ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第4回 奇妙な質問の正体
  2. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  3. The Sleeves - The Sleeves | ザ・スリーヴス
  4. DJ KRUSH ──LIQUIDROOM(KATA)の74分DJ公演シリーズ、第3回の出演者が決定
  5. Friko - Something Worth Waiting | フリコ
  6. interview with Weirdcore 謎のヴィジュアル・アーティスト、ウィアードコアへの質問
  7. FUTURE FREQUENCIES FESTIVAL 2026 ──新たなフェスティヴァルが始動、ジョイ・オービソンやザ・セイバーズ・オブ・パラダイス、ノウワーらが出演
  8. Manual - True Bypass
  9. Galliano ──復活したガリアーノ、日本限定の新作がリリース
  10. オールド・オーク - THE OLD OAK
  11. Irmin Schmidt - Requiem | イルミン・シュミット
  12. interview with The Lemon Twigs ロック/ポップスの素晴らしき忘れ物 | ザ・レモン・ツイッグス、インタヴュー
  13. Moemiki - Amaharashi
  14. Xylitol - Blumenfantasie | キシリトール
  15. Cornelius ──コーネリアスが動き出した! 新シングル「夢寝見」がリリース
  16. Yuki Nakagawa ──チェロ奏者、中川裕貴による初のソロ・アルバムが登場
  17. Hoyo Moriya ──〈Virgin Babylon〉より森谷抱擁のファースト・アルバムがリリース
  18. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  19. Bill Callahan - My Days of 58 | ビル・キャラハン
  20. interview with Dolphin Hyperspace ジャズの時代、イルカの実験 | 話題のドルフィン・ハイパースペース、本邦初インタヴュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Sleaford Mods- Austerity Dogs

Sleaford Mods

Hip HopPopPunk

Sleaford Mods

Austerity Dogs

A Harbinger Sound

HMV Amazon iTunes

三田 格   Jan 09,2014 UP

 マドンナの監督2作目『WE』を観ながら、クライマックスでセックス・ピストルズが流され、英王室の話なのに“プリティ・ヴェイカント”をチョイスするとはさすがだと思っていた翌日、つづけてオリヴィエ・アサイヤス監督『カルロス(第2部)』にはテロリストたちが検問を突破するシーンでデッド・ボーイズ“ソニック・リデューサー”が使われていた。ドイツ国境の検問が見えてくると、あの、ミドル・トーンの強迫的なベース・ラインが鳴り始め……w。サントゴールド『トップ・ランキング』に収録されていたトニー・マターホーンでディプロがループさせていたアレですね。

 昨年、YouTubeで“ドンキー”を観てからというもの、スリーフォード・モッズなるヒップ・ホップ・パンクのバンドが気になりまくり、アナログは日本に渡ってくる前に売り切れてしまったらしいんだけど、年末になってようやくCD化されたものを確保し、年が明けてバカヤローとばかりに再生してみると、M10のイントロダクションはどう考えても“ソニック・リデューサー”w。久しぶりにヤサグレたモードに埋没している。スリーフォードというのは、イギリスの地名らしく、そこでモッズをやっているということらしい。モッズというのは、その後、スキンヘッズとかスエードヘッドとかになって、リチャード・アレンがシリーズで小説化して、日本でいえば『シャコタン・ブギ』みたいになって(違うかな?)、さらにはモリッシーが歌にして、ブリットポップにも強く影響を与えてからはどうなったのか知らないけれど、そもそもはスウィンギン・ロンドンでリヴァイヴァリスト・ジャズを気取ったシャレものだったわけで、それを名乗ろうと。いまさら、モッズですよ。

 レイジーでチープ、リズムの骨格はヒップ・ホップの影響下にあり、一時期のECDを思わせるところも少なくはなく、歌い方はジョニー・ロットンを淡白にした感じ。もしくはエミネムがジョナサン・リッチマンをバックにザ・ストリートをカヴァー……みたいな。アナログ(のファースト・プレス)にしか歌詞カードはついてないそうで、だから、何を歌っているのかぜんぜんわからないんだけど、だいぶ口汚いことをわめいているらしい。数少ないレヴューを読むと「無慈悲」だとか「迷惑」だとかロクな形容詞が並んでいない。アルバムはすでに5枚めで、これまでのレーベルは全部、崩壊した模様。デビュー作はパンクかと思えばジャングルだったり、ジミ・ヘンドリクスにもなれば、フィラデルフィア・ソウルとわけがわからない。そういったエネルギーがすべて枯れ果てて、新作はかなりシンプルになったということか。リリース元はノイズやドローンばかり扱っているレーベルなので、どういうことなんだろうと思って調べてみると、中心メンバーらしきアンドリュー・ファーンは元々はインファントという名義でネオ・ウイージャからデビューしていたIDM系のプロデューサー。それは、しかし、長くは続かず、7年前にバンドに乗り換え、それもすでにバンドキャンプには「バンドやってたけど、あれは憎むべきもの」みたいなことが書いてあったり(http://sleafordmods.bandcamp.com/)。

 おそらくはバンドが崩壊したから、IDMの方法論を思い出して、それをパンク・サウンドに似せようとしたとか、そういうことなんだろう。“ドンキー”をよく聴くと、スネアの入れ方などは、IDMでやっていたことがかなり活かされていることがよくわかる。ヴォーカルがなければ〈モダーン・ラヴ〉にも匹敵するトラックなのである。ほかの曲はオルガンすら買えないスーサイドみたいだったり、ニュー・ウェイヴの発掘モノにしか聴こえないものもあるんだけれど……そう、最初は、これ、こういうのはブーリン家の姉妹ならぬブレイディ家のみかこさんの担当じゃ~んなどと思いながら聴いていたんだけど(まあ、言葉のこともあるし、大半はその方がいいと思うんだけど)、細かいところはそうでもないかなと思うところもあって、ここまで書いてしまいました。いずれにしろ、2013年は本当に波にのったようで、ついに7インチ・シングルを3枚もリリースし(それまではCDのみ)、いくつかのプレスからは「詩人」と呼ばれるようになったということで。

三田 格