ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  2. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  3. Helen - Linda's Head | ヘレン
  4. Boy Harsher - GET MEAN | ボーイ・ハーシャー
  5. aya × Violent Magic Orchestra ──初来日を果たす〈Hyperdub〉のアヤと、ブラックメタル・テクノ・プロジェクトVMOによる共同ツアー
  6. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  7. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  8. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  9. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  10. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  11. R.I.P. 鷲巣功
  12. Freddie Gibbs & The Alchemist - Alfredo  | フレディー・ギブズ、ジ・アルケミスト
  13. Gaku Kiishi ──『サイコ』『オーメン』『シャイニング』『リング』から『8番出口』『バックルームズ』まで、ホラー映画の音楽を分析する1冊が刊行
  14. Helen - The Original Faces  | Grouper、グルーパー、ヘレン
  15. interview with aya 口のなかのミミズの意味 | 新作を発表したアヤに話を訊く
  16. The Clash ——ザ・クラッシュ、結成50周年記念ベストがリリース
  17. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  18. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  19. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  20. Moodymann - Take Away  | ケニー・ディクソン・ジュニア

Home >  Reviews >  Album Reviews > Jabu- A Soft and Gatherable Star

Jabu

BristolDream popDub

Jabu

A Soft and Gatherable Star

Do You Have Peace?

Bandcamp Amazon

野田努 Nov 25,2024 UP
E王

 日本のリスナーにとってブリストル・サウンドが夢を約束してくれる音楽だとしたら、ジャブーの最新アルバムはお薦めだ。あるいは、こうも言える。音楽を夢想の入口として楽しんでいるリスナーにとって、ジャブーにはその扉が確実にある。コクトー・ツインズ、A.R.ケイン、エイフェックス・ツインの『Selected Ambinent Workd Vol.2』、マッシヴ・アタックの “Teardrop” 、ボーズ・オブ・カナダ……こうした音楽を好んでいる人にとっては必聴盤と言っていいだろう。
 アモス・チャイルズ、アレックス・レンダル、ジャスミン・バットの3人からなるジャブーが10年代ゴシックの牙城〈Blackest Ever Black〉から最初のアルバムを出したのは2017年だが、3人ともヤング・エコー集団のメンバー(あるいはKilling Sound、O$VMV$Mなど)でもあるので、2010年代初頭より活動している。初期は地元の〈No Corner〉〔※シーカーズも出したレーベル〕から数枚の7インチを出していたが、セカンド以降は自分たちのレーベル〈Do You Have Peace?(あなたに平和はある?)〉を立ち上げ、リリースしている。

 ブリストル・サウンドというレッテルは、90年代、当事者たちが迷惑していた呼称だったが(当たり前だが、ブリストルにはロックも実験音楽もあり、ポーティスヘッドとマッシヴ・アタックとではアプローチが異なる)、ひとつ言えるのは、70年代末のポスト・パンク時代のブリストルの重要な影響源にはJBやパーラメントがあって、80年代末からのクラブ時代にはヒップホップとニュージャック・スウィングがあったように、ジャマイカから輸入されたレゲエ/ダブを除けば、彼らの混合成分表にはかなりの分量でその時代のアメリカの黒人音楽からの影響があった。
 ヤング・エコー一派にも現行のUSブラックとの繋がりがあるにはあるが、グライムやドリルほど強くはない。2010年代以降の、ベース・ミュージックを通過したその一派は、ダークなサウンドシステム文化における混合主義を継承してはいたが、90年代的ブリストルの亡霊の、ある意味闇雲な引き伸ばし作業のようでもあった。アモス・チャイルズはその中心人物のひとりで、ジャブーにおいては拡張よりも音楽の没入感に重点を置いている。早い話が、こちらのほうが入りやすい。

 ダークかつダウナーなR&Bからドリーミーなそれへと展開したのが前作で、しかし新作『A Soft and Gatherable Star(柔らかく、集めることができる星)』ではR&Bの要素は後退し、コクトー・ツインズの領域に近づきシューゲイザーめいてもいる。メランコリックなメロディはリヴァーブの霧に包まれて、実験性はあるものの、ティルザの1枚目/2枚目のアルバムにも隣接する親密さをもっている。いにしえのブリストルのオルタナティヴ、初期フライング・ソーサー・アタックにも通じる幻想的な雰囲気はローファイな音響へと注がれているが、グルーパーにも似たムードある歌がアルバム全体のトーンを優しくする。世界はぼやけ、滲んでいる。これは、2024年の嬉しいドリーム・ポップ・アルバムだ。

野田努