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MODE AT LIQUIDROOM

MODE AT LIQUIDROOM

Still House Plants
goat

2024年9月21日@LIQUIDROOM

野田努 Sep 30,2024 UP

 去る6月の「MODE 2024」、草月ホールに入ったときには、すでにヴァレンティーナ・マガレッティは最後の3曲くらいで(そのあと出演した坂田明が圧倒的だったとはいえ)、ほんとうにもったいないことをした。イタリア出身でロンドン在住のこの女性ドラマーは、いろんなプロジェクトでいろんなことをしていて、今年は、Holy Tongueのメンバーとしてシャックルトンとの共作アルバムを〈AD93〉からリリースし、そしてつい先日は〈プリンシペ〉のニディアとの素晴らしい共作アルバムを出したばかり。Toneglowに載った彼女のインタヴューの悲観的な予想によれば、AIに頼った未来の音楽シーンではDJは絶滅し、生楽器による生演奏が最後のアートになるという。9月21日の「MODE」の会場リキッドルームに到着すると、だいたい通常のライヴではお約束としあるBGM(ないしは前座DJ)のいっさいがなかった。開演前も転換の時間も、ただ場内のざわざわした音があるだけで、それがなんか妙に新鮮に思えたりもした。しかも、その夜出演したStill House Plantsもgoatも、生演奏の生ドラムのバンドだ。


素晴らしきスティル・ハウス・プランツ

 少しばかり気が早いが、この夜のライヴが今年の自分にとってのクライマックスだと思っていた。そして、期待以上のものがあった。最初はSHPだった。なにげに3人は登場し、音を出したと思ったら演奏がはじまった。それは不規則さの自由というか、ドラムとギターとヴォーカルのみでできることの驚くほどの展開をみせるものだった。フィンレイ・クラークのギターとデイヴィッド・ケネディのドラムとのコンビネーションは、ほとんど奇数拍子、変拍子のリズムにおいて、即興的だがあり得ないほど決まるところが決まっている。ジェシカ・ヒッキー=カレンバックのジャズやブルーズを押しつぶしたようなヴォーカリゼーションが、その空間を自由に出入りする。ディス・ヒートが普通のロック・バンドに聴こえるほどSHPは変幻自在に屈折しているし、しかもそこにはブラック・ミュージックにも通じる艶めかしさがある。最初の2曲を聴いた時点で、ぼくの涙腺は緩んでしまった。
 いっぽうのgoatと言えばその逆で、ドラムとパーカッションによるまったく規則正しいリズムが重なりあうなか、いっさいのメロディを排したサックスとギターがベースと共鳴し、やがてそれぞれが結合すると、どこか『オン・ザ・コーナー』めいた、しかもじつに推進力のあるサウンドが創出される。その奇妙な迫力は、人間よりもメトロノームに近づこうとしたCANのようなミニマリズムをさらに徹底的に、機械よりも正確にやろうとして生じるものかもしれないし、メロディをまったく排したそのサウンドから立ち上がる無機質さとリズムのすさまじい躍動感との調和が発するものかもしれない。
 それにしても、BGMもMCもアンコールも(そしてCGも動画も)ないシンプルな照明のなか、極めて独創的なサウンドを持つこのふたつのバンドで、リキッドルームが身動き取れないほど超満員になったことにも希望が持てる。ぼくにとって今年のベストなライヴどころか、ここ10年のなかでもベストな体験だった。


オーディエンスをダンスさせたゴートの圧倒的なライヴ。

野田努