ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Juan Atkins ──デトロイト・テクノの創始者、ホアン・アトキンスが日韓ツアー、来日は13年ぶり
  2. R.I.P. Sensational (Colin Julius Bobb) センセーショナルとの思い出
  3. The Durutti Column - Renascent | ザ・ドゥルッティ・コラム
  4. 自転車日記 - デヴィッド・バーン 著 / 東辻賢治郎 訳
  5. Various - Peace Anthems | レッド・フック・レコーズ
  6. Félicia Atkinson - Sans Visage | フェリシア・アトキンソン
  7. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  8. DMBQ ──恒例の自主企画、2026年はkanekoayano、LAUSBUB、YPY、Hedigan'sと競演
  9. interview with Toru Hashimoto 橋本徹がブラジリアン&ブリージンなコンピに込めた渋谷系の哲学 | 『Free Soul』&『Cafe Apres-midi』最新作をめぐって
  10. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  11. Arthur Russell ——アーサー・ラッセル、なんと80年代半ばのライヴ音源がリリースされる
  12. Cornelius ──ドキュメンタリー映像シリーズ第4弾が公開
  13. 野田 努
  14. Columns スクエアプッシャーはいつだってテクノロジーの限界を超えていく ――7月20日(月祝)@昭和音楽大学、特別講義のレポート
  15. Columns Techno Walk 大阪~ベルリン、テクノ散歩
  16. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  17. Cornelius ——コーネリアスがアルバム『Refractions』のリリースと新曲“Aeons”の配信開始を発表
  18. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル
  19. interview with Boom Boom Satellites 明日は何も知らない | ブンブンサテライツ(中野雅之+川島道行)、インタヴュー
  20. Kassel Jaeger - Sub Re | カッセル・イェーガー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Reginald Omas Mamode IV- Reginald Omas Mamode IV

Reginald Omas Mamode IV

Hip HopJazzSoul

Reginald Omas Mamode IV

Reginald Omas Mamode IV

Five Easy Pieces

Tower iTunes

三田格   Jan 19,2017 UP

 80年代のノイズと90年代のアンビエントがドローンという手法を使うことによって同じようなものになってしまったのと同様、ビートダウンという発想もヒップホップとハウスをそれほど差のないものにしつつある。ドローンとしてまとめられたことでノイズから悪意や反社会性、アンビエントから快楽主義が欠落してしまったように、ビートダウンにもヒップホップに期待されるダイナミズムやハウスに特有の多幸感は消え去り、溜めの多いリズムはジャズとの親和性を促している。その最良の成果としてリージナルド・オマース・メイモード4世のデビュー・アルバムを聴いてみよう。

 13年に「ドゥー・ユー?」でデビューしたROM4世はモー・カラーズ周辺の人脈で、サウス・ロンドンからアル・ドブスン・ジュニア、テンダーロニアス、ジーン・バッサらと並ぶポッセのひとりとして認知され、モー・カラーズのアルバムでもそうだったけれど、リーダーが変わるだけで彼らのアルバムは大体同じメンバーによって録音されてきた。モー・カラーズはモーリシャス共和国に由来するセガというリズムを取り入れていたので特徴が見えやすかったけれど、他はそれに習いつつも、それよりは独自のフュージョン・センスを前に出してきた面が強い。ROM4世にも決定的なエスニシティが存在するわけではなく、そこは音楽史との戦いがものを言っているという感じで、モー・カラーズよりは豊かにジャズ色が滲み出る。ポッセのなかではビートダウンが呼び込む「間」を最も有効に活用している才能と言える。

 パーカッションで引っ張る曲とベースで聴かせる曲が前半は交互に並べられている。インタールードを挟んでそれらが拮抗しはじめ、スリリングでありながらビートダウン本来のチル・アウト性は手放さない。音の隙間に身を乗り出しながらも基本的には安穏とした気分を保つことができる。この手の気分ならいくらでも味わったことはあるけれど、花でも取り替えるような気分で音楽も変えたいといったところだろうか。昔の音楽で間に合わないところがあるとしたら、やはり感情が現代的ではないという点につきてしまう。新しい音楽に期待したいのは音楽的な完成度よりも現代ならではの複雑な感情というやつである。ROM4世は確実にそれには応えてくれる。

 ビートダウンの起源はいくらでも遡れるかもしれない。が、この数年のこととしてはやはりデトロイトであり、〈アンダーグラウンド・レジスタンス〉からニック・スピードの名義でデビューしたニコラス・マーセル・スピードの感覚を普遍化する必要があるだろう。彼が〈マホガニー・ミュージック〉からリリースした『ザ・ビート・ダウン』(13)がタイトルも含めて一種のマニフェストにしか思えず、そこにはJ・ディラ以下、デトロイト産のヒップホップをエディット化し続けた流れが延々と横たわっている。『ザ・ビート・ダウン』はディアンジェロに負う部分も少なからずではあるだろうけれど、これをハウスという文脈に落とし込んだのはやはりコッタムやフローティング・ポインツといったロンドンの屈折を待ってからになる。エディット狂が高じて誘発されてきたシーンはアメリカへの執着を何度も燃え上がらせながら繰り返されてきたものであり、ビートダウンも当初は80年代のレア・グルーヴと存在意義を異にするものではなかったのだろう。わかりやすくいえば、いま、起きていることはUKブラック・リヴァイヴァルなのである(FKAツウィッグス以下、数え上げるのも面倒くさいほどヒップスターR&Bは膨張し続けている)。2016年にグローバル化したブラックライヴズマターがこれと結びつき、2016年はアフロ・パンク・フェスティヴァルの開催へと繋がっていった。ビートダウンがそうした動きのサウンド的な核になったことは明らかだろう。

 ROM4世やモー・カラーズはサウンドの面白いところだけをいただいたという言い方もできるかもしれない。それを言ったらドイツでもビートダウン以降のサウンドは大きな展開を見せているし、しかし、それにしてはでき上がったサウンドがユニークに過ぎるところがある。ROM4世やアル・ドブスン・ジュニアが叩き込むパーカッション・サウンドはどうしたって「次の一歩」という気がしてしまうのである。

三田格

RELATED

Mo Kolours - Texture Like Sun One-Handed Music / melting bot

Reviews Amazon