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interview with Animal Collective (Panda Bear)

interview with Animal Collective (Panda Bear)

21世紀初頭の最も重要なサイケデリック・ロック・バンドは、結成およそ20年後のいま何を思うのか

──アニマル・コレクティヴ、インタヴュー

質問・文:天野龍太郎    通訳:中村明子 Photo by Hisham Bharoocha   Feb 09,2022 UP

アメリカのバンドであることについて、昨今それが自分たちにとって何を意味しているのかについても、けっこう話したね。いくつかの曲には、僕らがそのことと折り合いをつけようとしているのが感じ取れる要素があると思う。

■あなたのそんなドラム・プレイもあって、アルバムからは生のバンド・アンサンブルが強く感じられます。そもそも、どうしてこういうサウンドになったのでしょうか? これは、バンドにとって、原点回帰なのでしょうか?

PB:ある意味ではそうで、別の意味ではちがうと思う。楽器を使って、演奏ベースで何かをやるっていうことで言うと、たしかに初期の頃を思い出させるものがある。『ペインティング・ウィズ』(2016年)や『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』(2009年)は、もっとサンプルを駆使した、完全にエレクトロニックの領域のものだった。『センティピード・ヘルツ』(2012年)では今回のような方向性を目指したというか、音楽のパフォーマンスという側面に傾いて、ステージ上で汗をかくといいうような、理屈抜きのフィジカルなところを目指していたと思うんだ。だから、創作面では、振り子のように行ったり来たりしているんだよね。前回とは逆の方向に振れるというか。まったくちがう考え方をすることでそれがリフレッシュになるし、それで自分たちがおもしろいと思いつづけられて、願わくはオーディエンスにとってもそうであればいいなって。そういうことについての会話があるわけではないけれどね。だからそれが目標というわけではないけど、でも気づくと結構そうなっているんだ。

■タイトルのとおり、アルバムのテーマは「時間」なのでしょうか?

PB:それもテーマのひとつだね。音楽がタイム・トラヴェルの乗り物みたいなものだ、という話をしたことは覚えているよ。時間を戻したり進んだりさせてくれるものだよな、っていう。その音楽に思い出があったりして、だから大好きなんだけど、聴くのが辛い時期があったりもする。自分のなかで思い出と音楽が融合して、大好きなんだけど聴くと辛い時期が蘇ってしまうから聴けない、とかね。それだけ強力に時間と結びついていることがある。そういうことは、作る上ですごく考えていたね。特にいまの時代は家に閉じ込められがちだから、いまという時間、あるいは、その閉じた空間から抜け出すというのが、僕らがやりたいと願っていたことで。それから、他にも、アメリカのバンドであることについて、昨今それが自分たちにとって何を意味しているのかについても、けっこう話したね。いくつかの曲には、僕らがそのことと折り合いをつけようとしているのが感じ取れる要素があると思う。それは、これまであまりやってこなかったことだと思うんだ。

■なるほど。それに関連するのかもしれませんが、アルバムについて、エイヴィ・テアのステイトメントに「最近、よく考えるのは、どうして音楽を作るのかということ、そして音楽が今、与えてくれるものは何なのかということだ」とあります。このことについてのあなたの考え、そしてそれを『タイム・スキフズ』でどう表したのかを教えてください。

PB:これまで、音楽をキャリアとして、仕事として20数年やってきて、そうすると、やっぱり「自分はまだこれをやっているけど、じゃあ、そこにどんな意味があるのだろう?」と考えるようになる。どうして他の人に聴いてもらうために作っているのか、自分は何を成し遂げたいのか、といった問いが絶えず浮かぶようになって。おそらく、その答えは、常に変わるんだけどね。でも、同時に、根幹的な部分にはふたつのことがあって、ひとつは、自分が1日また1日と生きていく上で、すごく楽しいものだということ。何かアイディアが浮かんでそれを形にすることにはちょっとした興奮があるし、もし出来がよければ達成感もある。そして、それで元気になれる。もうひとつには他の人とのコミュニケーション方法だということで、願わくは、それが愛とリスペクトを広めることに繋がってほしい。そのふたつが僕にとって音楽をやる根拠で、そこは変わらないね。それが今作の音楽にも表れていることを願うけど、あからさまに表現されているってことはないと思う。ただ印象としてそうであれば嬉しいよ。

■また、そのステイトメントには、「楽曲はリスナーをトランスポートさせる能力を持っている」とあります。これは、まさにアニマル・コレクティヴやあなたの音楽を表した言葉だと思うんですね。物理的な移動が困難になったいま、「音楽がリスナーをトランスポートすること」についての考えを教えてください。

