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interview with Acid Mothers Temple

interview with Acid Mothers Temple

アシッド・マザーズ物語

──河端一、超・超ロング・インタヴュー

大久保潤    撮影:小原泰広   Apr 30,2013 UP

一緒にやるとよくわかるけど、クラウトロックって「上がりそうで上がりきらずに、ゆるやかになって、また上がりそうで寸止めくらいのところで留まって、というのが気持いいらしいんですよ。だからアシッド・マザーみたいに上がり続けるとダメみたいで。

■アシッド・マザーのアートワークなんですけど、パロディっぽいのが多いですよね。

河端:もともとアートワークってもの全般に対して、俺はまったくなんでもいいんよ。ジャケットに芸術性なんてまったく必要ないと思う。例えば最近だとポストロックとか、ジャケットがみんな風景みたいな写真ばっかりで、インパクトもないし下手したらバンド名も書いてない。伝達性もないやろ。

■ただの木の写真とかありますもんね。

河端:予め雑誌か何かでこのアルバムのジャケットはこれですよっていうのを見てないとわかれへんくらいでしょ。俺はそういうのじゃなくて、ジャケットっていうのは広告やと思ってるから。店頭で見たときに、音楽を知らなくてもジャケ買いしたくなるようなものでないと駄目。音はある程度自身がある。けど、聴いたら好きになる人でも、手に録ってもらえなかったらその人には届かない。その人に届くように、ジャケットに関してはなんぼでも魂売ったるっていう。
 初めの頃は、自分がレコード屋で見たときに衝動買いしたくなるジャケットっていうのがコンセプトだったのね。そうするとああいうヒッピーみたいな変なメンバーが並んでると怪しいな、俺やったら絶対買うぞと。Father Moo and the Black Sheepっていうサイドプロジェクトをやったときに、あれなんかは東君(*15)と俺でレーベルをはじめて、次に何出そうかという話になって。やっぱり衝動買いしたいジャケには謎のグルみたいな奴と、裸の信者みたいな――まあヤホワ13みたいなね。

■なるほど(笑)。

河端:ああいうのは絶対買ってしまうと。それではじめはメンバーと裸の女とかで作っててんけど、リリースが増えてきてジャケのアイデアが思いつかなくなってきて。
 それで曲のタイトルも英語でつけるのを基本にしてるのね。英語やったら最低限理解できるひとが日本語よりは多いから。ほなら俺ら英語は母国語じゃないから、ちゃんとした英語タイトルが思いつかない。でも日本語タイトルを英語にするのは嫌なんやね。英語をもっと直感的に使いたいから。そうすると、知ってる英語をパロディにすることになって、自ずから有名な曲とか本のタイトルのパロディになってしまう。そうなってくると、「そうか、考えたらジャケットもパロディにすればええんや」と。

■なるほどなるほど。

河端:俺が例えば灰野さんのビジネス展開から学んだことは、あれだけ作品出して内容もそれなりのものを出してるのに、客がもう買いたくないと。リリース数が多いし、どれ聞いてもはっきりした明確な区別がないし、さらにジャケットがまずわからない。

■ああ、そうですね。

河端:これ、俺持ってんのかな? っていうね。全部真っ黒やから。だから俺は内容もゴロっと変えて、ジャケットも1回見たら持ってる・持ってないは最低でもわかるようにしようと。ほなら裸ジャケットが続くと区別がつかないのも出て来るんで、有名なバンドのジャケットをパクれば絶対にわかるから。さらに覚えやすいし。

■有名盤のパロディみたいなジャケはここ最近特に増えてるなとは思ったんですけど、そういうことでしたか。

河端:ネタがなくなったのと、その手の客に届かせるように。たとえばブラック・サバスとかのファンやったらたぶんこのアルバムは気に入るなと。でもブラッック・サバスのファンがアシッド・マザーのCDを買うかいうたら、買う人もおるけど買わん人もたぶんおる。ほなら買わせるにはどうするかと言うたら、ブラック・サバスのパロディをやればええと。「あれ、こいつらサバスのマネしとるな」で、そこで嫌がる人と、面白そうやなって興味持つ人がおるから、最低限素通りはされへん。
 アートワークについてはそういう作戦なんですよ。ポリシーも何もない。アルバムタイトルも、ふざけてると言われようが、「スターレス&バイブル・ブラック・サバス」とか。おちょくってんのか? おちょっくてますよっていうね(笑)。

■『サノバビッチズ・ブリュー』ってのも相当ですよね(笑)。

河端:あれはでもちょっと違うけどね。俺はもともとマイルス・デイヴィスとジョン・コルトレーンがジャズで一番嫌いで。あいつら2人がジャズを殺したと。

■ほう。

河端:理由はいろいろあるんですけど。若いときにジャズも聴きだした頃に、ジャズ史の革命的なアルバムだと。どんな革命的なアルバムなんやろと思って話を聞いたら、エレキ楽器を使ってロックのビートを取り込んで、と。別にそれってジャズ・ロックでええんちゃうの? と。まあでも「革命的なレコードや!」言うから、まあそうですかと。とりあえず聴いてみたら全然おもろない。これだったらソフト・マシーンのセカンドのほうが好きやって。その後にもいまやったら良さがわかるかもしれへんと思って何度も聴いてるけど、何度聴いてもおもろない、タルい演奏やと。本当はあのアルバムは、ジャズ史上初めて編集されたアルバムやって意味もあるけど、それはともかくとして出来てる音像は俺にしたら面白くない。ほんならこっち側からの提案で、『ビッチェズ・ブリュー』を俺がやるんやったらもうちょっと面白くできますよという皮肉がこめてある。だからあれ、海外のレヴューとかやと「マイルス・デイヴィスのアルバムに捧げた」とか書いてあるけど、いやいや捧げてない(笑)。

