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TADZIO TADZIO II Pヴァイン |
どこでもアウェー……。ホームがない。タッジオは、いつでも浮いている感じがする。居場所をなかなか見つけられないのだ。あいつやあの娘のように。
タッジオは、容姿の整ったふたりの女性がやっているロック・バンドだが、色気を売りにしているわけではない。媚びている風には見えないし、わかりにくいこともない。ギターが鳴って、8ビートが打たれる。人はダンスするわけでもないし、リーダーと部長と互いを呼び合うふたりをじーっと見ている。演奏からは、「クソ」だの「ファック」だのと、汚い言葉がはっきり聴こる。
インディ・ロックを深読みするアメリカ人にとって、きゃりーぱみゅぱみゅはミシマの内臓に重なり、下山からはアメリカ文化の支配への日本人のアンビヴァレンスを想起させるのなら、タッジオは……タッジオは……、いったい何なのか。いまのところ日本では機能しない何かだろう。そして、その機能のしなさこそが、このバンドの魅力だ。
いくつかの曲は、日本のラジオではオンエアーするわけにはいかないだろうし、女性が口にして欲しくない言葉を言っているのかもしれない。サウンド的にもスタイル的にも、たとえアメリカ文化に支配されたとしても、たいていの場合は日本社会の歯車として機能できるものなのだが、彼女たちときたらそうはいかない。音と言葉はノイズとして存在している。
2011年にデビュー・アルバム『TADZIO』をリリース、およそ3年ぶりのセカンド・アルバム『TADZIO II』が去る3月にリリースされた。前作よりも、格段にアップグレードされている。以下の取材から、彼女たちの“佇まい”を少しでも感じ取っていただけたら幸いである。
深刻なやつなんか絶対に好きじゃない(笑)!
■じゃあ、よろしくお願いします。
部長&リーダー:お願いしまーす。
■セカンド・アルバムまでずいぶん長くかかりましたね。
リーダー:3年かかりました。
部長:私がちょっと骨折してたというのもあるんですけど、それで1年以上は延びまして。
リーダー:そうだね。骨折して、その後喧嘩したからすごい延びました(笑)。
■ そうそう。巷では不仲説も聞きましたけど。
(一同笑)
リーダー:まあ、話し合いをしまして。とことん思いのたけを全部言い尽くして、じゃあスタジオやりますか、みたいな感じで。
■ ライヴはコンスタントにやってたんでしょ?
リーダー:喧嘩してからライヴもあんまりやってなかった(笑)。骨折治ってから、ライヴは結構やってたよね。
部長:うん。タイに行ったのも骨折の後ですし、ちょこちょこライヴは入っていたんですけど、去年の7月か6月にふたりでぶつかって、そこからはしばらく休んでいましたね。
リーダー:喧嘩をする前はスタジオにはずっとコンスタントに入って曲を作っていたんですけど、単純に曲が思うようにできなかったので長くかかったというのもあります。
部長:そうだね。(難航したのが)最後の1、2曲くらい?
リーダー:なんか、記憶が全然……昔を思い出せない(笑)。
■ 喧嘩がそれだけ激しかったんだね(笑)。
(一同笑)
部長:記憶を消された(笑)。
■ ちなみに骨折はどこの骨を折ったんですか?
部長:左足のすねを2本折ったんですけど、骨折の直前までふたりですっごく詰めてて。めちゃくちゃ忙しくて、ふたりでスタジオにもがーっと入って。
リーダー:そうそう。これまでには出そうってね。
部長:わーわーって詰め込んでいたときに、ポキッといってしまって。
■ なるほど、調子が出てるときにね。TADZIOって曲を作るときにどこから作るんですか?
リーダー&部長:どこから?
■ 言葉から作るのか、音から作るのかっていったら、絶対に音だよね。
部長:うん。
リーダー:音。
■音から作るときはどこからつくるんですか?
部長:ふたりでとりあえず音を出してるんですよ。ギターもじゃーっと弾いてて、ドラムはばーってやってて、それでリーダーが良いと思ったフレーズとかがあったらそれを拾って、いまのもう1回やってみようってそこからドラムを合わせてみたりとかって感じですね。
■なるほどね。イヴェントで部長とは何回か偶然会ったことがあるんだよね。そのたびに、僕は部長に酔っぱらいながら、「打ち込みやった方が良いよー! 打ち込み!」って言ってたんですけど、ものの見事に裏切られました(笑)。
(一同笑)
リーダー:打ち込みの道具とか持ってないし(笑)。
(一同笑)
リーダー:(ギターとドラムだけで)できちゃったから。ふたつだけで10曲分ね。
部長:打ち込みとかはTADZIOではないかなーって思いましたね。
■やっぱりロック・サウンドがしっくりくる?
