ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Marcellus Pittman ──デトロイト・ハウス珠玉の逸材、マーセラス・ピットマンの来日ツアーが開催
  2. METHOD MOTEL - @名古屋・栄CENTRAL
  3. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  4. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  5. Protomartyr - Hotel Usona | プロトマーター
  6. ゲーセン波乱万丈の100年史
  7. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  8. KING GIDDRA ──キング・ギドラの7インチが3枚同時リリース、DJ KENSEI、DJ KIYO、INOVADERによるリミックス
  9. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  10. Helen - Linda's Head | ヘレン
  11. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  12. Boy Harsher - GET MEAN | ボーイ・ハーシャー
  13. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  14. aya × Violent Magic Orchestra ──初来日を果たす〈Hyperdub〉のアヤと、ブラックメタル・テクノ・プロジェクトVMOによる共同ツアー
  15. ソルトバーン -
  16. The Bug vs Ghost Dubs - Implosion | ザ・バグ、ゴースト・ダブズ
  17. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  18. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  19. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  20. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ

Home >  Reviews >  Album Reviews > BJ The Chicago Kid- 1123

BJ The Chicago Kid

R&B

BJ The Chicago Kid

1123

Motown

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   Sep 09,2019 UP

 ソウル/R&Bの名門レーベルである〈モータウン・レコード〉に所属し、現行ソウル・ミュージック・シーンを代表するシンガーである BJ the Chicago Kid が、自らの誕生日(=11月23日)をタイトルに付けた、3rd アルバム『1123』。元々、Kendrick Lamar や Schoolboy Q ら〈TDE〉の関連作や、Dr. Dre 『Compton』などへのゲスト参加によって注目を浴び、シンガーとしての高い実力を知られるようになっていった彼であるが、前作『In My Mind』リリース後の約3年半だけでも、Anderson .Paak、Chance The Rapper、Solange、Common、Talib Kweli、PJ Morton、Rapsody など、実に様々なアーティストの作品に客演しており、音楽業界内でも引く手あまたな存在である。ヒップホップとソウル、両方のシーンとも強い親和性のあるシンガーという意味では、本作にも参加している Anderson .Paak にも共通のものを感じるかもしれないが、お互いの基本的な方向性は異なる。あくまでもヒップホップがルーツである Anderson .Paak に対して、BJ the Chicago Kid の場合は地元シカゴの教会でのゴスペルの経験や、あるいは伝統的なソウル・ミュージックがその根底にあり、彼が〈モータウン〉に所属しているというのも、その証(あかし)とも言えるだろう。

 そんなふたりが共演しているオープニング曲“Feel The Vibe”は、本作でもベストな一曲だ。Justin Timberlake のプロデュースなどで知られるヒットメーカー、Danja がプロデュースを手がけているこの曲は、現在進行形なサウンドの中に、スクラッチとホーンによって90年代的なノスタルジックなテイストが加えられており、そこに Anderson .Paak のラップと BJ the Chicago Kid の歌が絶妙に絡まって、極上のハーモーニーを生み出している。続く“Champagne”も Danja のプロデュース曲だが、こちらは Danja が得意とするシンセ・サウンドが全面に押し出され、キラキラとしたアーバン感と、BJ the Chicago Kid の色気のある歌声との相性は完璧だ。プロデューサーとしてもう一組、本作のキーとなっているのが Cool & Dre で、彼らが手がけた“Can't Wait”のほうはトラップの要素が入った R&B チューンでこちらも面白いのだが、注目すべきはもう一曲の“Playa's Ball”だ。60年代、70年代のソウルを強く意識したドライで温かみのあるサウンドに、BJ the Chicago Kid のヴォーカルが実に生っぽくソウルフルに響き、さらに後半に登場する Rick Ross の圧倒的かつ渋い存在感のラップも実に素晴らしい。かと思えば、Offset (Migos) をフィーチャした“Worryin' Bout Me”や、Afrojack がプロデュースを手がけた“Reach”などで、いまっぽく思いっきり派手にキメているのも、それはそれで BJ the Chicago Kid らしい。

 一枚のアルバムの中に、実にヴァラエティ豊かなサウンドが揃っており、トラックごとに変化する、BJ the Chicago Kid の多種多様なスタイルを十二分に堪能できる作品と言えるだろう。個人的にはプロデューサーを絞って、“Playa's Ball”のようなスタイルでアルバム一枚作っても、かなり面白いものができるのでは? とも思うが、今後、彼がどのような方向へ進むのかも楽しみだ。

大前至