ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Hajime Tachibana ——プラスチックス結成50周年、立花ハジメがニュー・アルバム『dad bb』、12インチ・シングル「ZOUNDS!」をリリース
  2. Kneecap ——今年のグラストンベリーに大量のパレスチナの旗をはためかしたアイルランドのラップ・グループの情報、8月には映画も上映
  3. Simon Reynolds ——レイヴ・カルチャーの本質にあるのは政治性ではない、どれだけぶっ飛べるかだ:サイモン・レイノルズ『未来マニア』刊行のお知らせ
  4. Columns Holy Tongue UKダブを更新するバンド、ホーリー・タンの初来日公演
  5. interview with Kneecap (Mo Chara and Móglaí Bap) パーティも政治も生きるのに必要不可欠 | ニーキャップ、インタヴュー
  6. 吉岡誠 - 江戸アケミ、四万十川から
  7. KNEECAP/ニーキャップ -
  8. interview with The Lemon Twigs ロック/ポップスの素晴らしき忘れ物 | ザ・レモン・ツイッグス、インタヴュー
  9. Massive Attack - Heligoland
  10. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  11. FUNK OF AGES ──JBからヴルフペックまでを見わたすディスクガイド『ファンク超大全』が刊行
  12. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  13. Seefeel - Sol.Hz | シーフィール
  14. Columns #16:ワールドカップ2026 ──時代は変わった(日本代表のことではない)
  15. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  16. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル
  17. Aho Ssan - The Sun Turned Black | アホ・サン
  18. DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ
  19. Kamui - YC2.5
  20. Columns ♯13:声に羽が生えたなら——ジュリー・クルーズとコクトー・ツインズ、ドリーム・ポップの故郷

Home >  Reviews >  Album Reviews > Terri Lyne Carrington And Christie Dashiell- We Insist 2025!

Terri Lyne Carrington And Christie Dashiell

Jazz

Terri Lyne Carrington And Christie Dashiell

We Insist 2025!

Candid

Bandcamp

土佐有明 Jul 03,2025 UP

 マックス・ローチの『We Insist!:Freedom Now Suite』(61年)は最高だ。コールマン・ホーキンスの雄々しいテナー・サックス。ブッカー・リトルの力強いトランペット。アビー・リンカーンの説得力溢れるヴォーカル。そして、ローチの紡ぐ強靭なグルーヴ。それだけで、なんの説明も要らないほどである。だが、同作がアフリカン・アメリカンの自由と権利を求めた闘いの所産だと知ると、少し聞こえ方が変わるかもしれない。公民権運動のスローガンとして制作され、奴隷解放宣言100周年を記念して発表された同作は、強烈なメッセージのこもったプロテスト・アルバムなのである。同時代の作品に較べても、切実さが違うのだ。
 そして、このアルバムに敬意を払って作られたのが、グラミー賞を4度受賞したドラマー/プロデューサーのテリ・リン・キャリントンと、グラミー賞ノミネート経験のあるヴォーカリストのクイリスティ・ダシールによる『We Insist 2025!』だ。オリジナルが偉大すぎるが故に重圧も相当だったのではないかと推測するが、仕上がりは文句なし。ジャズ、ブルース、ソウル、ゴスペル、ファンクなどを折衷した闇鍋的なグルーヴが脈打っている。なんだ、こちらも最高じゃないか。

 キャリントンとダシールはいずれも女性ミュージシャン。圧倒的な男社会だったジャズ・シーンの風向きが変わりつつあるのを反映してか、ゲスト陣も、ベーシストのミシェル・ンデゲオチェロ、ハープ奏者のブランディー・ヤンガー、フルート奏者のニコール・ミッチェルなど女性が多い。61年の『We Instst!』でローチらがアフリカン・アメリカンの誇りを歌い上げたように、本作ではジャズ界隈でマイノリティである女性ミュージシャンならではの矜持が表出している。

 フェラ・クティのお株を奪うようなアフロ・ビートの“Driva‘man”、キャリントンのリムショットが響き渡るスロー・ファンク“Freedom Day,Pt.1”、凄みの効いた朗読に圧倒される“Triptych: Resolve/Resist/Reimagine”、アビー・リンカーンへのリスペクトが浮き彫りになる“Dear Abbey”など、ふつふつと湧きあがってくる熱情が、風通しの良いネオ・ソウル的なサウンドで中和され、聴きやすくなっているのも特徴だ。本作が生みだされた背景や文脈を知らずとも楽しめるところも肝要だろう。

 影の主役は10曲中7曲に参加しているトランペッターのミレーナ・カサド。スペイン人の母とドミニカ共和国出身の父の間に生まれ、バークリー音楽大学で学んだ彼女は、つい先日、デビュー作『リフレクション・オブ・アナザー・セルフ』をリリースしたばかり。彼女はロイ・ハーグローヴの衣鉢を継ぐような――つまり、RHファクター的とも言える――ネオ・ソウル以降のサウンドを披露した。そのプレイにもぜひとも注目してほしい。それにしても、ブルーノートからデビューしたブランドン・ウッディーにせよ、黒田卓也にせよ、2018年に49歳で急逝したハーグローヴに敬意を示すトランペッターは数多い。この系譜も剋目に値するだろう。

土佐有明