Home > Interviews > interview with DJ Kentaro - 平成24年のダンス・フィーヴァー
来るときは、気がつけば来ている、そんなものだ。たとえば昨年末の紙『ele-king vol.4』でも話題にしたブローステップ、あのとき日本ではまだ「何それ?」だった。が、いまではホット・チップが中目黒の部屋でねちねちと嫌味を言うほど身近なものとなっている。好むと好まざるとに関わらず、この時代のレイヴ・カルチャーが上陸しているのだ。
DJ Kentaro Contrast Ninja Tune/ビート |
こうした新しいダンスの波を前向きに吸収しているのがDJケンタロウの『コントラスト』。若干20歳で世界の舞台に躍り出たDJによる10年目のセカンド・ソロ・アルバムで、彼が所属するロンドンの名門〈ニンジャ・チューン〉からのリリースだ。
『コントラスト』にはDJクラッシュやファイヤー・ボール、キッド・コアラなど多彩なゲストが参加しているものの、アルバムに通底するのはベース・ミュージックやドラムンベースといった、今日のレイヴ・カルチャーに欠かせないエートスだ。DJケンタロウという人のカラっとした気質は、ある意味ブローステップさえも受け入れているが、彼の出自であるバトルDJの擦りの美学がなくなることはない。そこはさすが〈ニンジャ・チューン〉一派、ヒップホップを忘れてはいない。
しかしあなた......よりよってこの時期に......、いくら国際的なDJとはいえ、いや国際的だからこそか、日本でこれだけダンスがポリティカルな話題になっているこの時期にダンスのアルバムを出すという心意気が、良い。レイヴ・オン! である。
アメリカでもダブステップがメチャクチャ盛り上がってて。L.A.だと、とくに。スクリレックスとかトゥエルブス・プラネットとか、やっぱりダンス・ミュージックっていうのは、いま、世界でバンドをしのぐ勢いになっちゃってる。
■じゃぁ、よろしくお願いします。
DJ KENTARO:よろしくお願いします。
■あのー、あれですよね。オリジナル・アルバムとしてはセカンド・アルバム(DJ KENTARO『Contrast』)になるんですよね。
DJ KENTARO:はい。
■ DJケンタロウっていうと、ミックスCDとかね、出されているんで。
DJ KENTARO:そうなんですよね。
■意外とたくさんリリースしているような印象を持たれがち、思われがちなんだけど。オリジナル・アルバムとしては今回で2枚目なんだよね。
DJ KENTARO:そう。5年ぶり、なんですよね。
■今回のセカンド・アルバムっていうのは、2012年の6月27日にリリースされるんだけど、「2012年6月」っていう、このリリースのタイミングみたいなものっていうのは必然性があったんですか? それとも、たまたまというか、流れというか。
DJ KENTARO:両方です(笑)。
■ハハハハ。
DJ KENTARO:けど、ぶっちゃけ偶然のほうがデカいです。けど、いろんな偶然も重なって「その日にしよう」っていう風にはなって。あの、まぁ、そうすね。(偶然と必然の)両方あると思います、ぶっちゃけ。意図したものもあれば。けど、やっぱり、ちょっとリリースが遅れたんですよ。ホントは4月だったんですよ。
■あぁ、そうなんですか。
DJ KENTARO:そこででき上がらなくて。
■ほほう。ちなみに、その意図した部分っていうのは、どんなところなんですか?
DJ KENTARO:別に6月にとかって意味はないですけど。この時期に出したい。2012年の中頃には出したいなっていうのがあって。けど「日本盤だけでも4月に出してくれ」って言う話があって。2月中に作らなきゃいけないっていうのがあったんですけど。それはもう物理的に無理で。結局、まぁ、2ヶ月伸びちゃったんですけど。
■その「セカンド・アルバムを出したい」っていうのは、やっぱり自分のなかで出したいものが、それだけ溜まってきたっていうこと?
DJ KENTARO:そうですね。去年もわざわざL.A.まで行って、2ヶ月間レコーディングしてきて。トラックもいっぱい溜まってきて。本当はそこで完成に持っていきたかったんですけど。やっぱ2ヶ月なんかじゃできないし。けど、そこで30曲ぐらいできたおかげで、コラボレーションしたラッパーに投げるトラックとか、いろいろできたんで。すごい成果にはなったんですけど。やっぱりアルバムをひとりで作るっていうのはスゴく大変で。たぶん、次にアルバム出すときも5年ぐらいかかると思う(笑)。
■はははは。で、ちなみに、取っ掛かりというか、今回の『Contrast』を作る取っ掛かりみたいなものは何かあったの?
DJ KENTARO:えーと、やっぱ「アルバムを作りたい」っていうのは前からあったんですけど。最初に作ったのが、このクラッシュさんとの曲("KIKKAKE")で。これが1曲目っていうか、これで基盤ができて。2年ぐらい前なんですけど。
■ へぇぇ。
DJ KENTARO:これをいちばん最初に作ってから、いろいろほかの曲とか、"HIGHER"とか"FIRE IS ON"とかできてきて。
■じゃぁ、そのクラッシュさんと一緒に作ったっていうのが、ひとつの取っ掛かりになったんですか?
DJ KENTARO:なりましたね。けど、そのときは"KIKKAKE"ってタイトルはまだ無くて。アンタイトルドだったんですけど、オレもクラッシュさんと世界で......例えば、ロンドンの〈KOKO〉っていう、伝統的なデッカいところで演ったりだとか(DJ KRUSH VS DJ KENTARO at KOKO/2009年10月3日)。セッションする機会が増えて。クラッシュさんのプレイも生で見る機会が増えて。スゴいやっぱりカッコイイなって。オレと全然違うスタイルなんですけど、やっぱりカッコイイなぁっていう風に思って。で、仲良くなってから、クラッシュさんが家に遊びに来たときに、こう、焼酎とか注ぎながら(笑)。
■はははは。
DJ KENTARO:飲み会的な感じで(笑)。クラッシュさんとサシで飲むなんてなかなかないんで。で、そのノリで曲も作って。したら、その日のうちに結構基盤ができたんですよ。そっからメールでやり取りして。「どうですか?」って。あとは、じょじょに音足していって。この"Kikkake"ってタイトルは、オレがクラッシュさんのインタヴューをウェブか何かで読んで。「キッカケ」って言葉を見て。「あ、イイなぁ」ってボーっと。「クラブで『ケンタロウさん、キッカケでDJはじめました』って若いコとかいたなぁ」とかいろいろ考えて。オレもクラッシュさんキッカケでいろいろ知って......とか、そういうこと、いろいろ考えていて。
■あー。
DJ KENTARO:で、まぁ"KIKKAKE"って。あと、「コントラスト」と「キッカケ」って、オレはイコールだと思ってて。やっぱりキッカケを作るにはコントラストが必要だし、コンストラストを作るとキッカケが生まれるし。何事もっていうか、ホント。抽象的ですけど。そういう意味では、今回の一種の核となってる曲ではありますね、この曲"KIKKAKE"は。
取材:野田 努(2012年6月28日)