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interview with Phew

interview with Phew

真ん中になにを置くか?──Phew、インタヴュー

アナ・ダ・シルヴァ&Phew~レインコーツとアーント・サリー、ふたりのヴォーカリストの交流が生み出す電子音楽

松村正人    Sep 26,2018 UP

感傷は安易すぎる、その失敗を私たち人類はおかしつづけています。

■前作『Voice Hardcore』は2010年代の傑作のひとつだと思いますが、あのアルバムに較べると開放的ですね、真逆といってもいいかもしれない。おなじような形式をもちいても、別の方向を向かっている感じがあります。

Phew:この作品ではおたがいに電子楽器をつかっていますが、楽器は道具にすぎないんです。それはアナもおなじ気持ちだと思います。最初に自分の身体がある、それはふたり共通していると思います。モジュラーシンセをつかった最初の曲がとどいたとき、「ああアナの曲だ」とわかる。なので、このアルバムは、純粋電子音楽とはいいにくいですね。

■身体、声という側面ではおふたりともヴォーカリストですから、歌らしい歌を入れる選択もあったと思いますが。

Phew:またやろうという話にはなっているので、今後も続いていくなら、そういうものも出てくるかもしれない。今回はそういうことを考える暇もなく、制作がすすんでいって、はじめてメロディらしきものがきたのは“Konnichiwa!”でした。私が送ったトラックにアナがリフをくわえてきたんです。おそるおそる、メロディックすぎないかしら、といいながら(笑)。その意味では、メロディアスな要素はおたがい抑制していたのかもしれない。私がメロディっぽい側面を出したのは9曲目の“Dark but bright”。ストリングスの音は私がつけました。たしかにそのときもちょっとためらいはありました。メロディや声という要素は、すごくつよくてそれだけでなんとかなってしまう部分もあって、最初のうち私はそれを極力避けていました。できればヴォイスもあまりつかいたくなかった。声を最初に入れたのも“Konnichiwa!”でした。

■声をつかいたくなかったのは音を聴かせたかったから?

Phew:メロディをつかってしまうと曲がそれに支配されてしまい、だれがこの曲をつくったとか、そういう観点で聴かれがちじゃないですか。そういった事態は避けたかった。記名性で詮索するのではなく、たがいにすごく離れたところにいて、ことばで説得するのではなく、その中間でなにができるか。そういったテーマが私にはあったので、なるべくメロディとか歌詞も私もメッセージ性のあることばはなるべく避けようとしていました。

■タイトルはどなたのアイデアですか?

Phew:アナです。詩的な連想性があることばですよね。そのようなことばはおもにアナから来たものです。私はコミュニケーションのことばと考えると、どうしても「コンニチハ」とかになってしまうんです。

■事物的ですよね。私は『Voice Hardcore』のときのPhewさんのことばの散文性はすばらしいと思いますが、それも事物性に由来するとは思います。とはいえ、コミュニケーションを考えるなら、エモーショナルなことばのほうが共感度が高いので適しているともいえますよね。

Phew:真ん中になにかをつくるということです。音楽とか文学も、アートとはそういうものだと思うんです。感傷は安易すぎる、その失敗を私たち人類はおかしつづけています。

■突然すごく大きな問題を提起されましたが(笑)、そのとおりです。

Phew:人類はなにも学べない(笑)。オリンピックはやるしね。私も、感情に訴える話が読んで楽しい、泣ける話に感動するというのもわかりますが、私は子どものときから犬と暮らしているんです。

■藪から棒になんの話ですか。

Phew:(笑)。コミュニケーションについては犬から多くのことを学びました。これまでの人生で、9年ほど、犬のいない生活を送りましたが、いまでも2匹飼っていて、うち1匹はリコーダーやバンドネオンの音に反応して歌うんですよ。犬も1匹ごとに個性があります。それでも、犬には人間のことはわかってもらえない。さびしい気持ちもありますが、それで気持ちが離れることはまったくない。そのようなコミュニケーションのあり方を犬に学びました。

■シンセには反応しないんですか?