リーダー:へ? ロックですかね……?
■僕からしたら、むちゃくちゃロックだと思います。
(一同笑)
■少なくともジャズやテクノじゃないです(笑)!
部長:できたらそういう(ロックという)解釈をしてもらっているのかな、という感じで。ふたりでは「ロックを作ろう!」とか、そういう気負いもなく、ただ面白いものをギターとドラムだけで作りたいという感じで……
■すさまじいロックンロールですよ。
部長:どうしてそういう風になったのかわかんないですね。ただ、リーダーが弾くギターの感じがそういう方へ向かっていて、前に作っているときとは違うなとは思っていたんですけど、そのまま流れる感じに作っていって結局ロックみたいになったのかも。
■ライヴの場数をこなしていったことが今回のアルバムにフィードバックされていると感じましたがどうでしょう?
リーダー:そうですね、そう思います。あと、ギターもファーストのときと違うんですよ。
■自分で1年前より上手いとは思いますか?
部長:そうは思わないです!
■僕が最初に見たときは、ギターのチューニングも合っていない感じだったのが、わりとしっかりとしたサウンドになっているというか。
リーダー:それは多分、回数をやったからただ単に(笑)。
(一同笑)
リーダー:ちゃんとギターのコードを押さえているんだと思う。最初はコードを押さえていなかった。
■ファーストのときはコードの概念もなかった?
リーダー:なかったと思います。聴こえてくる音を使ったみたいな感じかな。
■なんというか、デレク・ベイリー的な境地に(笑)。上手くなっちゃいけないというのは自分たちのなかにありましたか?
リーダー:いや、上手くなりたい! まわりは「上手くならない方がいい」とか言うけど、普通は上手くなりたいでしょ。
部長:野田さんが聴いた感想は、ロックってことですか?
■僕は、そんなロックンロールな人間じゃないから、あくまでも、サウンド的なことで。ロックだなーと。最近、ハウスばかり聴いてて、ギターとドラムを聴いたのが、すごく久しぶりだったんで。
リーダー:ああ、じゃあ良いね。
部長:言ってることはすごくわる。でも、別にそういう(ロックな)ことを目指して作ってなかったから。
■一発録音じゃないんだよね?
リーダー:今回は違う。
部長:違うんです。
リーダー:別々。
部長:ギターも被していますよ、1曲だけ(笑)。
リーダー:だからすごくキレイで上手いというか。
部長:ミックスも前と変わってます。今回はこれがすごく大きいと思います。エンジニアの瀬川氏からアイディアを沢山もらって、ファーストとは違う感じにしようって。
■たしかに、音に、リスナーを拒む感じはないですよね。ある意味聴きやすいとも言えるし。
リーダー:それを目指しましたから。よかった。
■TADZIOをライヴハウスで見ると、いっつも、その場に溶け込めてない感じがあるんですよね。
部長:浮いている感じですか?
リーダー:浮いていると思う。
■あと、お客さんもどういう反応をしていいかわからない感じじゃない?
リーダー:うんうん。
部長:それはどうなんですかね?
■ やってる側はどんな感じなんですか?
部長:ひかれるのはすごく嫌なんですよ。でも自分たちではどうすることもできないから、(お客さんが反応に困るのは)どうなのかなと思いますけど。
■お客さんがノってきたことはありますか?
リーダー:場所によって。
部長:うん。場所によってはありますね。
■踊ったりとか?
部長:うん。そういうことも場によってはあります。
■TADZIOを聴いている人たち、自分たちのオーディエンス像ってありますか?
リーダー:やっぱり、おじさんたちが多いかな。
部長:うん、結局(笑)。
■でも、僕が何度か見たときのおじさんは僕しかいなかったですけどね。
リーダー:でも、(聴いてくれている人に)10代はいない。
■20代は?
リーダー:20代もあんまりいない気がする。
部長:うん。わかんないですね。いま誰が聴いているかわからないですね。
取材:野田努(2014年4月23日)