ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  2. ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代──あるDJの証言
  3. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  4. Arab Strap - Half-Told Tales | アラブ・ストラップ
  5. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  6. Protomartyr - Hotel Usona | プロトマーター
  7. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  8. ゲーセン波乱万丈の100年史
  9. Helen - Linda's Head | ヘレン
  10. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  11. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  12. Marcellus Pittman ──デトロイト・ハウス珠玉の逸材、マーセラス・ピットマンの来日ツアーが開催
  13. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  14. ポピュラー文化がラディカルな思想と出会うとき──マーク・フィッシャーとイギリス現代思想入門
  15. METHOD MOTEL - @名古屋・栄CENTRAL
  16. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  17. Boy Harsher - GET MEAN | ボーイ・ハーシャー
  18. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  19. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  20. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集

Home >  Reviews >  Album Reviews > William Basinski- A Shadow In Time

William Basinski

AmbientDrone

William Basinski

A Shadow In Time

Temporary Residence Limited/2062

Tower HMV Amazon iTunes

デンシノオト   Mar 10,2017 UP

 「世界」が終わりつつある。より正確には「20世紀的な世界」が終わりつつある、というべきか。われわれにとって所与の概念・世界観・倫理観・思考の大枠となっていた時代・世紀が、なし崩し的に消失していく。歴史の継続性が軽視され、失われていく。それは全体主義の萌芽でもある。波打ち際の砂粒のように消え去っていく20世紀(後半?)の痕跡。後世の歴史家たちも「21世紀の真の始まりは2017年だった」を記すようになるのではないか。新・全体主義の誕生にむけて?
 このような時代において芸術は、「20世紀的な概念で形成された人間」の「終わり」を強く意識することになるだろう。死。消失。ゆえにこの時代において、音楽は20世紀(後半)へのレクイエムとなる。

 テープ・ループ・レクイエム。ウィリアム・バジンスキーの新譜『ア・シャドウ・イン・タイム』を聴き終えたとき、そのような言葉が脳裏に浮かんだ。本アルバムは、昨年(2016年)1月に亡くなったデヴィッド・ボウイへの追悼でもあるという。じじつ1曲め“フォー・デヴィッド・ロバート・ジョーンズ”はボウイの本名からつけられている。

 音楽的には、あのバジンスキーのサウンドである。霞み、傷つけられた、しかし柔らかい音の連鎖、生成、変化。記憶が崩壊していくようなムード、アンビエンス。本作の雰囲気は、どことなく名作『ザ・ディスインテグレーション・ループス』を思わせる。『ザ・ディスインテグレーション・ループス』は映像作品でもあり、2001年9月11日、倒壊していくワールド・トレード・センターを映したものであった。そこに乗るバジンスキーによる霞んだ色彩のテープ・ループ・アンビエント。その時が止まるような美しさ。だが、その美には、20世紀の死と終焉が刻印されているのだ。

 本作『ア・シャドウ・イン・タイム』もまた、そのような終末/崩壊の感覚を継承している。むろん違う点もある。ボウイへ追悼作であることからも分かるように、本作は「世界の終わり」と「個人の死」が、不思議な説得力で結びついている。
そう、昨年から続く20世紀偉人的音楽家たちの死は、20世紀の終わりを強く意識させることになった。20世紀の終わり。21世紀のはじまり。それは歴史の継続性の終焉でもある。それがわれわれに強い不安(と高揚感?)をもたらしている。世界は、どうも良くなってはいない。20世紀を変革した偉人たちは、相次いで世を去った。となれば私たちが今、生きている現在=この世界は、どうやら、あの「20世紀」ではないらしい。この根拠が剥奪された感覚は、根拠を希求し、その結果、誤った高揚感を求めるだろう。

 本作は、ボウイという20世紀後半のイコンの死=消失の向こうから鳴らす20世紀へのレクイエム/アンビエントである。その音は死の不穏さに彩られているが、同時に死の華のように儚く、最後の生の発露のように美しい。終わりはいつも甘美であり、同時に不穏な色彩に彩られているものだ。そう、ウィリアム・バジンスキーはアンビエントの「黒い星」を作出したのだ。


デンシノオト

RELATED

David Bowie - ★ Sony / ソニーミュージック

Reviews Amazon