Phew:笛や生楽器の倍音に反応しているようで、電子音は嫌いみたい。

■ではご自宅で『Island』を制作されていたときはたいへんでしたね。

Phew:自宅で録音していると、ほんとうにだれとも会わなくなるし、音を録っているから声は出しているけど、何日もだれとも話さないこともまれではないですからね。家族はしゃべらないといけないような場面にはいないから、そうなるとだれとも会話していないことに気づくんです。その点でも犬がいるといいですよ(笑)。

■でもにぎやかな場所が好きなわけでもないですよね。

Phew:人混みが苦手で、きのうはライヴでたくさんのひとに会ってひと酔いしちゃいました。

■とはいえコラボレーションの機会は多い。

Phew:こういうかたちはひさしぶりですけどね。

■プロジェクト・アンダークで(ディーター・)メビウスさんとやりとりして以来ですか?

Phew:そうですね。でもね、あれは全部曲が最初にできていたんですよ。今回みたいにやりとりしてつくったわけではなくて、トラックに声を乗せていった感じだったので、一緒につくった感じはあまりなかったです。

■バンドともちがいますよね。

Phew:バンドはなつかしいですね。やりたいですけどね。

■やりたいお気持ちはつねにあるんですね。

Phew:バンドは楽しいですけど、練習の時間とかスタジオが必要じゃないですか。その手配がたいへん。そう考えるといちばんの問題はまちがいなく距離です。メンバーがみんな近所に住んでいたらどんなに楽かと思いますよ(笑)。音楽をやるにあたって、最初に曲が決まっているのはつまらないです。それぞれのパートのひとがアイデアを出し合ってつくっていくのがいちばんおもしろい。

■モストのときもそうでした?

Phew:最近のモストのライヴではきまった曲をやることが多かったですが、ライヴの前はかならず練習していましたし、曲づくりのためにリハーサルではメンバーそれぞれがアイデアを出し合っていました。

■そういうふうに直にひとと会いながら音楽をつくるのと、今回のアナさんのように対面せずに曲をつくる場合とではなにかちがいを感じられましたか。

Phew:日本にいるミュージシャンと一緒に音楽をつくる場合は、相手が知っているひとのことが多いんですよね。会ってしゃべるといろんな情報が入ってきます、視覚的な部分もふくめて。インターネットを通じたやりとりだとそういった情報が入ってこない。今回も個人的な話はしていないんですね。アナってどういうひとか、私はほとんど知らなかったんですが、音をやりとりするなかですごく親しくなった気がする。なんにも知らないのに、この親密な感じはなんなんだろうという、それはアナも同感だったようで、去年1年ぶりにロンドンに行ったときにもアナが会いに来てくれて、すごく親しくなった気がするんだけど、とおたがいにいいあいました。きっと音楽ならではの感覚なんです。いいひととかわるいひとというレベルの話ではなく、これはミュージシャンどうしでしかなりたちえない独特の関係なのだと思います。音で伝わってくるものがあるんでしょうね。

■たとえば共通言語をもたない場合、Phewさんはコニー・プランクやカンのホルガー・シューカイ、ヤキ・リーヴェツァイトともアルバムをつくられましたが、彼らとの作業はどうでした?

Phew:コニー・プランクは家がスタジオだったから家族にも会いましたが、ホルガーやヤキについてはプライベートなことは知らないけど、録音する前と後では関係がまったくちがいました。独特の信頼感というか、個人的なことに興味もないのに信頼を置けるというか。だから亡くなったというのはショックでしたよ。ありえないんですけど、どこかでずっと死なないものだと思っていた気がします。

■音は他者を触発すると同時に当事者にもフィードバックするのだと思います。とくにソロ活動以後のPhewさんの音楽では自己との対話の側面があると思いますが。

Phew:音を出してはじめてわかることがあるんですね。録音物を制作するときは、機材を触っていて、この音なんか好きっていうのがあったらすぐ録音して、そこから発展させることが多いですね。

■録音という意味でなにかすすんでいる作品はありますか。

Phew:すすめていることはあるんですが……最近ヴィンテージのミニムーグを導入したんですよ。何年も迷って結局買ってしまったんですが、それでどうしようかと思っているところです。ミニムーグの音は記名性がつよいじゃないですか。なにをやってもミニムーグの音だから自分の音楽というよりミニムーグの音なんです。好きなんですが、困りものです。まだまだミニムーグに負けています。ミニムーグとの勝負にまずは勝たないと。

取材・文:松村正人(2018年9月26日)

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