ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Robert Johnson ──オリジナルSP盤から起こしたロバ―ト・ジョンスンの12作が10インチでリイシュー
  2. interview with Adrian Sherwood 愛とソウルと、そしてメロウなダブ・アルバム | エイドリアン・シャーウッド、インタヴュー
  3. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある
  4. interview with Cameron Picton (My New Band Believe) 元ブラック・ミディのキャメロン・ピクトン、新バンドにかける想い | ──初のアルバムを送り出したマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ
  5. Stones Throw ──設立30周年記念日本ツアー開催、ピーナッツ・バター・ウルフ、ノレッジ、マインドデザイン、ミチが来日
  6. Laurel Halo - Midnight Zone (Original Soundtrack to the Film by Julian Charrière) | ローレル・ヘイロー
  7. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第1回 現象になりたい
  8. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  9. Columns Thundercat 来日を控えるサンダーキャット、その新作が醸し出すチルなフィーリングについて
  10. interview with Ego Ella May ジャズとネオ・ソウルの邂逅 | エゴ・エラ・メイ、インタヴュー
  11. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  12. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  13. Mamas Gun - Dig! | ママズ・ガン
  14. 別冊ele-king J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶
  15. Columns 3月のジャズ Jazz in March 2026
  16. KENNY DOPE JAPAN TOUR 2026 ——ケニー・ドープ、9年ぶりの来日決定です
  17. 菊地雅章 - 六大(地・水・火・風・空・識)
  18. Ethel Cain - Perverts | エセル・ケイン
  19. Squarepusher ──スクエアプッシャーのニュー・アルバムがリリース
  20. Moemiki - Amaharashi

Home >  Reviews >  Album Reviews > Jazzanova- Strata Records (The Sound Of Det…

Jazzanova

Jazz FunkSoul Jazz

Jazzanova

Strata Records (The Sound Of Detroit Reimagined By Jazzanova)

Strata / 180 Proof / BBE / オクターヴ・ラボ

Amazon

小川充   May 16,2022 UP

 デトロイトの〈ストラタ・レコーズ〉は1970年代のごく僅かな期間に活動していたジャズ・レーベルで、同じデトロイトの〈トライブ〉やニューヨークの〈ストラタ・イースト〉同様、1990年代以降のレア・グルーヴ・ムーヴメントやスピリチュアル・ジャズ再評価の波のなかで発掘されていった。現在その原盤は中古市場で高値で取引されていることでも知られる。創設者は〈ブルーノート〉にも作品を残すピアニストのケニー・コックスで、彼の地元であるデトロイトのアーティストたちの作品発表の場を担う目的で、彼のグループのCJQ(コンテンポラリー・ジャズ・クインテット)はじめ、僅か一枚のアルバムを残してシーンから消えた謎のアーティストであるマウラウィ、レア・グルーヴ・ファンから人気の高いライマン・ウッダード・オーガニゼイション、〈トライブ〉でもミックスド・バッグというグループで作品を残すラリー・ノゼロなどの作品がリリースされた。

 レーベルは1973年から1975年に6枚のアルバムを発表したのみで活動停止してしまうが、一方で録音されたものの発表されなかった音源もいくつか存在した。その後2010年代に入ってDJユニットのコン&アミールの片割れであるアミール・アブドゥラが興した〈180プルーフ〉によって、未発表音源の発掘作業がはじまる。ケニー・コックスやマウラウィ、サム・サンダース、ロン・イングリッシュなどのお蔵入りしていた音源が陽の目を見るとともに、ライマン・ウッダード・オーガニゼイションやラリー・ノゼロのアルバムがリイシューされる。ものによって別テイクが付属されたりアナログ盤はリマスタリングされて音質向上を図るなど、なかなかマニア受けする企画である。UKの〈BBE〉を経由して日本でもいくつかライセンス・リリースされ、この春にもCJQ、ライマン・ウッダード・オーガニゼイション、マウラウィのアルバムのリイシューCDが出ているが、その関連作品としてジャザノヴァによるカヴァー・アルバムもリリースされた。

 ジャザノヴァとしては2018年の『ザ・プール』以来のアルバムで、自身のオリジナル・アルバムではないものの、極めて寡作な彼らの音を聴くことができる貴重な作品である。もともとDJユニットとして交流のあったジャザノヴァとコン&アミールが、〈ストラタ・レコーズ〉を介してコラボした結果として生まれた企画である(アメリカ人のアミールも現在はジャザノヴァとともにベルリン在住のようである)。いわゆるDJ的なリミックス作業を施して〈ストラタ〉音源を再解釈するのではなく、ジャザノヴァ周辺のミュージシャンたちがバンド形式で生演奏するというカヴァー形式をとっている。ジャザノヴァのメンバーとして参加するのはサウンド・プロダクションを担うステファン・ライセリングとアクセル・レイネマーで、バンド演奏のディレクションやミキシングなどのスタジオ・ワークを担っている。

 演奏はピアノ、ベース、ギター、ドラムス、トランペット、トロンボーン、サックスの7人編成で、そこにアメリカ出身のシンガーであるショーン・ハーフェリが数曲に参加する。ハイライトのひとつはライマン・ウッダード・オーガニゼイションの“クリエイティヴ・ミュージシャンズ”で、1975年のアルバム『サタデー・ナイト・スペシャル』に収録された〈ストラタ〉史上でもっとも有名な楽曲だろう。ロー・ファイなジャズ・ファンクであるこの曲を、ジャザノヴァはオリジナルの雰囲気を尊重しつつもアフロ・テイストとコズミックな質感を交えて再解釈している。ショーン・ハーフェリのヴォーカルもどこかギル・スコット・ヘロンを彷彿とさせる感じだ。同アルバムのタイトル曲“サタデー・ナイト・スペシャル”はブラックスプロイテーションのサントラに登場しそうなジャズ・ファンクで、ミステリアスなムードを醸し出すオルガンの響きが印象的な楽曲だが、ジャザノヴァはハンド・クラップのビートを交えながらややテンポ・アップさせて、ムーディーマンやセオ・パリッシュなどのデトロイト・ハウスにシンクロするような作品に変換している。ちなみにセオ・パリッシュなどと共演するノーマ・ジーン・ベルが初めてサックスを演奏したレコーディングは〈ストラタ〉であり、ほかにもビルド・アン・アークやヒュー・ヴァイブレーショナルに参加して長い活動を続けるコンガ奏者のアダム・ルドルフも〈ストラタ〉のレコーディングに参加していたりと、現在のデトロイトの音楽シーンにも〈ストラタ〉の痕跡は受け継がれている。

 “フェイス・アット・マイ・ウィンドウズ”はサム・サンダースによる作品で、アミールが初めて手掛けた〈ストラタ〉音源の未発表アルバム『ミラー、ミラー』(2013年リリース)の収録曲。原曲は女性ヴォーカルをフィーチャーしたラテン調の曲だったが、ジャザノヴァは男性ヴォーカルのショーン・ハーフェリをフィーチャーしたフュージョン・ソウルへ置き換えている。ロイ・エアーズのメロウ・グルーヴに繋がるような1曲である。ジャズ・ファンクやメロウ・グルーヴだけでなく、バート・マイリックの“スコルピオズ・チャイルド”のようなモーダル・ジャズも手掛けるあたりがジャザノヴァならではで、いろいろなタイプのジャズに造詣や理解の深いジャザノヴァだからできるアルバムだろう。

小川充