■ははははは

河端:まあみんながどう取ろうとが構いません。でもあのジャケット見たらおちょくっとるというのはわかるやろ(笑)。
 本当に内容までパロディというのは少ないですよ。だいたい録音中は何も考えてなくて、録音が終わってからさあアートワークと曲名つけなくちゃっていう感じやから。曲名とアートワークはいつも難産で。音楽はすぐ出来るんやけど、曲名つけるのに悩んで悩んでだいたい2日くらいかかるし。ジャケはそれから考えるんで。
 だいたいジャケとかは後付けやから、そこに何のメッセージもない。もともと音楽にメッセージを乗せないというのが俺の主義なんで。音楽は音楽でしかないから。歌詞らしきものが乗っていてもそこに意味はないし。何語で歌ってようが、内容はどうでもいい。ヴォーカルっていう楽器が入ってるっていう。音楽にメッセージを乗せなあかんようだったら、メッセージを直接話せよと。人のやってることは構わへんけど、「音楽で世界に平和を」とか、お前らアホかと。
 たとえば反原発とかでも、俺も意見はあるよ。でも音楽を手段に使うなと俺は言いたい。音楽好きな人でも原発推進派の人もおるやんか。それを反原発に使われてしまうと、原発推進派の人は「ええー、何なん?」てなるでしょ。音楽はそれに対して責任はないんで。音楽はその音楽を好きな人に対してシェアされるべきやから、政治的な理念とかそういうことでシェアされるべきではないんですよ。だからそういうイベントには出ないし。

■うーん、なるほど。

河端:楽器を演奏する奴はライセンス制にせい言うてたことがあって。俺は音楽やってるような人間はカスやと思ってんねん。昔やったら河原乞食じゃないですか、江戸時代とかならね。一般社会では仕事につけない、身分の一番低い人間がやってるわけでしょ。お百姓さんとか、物を生産する人っていうのは絶対必要なわけでしょ、社会に対してね。でも余興みたいなことをやってる人間は、ほんまに生活に余裕が出た時にはじめて楽しめるもんやから、最悪、要らない。そういう社会の余録みたいなもので食べさせてもらってる人間やから――何の話をしてたんやっけ?

■えーと、アートワークの話でしたね(笑)。

河端:ああ、すいませんね。まあそんな人間は偉そうなことをまず語るなと。語るなら語る場所に行って語ればいい。シンポジウムなりミーティングなりなんでもいいよ。音楽は人を喜ばすためにあるんです、エンターテイメントやと思ってるから昨日のライヴみたいなことになるわけで。

■ああ、なるほど(笑)。

河端:お客さんが2000円なり3000円なりお金払ってくれたら、それは通勤電車に乗ってしんどい思いしながらとか、お小遣い少ないのにそこからやりくりして来てくれてるわけですよ。たかだか2時間か3時間の時間を買ってくれてるわけやから。俺らの商売は時間を買ってくれた人に対して、それなりの商品を与えるということやと思ってるからね。満足して帰ってもらわないと駄目なんですよ。
 そやから満足してもらうためにはギターを叩き折ろうが何しようが関係ないわけです。それが俺らのビジネスやから。満足してもらえなかった時点でリコールされるわけでしょ。

■まあ次から来なくなりますよね。

河端:信用というのは1回落とすと回復するのはほぼ不可能で、たまたま出来の悪かったライヴを見られたことによって「あいつらしょうもなかったで」って悪い噂が広まるのは速いからね。とにかくアシッド・マザーを結成したときから通してるのは、絶対に手を抜かないこと。絶対に前回よりはいいライヴ、前作よりもええアルバムを作ろうと。それが出来るかどうかは別問題として、そういう気持ちでやる。

(*15)
東洋之。AMTのシンセ&サイドギタリストであり、元えろちかのベーシスト。AMTのフロントマンとして白髪を振り乱して宇宙音シンセを演奏する姿は大きなインパクトがある。

取材:大久保潤(2013年4月30日)

Profile

大久保潤大久保潤/Jun Okubo
1975年東京生まれ。書籍編集者として菊地成孔・大谷能生『東京大学のアルバート・アイラー』、佐々木敦『「批評」とは何か』、『アメリカン・ハードコア』『ブラック・メタルの血塗られた歴史』、ミック・ファレン『アナキストに煙草を』などを担当。ポストパンクバンド「大甲子園」、即興ドゥームロックバンド「Filth」、即興ハードロックバンド「Filth Iconoclast 666」等のギター。
ブログ:http://www.noiznoiznoiz.com

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