ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Robert Del Naja ──マッシヴ・アタックの3D、二度目の逮捕
  2. Malaria! ——80年代初頭の西ベルリンから、ポスト・パンク/アヴァンギャルド・シーンを象徴する最重要バンド、マラリア!再発
  3. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  4. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  5. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  6. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  7. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  8. Columns 9月のジャズ Jazz in September 2026
  9. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  10. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  11. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  12. Stones Taro ──京都のハウス・プロデューサーによる新作
  13. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  14. Arca - XXXXX
  15. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  16. R.I.P. 鷲巣功
  17. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  18. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum
  19. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  20. Till Yawuh ——Till君ことティル・ヤウが自身のレーベルからアナログ盤をリリース

Home >  Reviews >  Album Reviews > Paul White- Rejuvenate

Paul White

Avant PopDream pop

Paul White

Rejuvenate

R & S

Amazon

小川充   May 17,2018 UP

 〈R&S〉はテクノなどエレクトロニック・ミュージックの老舗レーベルであるが、そうしたなかでポール・ホワイトは異色のヒップホップ系プロデューサー/ビートメイカー/マルチ・ミュージシャンである。南ロンドンのルイシャム出身の彼は、もっとも目立ったところではダニー・ブラウンのプロデューサーとして知られるが、2007年頃から地道に制作活動を続けて数々のソロ作品を出している。ダニー・ブラウンのほかホームボーイ・サンドマン、ギルティ・シンプソン、オープン・マイク・イーグルなどUSのラッパーたちと組んでおり、エリック・ビディンズとのゴールデン・ルールズというユニットではヤシーン・ベイ(モス・デフ)とも共演している。US勢との絡みから〈ストーンズ・スロー〉や〈ナウ・アゲイン〉などで作品をリリースしており、ポスト・DJシャドウ、またはポスト・マッドリブという形容もされてきた。

 UKではモー・カラーズなどのリリースで知られる〈ワン・ハンディッド・ミュージック〉でも作品をリリースしているが、彼のサウンドはヒップホップの王道から外れたオルタナティヴなもので、いろいろな音楽的要素が見られる。とくにサイケデリック・ロックの影響が強く、ダブ、ビートダウン、民俗音楽などの要素が色濃いところはモー・カラーズにも共通する。また、2014年の『シェイカー・ノーツ』ではテンダーロニアス、ウェイン・フランシス(ユナイテッド・ヴァイブレーションズ)、ジェイミー・ウーンらを起用して、かなりジャズ寄りのアプローチも見せていた。フライング・ロータスやラスGなどLAのビート・シーンに近い立ち位置のアーティストで、〈ワープ〉におけるフライング・ロータスのような関係性が、ポール・ホワイトと〈R&S〉の間にはあるのだろう。

 そうしたポール・ホワイトの新作『リジュヴェネイト』も〈R&S〉からのリリースである。〈R&S〉においては『シェイカー・ノーツ』に続く2作目のアルバムとなり、今回も彼の兄弟でマルチ・ミュージシャン/ビートメイカー/シンガー・ソングライターのサラ・ウィリアムズ・ホワイトが参加している。そのほかの参加者はUKジャマイカン・シンガーのデナイ・ムーア、ジンバブエ出身の詩人/ミュージシャンのシュングドゥゾことアレクサンドラ・ゴアで、彼女たち女性アーティストと共演したアルバムとなる。“ア・チャンス”は変拍子のビートとスペイシーなサウンドスケープによるポール・ホワイトらしいサイケデリックなテイストのナンバーだが、もはやヒップホップ的な文脈からは完全に離れた音作りが『リジュヴェネイト』において行われていることも示している。デナイ・ムーアが歌う“セット・ザ・トーン”は、フォーキーでアコースティックな質感とコズミックな質感が見事に融合したUKらしいダウンテンポ。こうした生音とエレクトロニクスの融合が彼の持ち味でもある。同じくデナイが歌う“シー・スルー”はよりポップ色が強いナンバーだが、こちらはレゲエ/ダブ的なニュアンスが加味されている。

 “リターニング”はアンビエント色の強い作品だが、ブリティッシュ・フォークからグナワのようなエスニック・ミュージックのテイストもあり、いろいろな民族音楽にも通じるポール・ホワイトの一面が見える。シュングドゥゾが歌う“スペア・ゴールド”と“アイス・クリーム”はメディテーショナルなサイケデリック・ソウルで、とくにストリングスを交えてシューゲイズ的なアプローチを見せる後者は往年のゼロ7などを彷彿とさせる。“ソウル・リユニオン”もペイル・セインツのようなシューゲイズ・ロックに近い。ジャズ・ロック、ポスト・ロック、ドリーム・ポップなどいろいろな要素が入り混じった“リジュヴェネイト”はステレオラブ的と言えようか。サラ・ウィリアムズ・ホワイトが歌う‟ラフ・ウィズ・ミー“と“オール・アラウンド”は浮遊感のあるドリーム・ポップ。彼ら兄弟の子供の頃の記憶を楽曲にしたもので、随所に実験的な遊びも見られる。この2曲に象徴されるように、いままでのヒップホップのビートメイカー的な立ち位置から脱却し、自身のなかにある音楽を自由に表現していった『リジュヴェネイト』は、新たなポール・ホワイト像を見せるアルバムである。

小川充