PB:それに関して、果たして音楽よりいい方法があるのかっていうくらい……。まあ、僕はゲームをよくやるんだけど、それは音楽とはまたぜんぜんちがう種類で、自分の脳を忙しい仕事に従事させることによって瞑想状態が生まれるというもので。僕がゲームをすごく好きなのは、ある意味、自分のスイッチをオフにできるからなんだよ。脳の、何かについて心配している部分をゲームで陣取るというか。音楽はもっと……作用としては似ているけど、かなりちがう。もっと会話的というか、作曲者、あるいは演奏者とリスナーとの対話があって……。でも、考えれば考えるほど、ゲームにもそれがあるように思えてきたな。たまに、プログラマーの意図を考えるからね。何を考えてこのゲームのシステムを構築し、プレイヤーにどういう効果をもたらそうとしたのだろうか、っていう。でも、ゲームはひとりの経験だから……。いや、やっぱり話せば話すほど、同じなんじゃないかと思えてきた(笑)。

■ははは(笑)。音楽=ゲームですか。ところで、「音楽がリスナーをトランスポートすること」は「リスナーを現実から逃避させること」とも言い換えられますよね。逃避的な音楽はいいものなのでしょうか、悪いものなのでしょうか? どうお考えですか?

PB:たしかにそうで、逃避できるっていうのはいいことではあるけど、それがいきすぎるのは心配だね。特にいまの時代、お互いのことが必要だし、繋がりを持ちつづけるべきだと思うから、逃避しすぎるのはどうかと思う。閉じこもったり逃げたりする理由がありすぎない方がいい。だから、現実から気を逸らすものではなくて、コミュニケーションだったり、薬であったりすることが望ましいかな。

■では、具体的にアルバムの曲について聞かせてください。“Walker” は、スコット・ウォーカーに捧げた曲だそうですね。スコット・ウォーカーは、私も大好きなアーティストです。彼のどんなところに惹かれますか?

PB:彼の声がすごく好きで、彼は僕がもっとも好きなシンガーのひとりなんだ。自分で歌う時、以前はもっと柔らかいというか弱い感じだったんだけど、でもスコットの声にすごく影響を受けたんだよね。彼の声には強さがあるというか、胴体から出てくるみたいな声と歌い方で、それに彼の歌は非常に男っぽい感じがしてかっこいいと、個人的に思う。それから、彼がキャリアの初期に大成功して、でも「自分の道はこっちじゃない」と感じて、常に探求を続けて、自分なりのキャリアを築いていったという部分にも超刺激を受けたしね。

音楽は会話的というか、作曲者、あるいは演奏者とリスナーとの対話があって。でも、ゲームにもそれがあるように思えてきたな。プログラマーの意図を考えるからね。何を考えてこのゲームのシステムを構築し、プレイヤーにどういう効果をもたらそうとしたのだろうか、って。

■フェイヴァリットの曲はありますか?

PB:全部好きだよ。超変な実験的なやつも好きだし、アートっぽいものも好きだし。でも、いちばん好きなのは『スコット2』(1968年)とか『スコット3』(1969年)とかの番号がついたアルバムかな。

■“チェロキー” についてお伺いします。ノースカロライナのチェロキーは、ネイティヴ・アメリカンのチェロキー族の文化がいまも残る土地だそうですね。これは、どうやってできた曲なのでしょうか? 先ほどおっしゃっていた、「アメリカのバンドであることと折り合いをつける」ということが関係しているのでしょうか?

PB:そうだね。この曲がそのもっともあきらかな例で、これは自分たちにとって、いまアメリカのバンドであることがどういうことなのかを考えた曲だと思う。チェロキーというのはデイヴの家の近くの地域で、たしかハイキングに行ったりもするらしいし、彼はこの曲でその問いに向き合っていると思うよ。

■デイヴが書いた曲なんですね。

PB:そう。なんというか、曲の内容について、バンド内で「これはどういう意味か?」ということを逐一話していると思われているかもしれないけど、実際はそういうことはあまりやらないんだ。たまに「この一節、すごくいいけど、何を考えて書いたの?」とか聞くことはあるけど、でも「曲を書いた。内容はこうだ。さあ、君たちはどう思う?」的なことはほとんどなくて、ただそのまま受け止めることが多い。だから、残念なことに「何についての曲ですか?」と訊ねられても「ええと……」となっちゃうんだよね(笑)。僕個人にとっての意味はわかるけど、デイヴの代弁はできないからさ。

■わかりました。本日はありがとうございました。日本で4人のライヴを聴ける日を心待ちにしています。

質問・文:天野龍太郎(2022年2月09日)

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Profile

天野龍太郎天野龍太郎
1989年生まれ。東京都出身。音楽についての編集、ライティング。

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