗せたシンセ・ポップな“Don't Delete The Kisses”というまったく違う趣の2曲を聴いて、ウルフ・アリスってこんな風だったっけ? と、驚かされることになる。

 パラモアの『After Laughter』のプロデュースやベックの作品のベーシストとして知られるジャスティン・メルダル・ジョンセンをプロデューサーに迎えて制作された『Visions Of A Life』には、先述の2曲の他にもシューゲイズやフォーク、ハードロックなどの、ひとつひとつが力強くて違う方向を向いたサウンドがぎっしりと詰まっている。例えばウルフ・アリスも影響を受けたと公言しているベックは、先日リリースされたニュー・アルバム『Colors』のように、アルバム毎にスタイルを変えて驚かせるけれど、ウルフ・アリスは1枚のアルバムのなかで色を変えている。
 多様性……いやいや、そういう堅苦しいものではなくて、もっと自由奔放にコロコロと変わる。そう、人の心みたいに。誰かのプレイリストみたいに! それは気分屋で不安定なものではなくて、一貫性なんて気にしない、好きなことをやりたいようにやってやる、そういったバンドの確固たる意志のもとに作られたことは間違いなく、それがはっきりとした輪郭のある音となって鳴り響いている。前作よりも明らかに生き生きとしていて、楽しい。あらゆる種類のロックに翻弄されてアルバムを聴き進んでいくと、最後に置かれたタイトル曲のヘヴィなサウンドに辿り着いた頃には痛快で、笑いさえこみ上げてくる。入口と出口で見る景色がまったく違う不思議の国に迷い込んだような気分になるかもしれない。なんてね。

 『Visions Of A Life』を聴いて、思い出したようにピクシーズやスマッシング・パンプキンズやソニック・ユースやベリーなんかの昔のレコードを引っ張りだしてみても、そこにウルフ・アリスはいない。彼女たちは2017年を生きていて、90年代リヴァイヴァルだとかロックは死んだだとか、誰かの言葉を信じこみ騒ぐ人びとに向かってこう言っているような気がする。自分のお気に入りの1枚くらい自分で見つけなよ、と。

大久保祐子