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interview with Takeshi "Heavy" Akimoto

interview with Takeshi "Heavy" Akimoto

0コンマ数秒の重さ

――秋本"Heavy" 武士、ロング・インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広   Jul 28,2011 UP

スライ&ロビーが日本に来たときにライヴに行って、で、打ち上げにもこっそり忍び込んで、で、ロビーがいたんで話しかけて、「あなたの大ファンで、間違いも含めてぜんぶコピーしました」って(笑)。

パンク/ニューウェイヴの頃って、ベーシストが目立ったというのもあるよね。ベースに格好いい人が多かったというか、PiLだったらジャー・ウォーブルとか。そういう人たちのダブに影響されたベースラインって、ロック聴いていた耳にはすごく新鮮だったじゃないですか。ただし、PiL聴いていた子のほとんどはジャー・ウォーブルにはすぐにいけるんだけど、だからといってみんながみんなバレット兄弟にいくわけじゃなかったよね。とくに10代だったら。

秋本:もう「やっと本物を聴いちゃったな」と思ったんですよ。結局そこに憧れていた人たちの音楽を介して(レゲエ/ダブ)を聴いていたわけじゃないですか。ジャー・ウォーブルとかポール・シムノンとか......まあ、スティングとか。だけどそこを越えて本物を聴いたときに、「やっぱもう、これだ」と。それから自分の持っているありったけの金を集めて、とにかくボブ・マーリーのレコードを買いましたね。

あの当時はボブ・マーリーの歌や言葉が注目されてはいたけど、俺もそうだったけど、だいたいの人はバレット兄弟がすごいというところまではいかなかったじゃないですか。まだ耳がそこまで出来ていなかったというか。

秋本:そうっすね。だけど......何でなんすかねー。とにかくドラムとベースというものに惹かれましたよね。それで後からですけど、ボブ・マーリーのインタヴューを読むと、「レゲエをいちばん表現しているのはドラムとベースなんだ」と。「自分より」っていうニュアンスでそれを喋ったり、「ゲットーの現実を伝えるのはベースだ」とか言っていたり、だから......ますます「そういうことか」って思いましたけどね。

しかも70年代のルーツ・レゲエって、何人かの優れたベーシストやドラマーがいろんなバンドで演奏しているんだよね。アップセッターズもアグロヴェイターズもレヴォリューショナリーズもルーツ・ラディックスも顔ぶれはけっこう重なっているんだよね、ドラムとベースとか。

秋本:ほぼそうっすよね。

逆に言えば、それだけ当時のジャマイカの音楽のドラムとベースっていうのは、誰にでもできるわけじゃなかったっていうかね。

秋本:ただそのなかでも、(アストン・)バレットとロビー(・シェイクスピアー)っていうのは特別なんですよね。まあ直系というか、ロビーはバレットの弟子だったりするんですよね。あのふたりはミュージシャンというよりはメッセンジャーだから。ベーシストと呼ぶには音にあまりにもメッセージがあるんですよね。

なんか、ほら、秋本君はスライ・ダンバーといっしょにやったんだよね。レベル・ファミリア......。

秋本:じゃなくて、ヘビーマナーズのほうですよね。

そうか、ヘビーマナーズのファーストか。それで、いっしょにセッションしたときのことを秋本君が「あの人はリズムで人を殺せる」って表現で言っていたんだよね。僕のなかにその言葉がすごく心に残っているんだよ。その「リズムで人を殺せる」っていう喩えは、どういう感覚なんだろう?

秋本:俺もスライといっしょにやるときに、自分のベース人生、俺の人生最大の勝負だと思ったし、そこでスライとセッションして結果が出せなければ(音楽を)やめようと思ってたんですよ。そのぐらいはっきりさせたかったし、で、本当のガチンコのセッションをやったんですよ。何にも決めずにね。まあそれで、納得できる結果ができたんで......、ホント、ものの30分ぐらいだったんですけど。
 ドライ&ヘビーはスライ&ロビーに憧れてはじまったぐらいなんで、俺が世界でいちばん研究しているはずなんですよ。そんな俺でさえ、セッションして最初のいち音をパーンってスライが出したときに、その場でしゃがみたくなるくらい、もうすごいんですよ、音の圧力が。音圧じゃないんですよ、エネルギーの気です。気が乗った音、気迫の音っていうのかな......それを殺意のある音っていう風に俺は思ったんですけど。だからロマンティックな話で、世のなかには達人は本当にいるんだなと思ったし、あと、あの人はミュージシャンである前に革命家なんだなと思って。

