ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  2. ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代──あるDJの証言
  3. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  4. Arab Strap - Half-Told Tales | アラブ・ストラップ
  5. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  6. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  7. Protomartyr - Hotel Usona | プロトマーター
  8. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  9. Marcellus Pittman ──デトロイト・ハウス珠玉の逸材、マーセラス・ピットマンの来日ツアーが開催
  10. Helen - Linda's Head | ヘレン
  11. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  12. METHOD MOTEL - @名古屋・栄CENTRAL
  13. ゲーセン波乱万丈の100年史
  14. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ
  15. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  16. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  17. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  18. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  19. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  20. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum

Home >  Interviews > interview with Takeshi "Heavy" Akimoto - 0コンマ数秒の重さ

interview with Takeshi "Heavy" Akimoto

interview with Takeshi "Heavy" Akimoto

0コンマ数秒の重さ

――秋本"Heavy" 武士、ロング・インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広   Jul 28,2011 UP

 ボブ・マーリーの初期の有名な曲に"スモール・アックス"がある。「おまえたちがでっかい木なら、俺たちは小さな斧だ/いつかおまえらをぶった切ってやる」......秋本武士は自分がその歌で歌われる"俺たち"のひとりであることをいまでもまったく疑っていない様子だ。その強い気持ちが彼のベースをドライヴさせ、そしてまた自身のベースという楽器を銃に喩えるのだ。試しにザ・レヴォリューショナリーズのアートワークをネットで検索してみよう。
 "スモール・アックス"で歌われる"おまえたち"とは植民地主義の支配者で、"俺たち"とはその配下で働く奴隷。ボブ・マーリーはそうした奴隷制時代の光景を、実はいまでも続いているんだと、現代の喩えとして表現したが、たぶんいまどきほとんどの人は自分を奴隷だなんて思っていない。わりと自由にモノを買い、自由にツイットしたり、自由に飲み食いする(東日本はそうも言ってられないか......)。あるいは、みんな"小さな斧"なんかよりも"でっかい木"になろうと懸命なのかもしれない。そういう考えは古くさいと言う人もいる。まあ、とにかく......まわりがどうで、何を言おうが、秋本武士は"小さな斧"であり続けようとする。90年代のドライ&ヘビー、ゼロ年代以降のレベル・ファミリアとザ・ヘビーマナーズ......彼が作る音楽のすべてがそういうものだ。


THE HEAVYMANNERS
サバイバル

Pヴァイン E王

Amazon iTunes

 ザ・ヘビーマナーズのセカンド・アルバム『サバイバル』にはラッパーのルミが4曲にフィーチャーされているほか、インターナショナルに活躍するダブステッパーのゴス・トラッド、〈ON-U〉から作品を出している女性シンガーのサミア・ファラー、トロンボーン奏者のイッチー等々......いろいろな人が参加している。ルミがラップする"誰かのあの子"は原発事故を主題にした強力な曲で(反原発デモのアンセム第一候補)、サミア・ファラーが歌う"ARAB IN DISGUISE"は反グローバリゼーションをテーマにしている。秋本武士のベースは、ドラムスとの息を呑むようなズレのなかで劇的なグルーヴを作っている。
 夜の10時に、中野のスタジオで秋本武士に会って話を聞いた。

最初はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの『ナッティ・ドレッド』でしたね。15か16のときですね。「もう、これしかない」と思って。その瞬間に人生変わっちゃった感じですよね。結局いまでもこういうことやってるっていうのは。

■秋本君が最初に出会ったレゲエって?

秋本:最初はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの『ナッティ・ドレッド』でしたね。

■何歳のとき?

秋本:15か16のときですね。

■最初に聴いたときから、来るモノがあった?

秋本:来ましたね。"ライヴリー・アップ・ユアセルフ"という曲があって。

■1曲目の。

秋本:1曲目。「もう、これしかない」と思って。その瞬間に人生変わっちゃった感じですよね。結局いまでもこういうことやってるっていうのは。

■15歳で『ナッティ・ドレッド』を聴いて......。

秋本:はい。

■それ以前は?

秋本:パンクやニューウェイヴの時代だったんで、そういうのを聴いてましたね。

■『ナッティ・ドレッド』の何がすごかったんだろう?

秋本:なんかわかんないすけど、とにかく、尋常じゃないエネルギーっていうか。ものすごいエネルギー......太陽が目の前にいきなり出て表れたみたいな。もう、すごい......。

■そこまで感じたんだ。

秋本:何の言い訳もなく......、こんなに格好いい、すごいことが世のなかにあるんだっていう。

■どういうきっかけで聴いたの?

秋本:レゲエに影響を受けていたニューウェイヴとか。後期のクラッシュとかポリスとか。

■ニューウェイヴ自体がレゲエの影響を受けていたし、レゲエ好きのミュージシャンが多かったよね。ジョン・ライドンを筆頭に。

秋本:そう、それで、音数を減らすことやその緊張感みたいなもの、1曲をひとつのループでいくやり方とか、そういう他の音楽とは違うところに興味は持っていたんですけど、でも、本物を聴くのが少し恐かったところがあって。

■ほぉ。

秋本:ジャケの感じも全然違うし。

■なるほど。

秋本:子供の俺にもこれは本物のゲットーの音楽だっていうのがある程度わかってて、「俺が聴いていいのか?」みたいなところもあった。

■はははは。そこまで......。

秋本:「俺なんかが聴いちゃいけないんじゃないか」って。

■『ナッティ・ドレッド』を選んだ理由は?

秋本:なんだろうなぁ......。

■"ノー・ウーマン・ノー・クライ"が入ってるからとか?

秋本:いや、ぜんぜん違いますね。たぶん......何の予備知識もなかったんですよ。試聴もできなかったし......。とにかく、『ナッティ・ドレッド』だったんです。

■そのときベースは握ってる?

秋本:ぜんぜんそれはないですね。ぜんぜんなくて......ベースをやりはじめたのは18ぐらいなんで。その3年後ですかね。

■秋本武士のなかでは、『ナッティ・ドレッド』からどういうプロセスでバレット兄弟にまで辿り着いたの?

秋本:そうっすね......けっこう、ひねくれたガキだったんで、何て言うか(笑)、何も知らないけど、世のなかのリアリティなんて何にもわかってなかったけど、ひねくれたガキだったんで、斜に構えた見方してましたよね。で、当時の日本には何かを本気でやるのとか、すごいダサい風潮にあった気がしたんですよ。

■80年代にはそういうところがあったね。

秋本:そんななかで......何の言い訳もなしに、ここまでさらけ出して、すべてを表現するっていうか......そしていち音いち音が究極に研ぎ澄まされているというか、あの1曲ワンループの強力なグルーヴで最後まで引っ張るというか......。1曲をひとつのフレーズのベースラインでもっていくところなんか、他にたくさんある緻密な音楽よりも、何か答えを持っているような気がしたんですよね。はっきりと答えが見えているようなね。

■なるほど。

秋本:こんなすごいことはないなと思ったんですよね。こんなに格好いいものはないんじゃないかと思いましたね。シンプルで、ドラムとベースとギターと、たまにキーボードと、その音の空間がすごい。結局、音数が少ないから、音のひとつひとつがよく聴こえるし、緊張があるし。しかもあの時代の究極のミュージシャンがそれをやっているんですよね。

取材:野田 努(2011年7月28日)

12345

INTERVIEWS