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interview with Toshio Matsuura

interview with Toshio Matsuura

UKジャズの現在進行形とリンクする

──松浦俊夫、インタヴュー

取材:野田努    写真:小原泰広   Feb 19,2018 UP

いまのイギリスのシーンのなかで頑張っている人たちと世代が違うのに一緒にやれたというところが大きかったですね。実際に演奏してくれた人たちにしてみるとノスタルジックな思いというのは一切なかったりするんですよね。

■ロンドンはこのところジャズ・シーンみたいなものがとても活気づいていますよね。シャバカ・ハッチングスの新しいジャズの流れもあるし、ヘンリー・ウーみたいにカニエ・ウェストを聴いて育った世代が途中でジャズに向かったような流れもありますよね。今回のアルバムに参加しているヤズ・アハメドやヌビア・ガルシアみたいな人は、シャバカ周辺の人たちで、ヘンリー・ウー周辺ではユセフ・デイズが参加していますよね。このあたりの雑食的な感じがぼくはロンドンのいちばん好きなところで、本当に今回のアルバムではその現地の感じもパッケージされていて、嬉しかったんですよね。

松浦:活気がありますよ。アフリカ大陸からの新たな移民とかも含めて、より人種が多様になってきているじゃないですか。今回のアルバムのメンバーにもユセフ・カマールのユセフ(・デイズ)なんかはそうですし。

■ユセフさんは親が移民なんですか?

松浦:親が移民ですね。だからパスポートはみんなイギリスなんですけど、ヤズ(・アーメド)はバーレーンだし、ヌビア・ガルシアもそうですし。いわゆる生粋のイギリスの白人というのは3人くらいかな。アメリカの多人種とは違うおもしろさがありますよね。
ロサンゼルスとかニューヨークを中心とするアメリカのジャズというのはすごくまとめやすい状況だと思うんですよね。(シーンが)ひとつになっているというか。イギリスの場合は多種多様でジャンルも跨っていて表現しようとしているので、それぞれが違うことをやっているというか。グルーヴがあるようなものを中心としてやっているなと思っていて。

■そうですよね。ハウスやドラムンベース、テクノともリンクしていますよね。

松浦:それが自分のいままでいた30年間みたいなもので考えると、もちろんアメリカのシーンもおもしろいんですが……。バック・トゥ・ベーシックじゃないですけど、自分が90年代で1枚目のアルバムからロンドンでレコーディングをしていたんで、そういう意味では久しぶりにホームに戻った感じですよね。

■まあU.F.O.(ユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイション)はロンドンですからね。

松浦:そうですね。

■UKのジャズ・シーンは自己流っていうか、USのように楽器はうまくないけど独創的な味がありますよね。

松浦:ヘンリー・ウーにしてもある意味で自己流なんですよね。音楽大学に行っていたわけじゃないですから、音楽理論というよりはもうちょっと感覚的にやっている。だからこそおもしろいものが出来てくるのかなと思います。かと思えばフローティング・ポインツみたいな、より数学的なところのアプローチをしている人もいて、作曲の仕方も違うんだろうなと思いつつ。そういういろいろな才能があってひとつのイギリスのシーンになっていると思うので、その人たちと個々それぞれでやっている人たちがひとつになって、東京から来た自分が入ることによってまた違う反応が起きるんじゃないかなということをすごく期待していました。それは自分が期待していた予想以上に反応が起きてくれたのですごくよかったかなと思います。

■とはいえ、90年代のスピリットみたいなものをいまの人たちにも伝えたいという思いはありますか?

松浦:あります。ただその伝え方は難しいかなと思っていて……、ノスタルジックなことではないし、昔はよかったということではなくて、知っておいてほしいことがあるなと。それがバトンだとすると、自分は90年代にキャリアをはじめたとき、どちらかというと先人が残したものをコラージュして新しい物を作ろうとしていて、それを聴いた人たちがその次にバトンを受け取って、さらにその次の世代に渡してもらえる、というように考えていたんですね。でもとくに国内においてはそのバトンがいまひとつうまく渡しきれていなかったかなと思っていますね。
シーン自体が細分化して自分たちが好きなものに特化して、小さなサークルにしてしまったために、全体のシーンというものがいまひとつ見えづらくなっちゃって、なにが起こるかわからないというよりは「これ、レアなんだよね」みたいなところに落ち着いちゃって、趣味の世界に行っちゃったのかなと思うところもあるし。それぞれが刺激し合ってその化学反応が自分だったらこうするみたいのところで、また新しいアプローチが生まれるみたいなことが、イギリスに比べると圧倒的になくなってしまったのかなと思います。

■これは今日話したかったことなんですけど、ぼくが松浦さんと初めて会ったのってどこか覚えています?