ああ。

秋本:あの人は闘ってきたんですよね。ピーター・トッシュのバックもやっていれば、ボブ・マーリーともやっているし、仲間はバンバン殺されたり、死んでいくし。いつ撃たれてもおかしくない音楽のバックをずっと支えてきたわけじゃないですか。そういう彼の生き方、生きてきた過程、仲間への思い、それらが完全に音に染みこんでいる。だから普通の音を越えた圧力がある。すごいですよ、だから。いざやると......(苦笑)。

それを感じことができる秋本武士もすごいと思うんだけど。そういえば、OTOさんもじゃがたらの最初の頃はずっとレヴォリューショナリーズに憧れていたって言ってたよ。あの人のギターには「TAXI」のシールも貼ってあったし。

秋本:へー、そうなんですか。

秋本君がドライ&ヘビーを結成するのはいつなの?

秋本:91年、七尾(茂大)君と出会ってですね。

代々木チョコレートシティだったよね?

秋本:はい。代チョコで最初のライヴやりましたね。七尾君とはその前に出会って、練習しはじめて......。

ワン・パンチ』までずいぶん時間があるよね。

秋本:そうっすね。『ワン・パンチ』が98年だから......まあ、セカンドっすけどね。その前に1枚あるんですけど、もうそれはレコード会社がつぶれて出ないっすけど。

その数年間は、秋本君はどんな気持ちでドライ&ヘビーを続けていたの?

秋本:91年に七尾君と知り合って、で、ヴァイタル・コネクションっていうバンドをやりはじめて、まあオーディオ・アクティヴとかも出てて、2~3年やってたんですかね。

あの当時の代チョコはレゲエとヒップホップの小屋だったよね。

秋本:そうですね。それで......まあ、いろんなゴタゴタにも巻き込まれましたけど。本当はドライ&ヘビーが〈ON-U〉から出すはずが、オーディオ・アクティヴになっちゃたんですよね。ただ、俺はその頃、名前がないし、デビュー前だったし、本当に悔しい思いをしましたけどね。

七尾君とはどうやって知りあったの?

秋本:ずっと自分ひとりでベースを練習して、じゃあ、そろそろメンバーを集めようかと、その当時、日本で本気でレゲエをやりたいと思っているヤツ全員の目に触れてやろうと思って、2年以上も雑誌に俺のメンバー募集広告が載るように書き続けていて。

2年?

秋本:2年以上っすね。で、ハガキとか電話かかってくる度にいろんな人とセッションして、だけど、もうぜんぜんダメで。それでもう、ジャマイカ行こうと思って。

秋本君らしいなー(笑)。

秋本:スライ&ロビーが日本に来たときにライヴに行って、で、打ち上げにもこっそり忍び込んで、で、ロビーがいたんで話しかけて、「あなたの大ファンで、間違いも含めてぜんぶコピーしました」って(笑)。そしたらロビーもだんだん機嫌が良くなってきて、「ジャマイカ来たら、ここ来い」って、住所とか書いてくれたんです。そういうこともあったんで、もうジャマイカに行こうと決めて準備をしはじめていた頃に、『ロッキングオン』に俺が出した広告を七尾君が見て連絡してきたんですよね。

へー。

秋本:それが最初っすね。

最初から彼は上手かったんだ?

秋本:最初から「この人しかいない」と思って。もう何10年もいっしょにやってきたような感覚だったんですよね。「もういける」「これでレゲエができる」と思って。絶対いけるって。

最初はふたりでやっていたの?

秋本:それとギターで力武(啓一)さんがいて、で、ヴァイタル・コネクションに七尾君のほうからオーディオ・アクティヴをゲスト的に入れてやって欲しいって頼まれたんですよね......、オーディオ・アクティヴのヴォーカルとキーボードを。オーディオ・アクティヴには俺は興味はなかったけど、「まあ、いいや、そんな言うなら」って感じで。彼らが「やる場がない」って言うから、それでヴァイタル・コネクションに入れたら、まあ、乗っ取られたっていうか。

はははは。

秋本:そんな感じでしたね(笑)。

取材:野田 努(2011年7月28日)

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