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Sun Araw

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Sun Araw

Rock Sutra

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野田努   May 03,2020 UP
E王

 逃げ場所はどこにもない。パンデミックによってスウェーデンを除く世界中の国々でSTAY HOMEの日々が続くなか、初夏のように晴れた日の昼から穀物の発酵で生成された揮発性の液体を飲んでサン・アロウを聴く。おつである。
 『ロック経典』という新作だが、彼の出世作『On Patrol』から早10年。ぼさぼさの髪に髭、キャップにギターにTシャツにデニムといういかにもインディな出で立ちの、ロサンジェルスのサン・アロウことキャメロン・ストローンズ、この男がこれまでやってきている音楽は、じつは本来であれば松村正人氏が評価すべきエクスペリメンタル・ミュージックである。
 ところが、おお、なんということだろうか、氏は気に止めていないようなのだ……が、ele-kingではサン・アロウ関連の諸作をこれまで何回もreviewしてきている。キャメロン・ストローンズは、10年前のロスのインディ・シーンにおけるドローンやらダブやらの、どさくさのなかから出現した(ように日本からは見えた)。〈サイケデリック〉というのが彼の作品を語るさいの世界共通キーワードではあるが、その趣向はラヴよりもリー・ペリーに近く、ライヒよりもテリー・ライリーに、ドアーズよりもビーフハートに、ラリーズよりもボアダムスに近い──のだった。
 サン・アロウはどうしてもユーモアを隠せない人だ。レゲエの伝説コンゴスとのコラボ、ニューエイジの伝説ララージとのコラボでも型にはまらずヘンなところに着地する。CANみたいだ。
 新作は本当にCANみたいになっているので驚いた。CANの掲げた「民俗学的偽造シリーズ」ほどの豊富なヴァリエーションはないかもしれないけれど、ユーモアとワールド・ミュージックと実験という観点で言えば両者には近しい感覚がある。試しにCANの名盤とさえ言える未発表曲集『Unlimited Edition』とサン・アロウの『ロック経典』を交互に聴いているのだが、1974年と2020年の作品は時空を越えて繋がっていることが確認できる。聴いている人間が酩酊しているだけのことかもしれないが……

 先日は偉大という言葉さえも白々しいほど偉大なドラマー、トニー・アレンが永眠したが、『ロック経典』もまたアフロビートの恩恵を受けている。また、パーカッショニスト(Jon Leland)とシンセサイザー奏者(Marc Riordan)を有する生演奏(ライヴ)が、『ロック経典』がサン・アロウのカタログのなかの特筆すべき1枚である理由になっていることは疑いようがない。
 『ロック経典』には10分ほどの曲が4曲収録されている。1曲目の“Roomboe”はリズムの間合いが素晴らしいスペース・ファンク・ロックで、親指ピアノに導かれてはじまる2曲目“78 Sutra”では絶妙なポリリズムを展開しながら……顔はシラフだがその内側は宇宙大のトリップをしていますと言わんばかりのオーガニックなグルーヴを創出する。
 3曲目“Catalina”も出だしのリズムが格好いいんだよなぁ。キャメロン・ストローンズのギターの特徴がよく出ているというか、とてもレゲエとは呼べないが、もっともレゲエからの影響を感じさせる曲がこれである。そして今作で最高の曲が4曲目の Arrambe”。じつを言うとぼくは最初にこの曲が好きになったのだった。本作中、はっきりとした反復するメロディがある曲なのだが、これはもう、近年の数多あるクラウトロック解釈のなかでも最高の出来に挙げられよう。後半おとずれる恍惚感はすさまじしく、顔はシラフだがその内側はもはや時空を越えてしまっているようである。
 『ロック経典』はアンビエントではない。リズミックな作品で、ちょっと可笑しいヘンな音が好きでこのGW中に家でヒマしているようだったら、ぜひ聴いてみてください。で、タイトルの意味? わからんです。

野田努