松浦:どこでしょうかねえ。リキッドルームとかですか?

■いやいや。これはすごく笑える話なんですけど、僕が90年代の『ele-king』で初めてU.F.O.にインタヴューしたときは矢部(直)さんひとりだけだったんですね。その当時ぼくはシニカルな質問もよくしたので「なんでU.F.O.はそんなにスーツにこだわるんですか?」みたいな質問をしたんですよ。そのときに矢部さんがどう答えたか、細かくは覚えていないけど「そんなにこだわっているわけじゃない」云々、みたいなことを返してきたんですよね。そのインタヴューが掲載されてからしばらくして、「イエロー」で酔っ払っている松浦さんが僕に突っかかってきたんですよ(笑)。「なんだ、あのインタヴューは!」って(笑)。

松浦:はははは(笑)。

■で、ぼくも酔っていたから「なんだ?」みたいな感じになって、当時『bounce』にいた栗原聡さんって編集者のかたが僕と松浦さんのあいだに入って「まあまあ」って(笑)。

松浦:そんなことありましたっけ(笑)。

■パチパチ火花を散らしていましたね(笑)。

松浦:そうですか(笑)。すみません。

■いえいえ、こちらこそすみません(笑)。松浦さんはたしかそのとき日本代表のユニフォームを着ていなかったっけな(笑)。それは別のときだったかな?

松浦:余計熱くなっちゃってますね(笑)。

■いや、でもパチパチやるぐらい真剣だったんですよ。みんな状況を良くしたいから、シーンに良い意味での緊張感がありましたからね。

松浦:その緊張感がなくなってしまったほうが良いか悪いかということの判断基準ではなくて、やっぱりそういう側面はなきゃいけないんじゃないかなという気はしていて。それは頭のなかで考えてどうこうするものではなくて、アティチュードみたいなものがあるというか……喧嘩を売るつもりではなかったと思いますが。

■はははは、笑い話ですけど(笑)。

松浦:自分はクラブ・シーンのなかでは一番下っ端みたいな年齢で入ってきたので、怖い大人に比べれば、どちらかと言うと柔らかいほうだったと思うんですけど。ただ、いまは時代が経ったうえで、ある程度下の世代からレジェンド扱いされてお終いにされちゃうというか。レジェンドって言葉の使いかたもちょっとイージーになりすぎているみたいなところがあって。マイルス・デイヴィスはレジェンドだけど(ロバート・)グラスパーはまだレジェンドにはなっていないだろう、みたいなことだと思うんですよね。そういう意味でもうちょっとスリリングで研ぎ澄まされた感じや、体のなかにたぎる青白い炎みたいなものがもうちょっとあってもいいのかなと。そういうものも含めて今回のプロジェクトでなにか動き出すというか、「あ、そうだよね」と思って当時そこにいた人たちも含めてそうやって感じてくれる人がいればいいなというのは大きいですね。

■でもこれはもう「Jazzin'」に行っていた世代にとっては「待ってました!」という感じだと思いますよ。もちろんヘンリー・ウーから入っている子たちにも聴いてほしいし。

松浦:それこそサチモスを聴いているような子たちにも届かなきゃいけないなと思っているので。

■松浦さんはこの21世紀の現代に対してどう思っていますか? 抽象的な質問で恐縮ですが、どんなところに変化を感じます?

松浦:この20年くらいで世のなかがまったく変わってしまったので。うーん、生き方が変わったという気はしますよね。だからそれぞれがしょうがないからこうやって生きるかみたいなところで受け入れたり、諦めたりする部分が出てくるのかなと思っていて。自分もけっこういまその岐路に立っていると思っているんですけど……諦めきれないんですよね。
このシーンにおいていうと起点の頃からいるので、なんとかしなきゃなという思いはずっと持ち続けていますが、ただ時代のなかで変わっていくということも当然のことながら必要なことであって。それは音楽だけじゃなくて必要だなと思っていて、そのスピリットはなんとか変えずにいく方法はないかなと思っているんですけど。もしかしたらそれが意固地だと思われているかもしれないし、もしかしたらそれがストッパーになっているのかもしれないなと。リミッターみたいなものにかかっているのかなとは思うので。

取材:野田努(2018年2月19日)

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