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Common

Hip Hop

Common

Let Love

Loma Vista / ユニバーサル ミュージック

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   Oct 09,2019 UP

 デビューからすでに四半世紀以上のキャリアを重ねながら、いまなおヒップホップ・アーティストとして意欲的な作品をリリースし続けている Common。特に Karriem Riggins との強固なタッグによって制作された、2016年リリースの前作『Black America Again』以降の動きは凄まじく、『Black America Again』の延長として Karriem Riggins と Robert Glasper と組んだスーパーグループ、August Greene 名義でのアルバムも、昨年のUS音楽シーンを代表する素晴らしい出来であった。『Black America Again』は、大統領に就任したばかりのドナルド・トランプに対する強烈なメッセージが込められ、コンシャス・ラッパーとしての自らの姿勢を改めて提示した Common であったが、『Let Love』というアルバム・タイトルが示す通り、通算12作目となる本作のテーマはストレートに「愛」だ。

 前作同様に Karriem Riggins がメイン・プロデューサーを務めているが、アルバムの先行シングルであり実質上のメイン・トラックである“HER Love”のみ故 J Dilla がプロデューサーとしてクレジットされている。「her」を敢えて大文字で表記していることからも分かるように、この曲は Common のクラシック中のクラシック“I Used To Love H.E.R.”の続編(正確に言うと、2013年に発表された J.Period のプロデュースによる“The Next Chapter (Still Love H.E.R.)”に次ぐ続々編)となっており、今年亡くなった Nipsey Hussle を筆頭に Kendrick Lamar など様々なラッパーの名前を交えながら、ヒップホップに対する愛をラップしている。Common にとって、この曲に最もふさわしいプロデューサーが個人的にも関わりの深い J Dilla であることは間違いないが、J Dilla の未発表のビート集である『Dillatronic』からピックアップされたトラックが実に見事に曲のテーマともマッチしており、まるでこの曲のために作られたかのような錯覚すら覚える。

 サンプリングによって作られた“HER Love”に対して、Karriem Riggins が中心となって作られた他の曲はサンプリングと生楽器とのバランスが実に絶妙だ。『Black America Again』や August Greene の流れの延長上ではあるのだが、Common のラップとのコンビネーションも含めて、作品を追うごとにそのサウンドはより洗練されたものになっており、ヒップホップというアートフォームの中のひとつの方向性としては、究極の域にすら達しているようにも感じる。BJ The Chicago Kid や Swizz Beatz、Jill Scott、A-Trak などを含めて、有名無名揃ったゲスト・アーティストも見事なスパイスと機能し、ときにハードにソウルフルにスウィートに、アルバムのテーマ性をそれぞれの方法で表現豊かに膨らませている。

 本作を聴いて改めて思うのが、ラッパーとしての Common の絶対的な普遍性だ。おそらく、今から25年前にリリースされたセカンド・アルバム『Ressurrection』から、Common のラップのスタイルというものは大きくは変わってない。メッセージ性はより強くなってはいるが、コンシャスというベースの部分は同じで、さらにフロウに関しては Common が得意とするパターンというのはすでに初期の時点でほとんど完成していたようにも思う。しかし、本作のラップを聴いても、そこに古さは感じられず、より研ぎ澄まされたことによって、いまが彼にとっての最高点とすら感じられるから驚きだ。

 本来はユール・カルチャーであるヒップホップだが、ベテランである Common だからこそなしえる、新たな景色をこれからも見せてくれることを期待したい。

大前至