ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. R.I.P. Steve Cropper 追悼:スティーヴ・クロッパー
  2. Columns 内田裕也さんへ──その功績と悲劇と
  3. interview with Autechre 来日したオウテカ──カラオケと日本、ハイパーポップとリイシュー作品、AI等々について話す
  4. Squarepusher ──スクエアプッシャーのニュー・アルバムがリリース
  5. Jill Scott - To Whom This May Concern | ジル・スコット
  6. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  7. Dolphin Hyperspace ──凄腕エレクトリック・ジャズの新星、ドルフィン・ハイパースペース
  8. Cardinals - Masquerade | カーディナルズ
  9. xiexie - zzz | シエシエ
  10. Laraaji × Oneohtrix Point Never ──ララージがワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの来日公演に出演
  11. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2026
  12. Amanda Whiting - Can You See Me Now? + The Liminality Of Her | アマンダ・ホワイティング
  13. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  14. heykazmaの融解日記 Vol.4:如月⊹₊⋆ “15” EPリリースしたよ๋ ࣭ ⭑
  15. PRIMAL ──1st『眠る男』と2nd『Proletariat』が初アナログ化
  16. ele-king presents HIP HOP 2025-26
  17. Geese - Getting Killed | ギース
  18. 対談 半世紀を経て蘇る静岡ロックンロール組合
  19. DJRUM - SUSTAIN-RELEASE x PACIFIC MODE - 2026年2月7日@WOMB
  20. P-VINE × FRICTION ──フリクション公式グッズが、Pヴァイン設立50周年企画として登場

Home >  Reviews >  Album Reviews > Anderson .Paak- Ventura

Anderson .Paak

Hip HopSoul

Anderson .Paak

Ventura

Aftermath

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   May 14,2019 UP

 前作『Oxnard』からわずか5ヶ月後という短いサイクルでリリースされた、アンダーソン・パークの4枚目となるソロ・アルバム。アーティスト本人のインタヴューでの発言によると、本作は『Oxnard』とほぼ同時期にレコーディングが行なわれたようだが、エグゼクティヴ・プロデューサーであるドクター・ドレーからは『Oxnard』と比べてより自由な権限が与えられ、アンダーソン・パークの好きな形で制作することができたという。実際、今回のプロデューサー陣も前作とは多少異なった編成になっており、ドクター・ドレーもエグゼクティヴ・プロデューサーおよびミックス・エンジニアとしてのクレジットのみで、楽曲のプロデューサーとしては参加していない。それゆえにアルバム全体の仕上がりとしては、ウェストコーストならではファンク色の濃度が多少薄れて、より聞き心地の良い雰囲気になったように感じる部分もあるが、流れとしてはやはり『Venice』から『Oxnard』までのいわゆる“ビーチ・シリーズ”の延長上にある作品あるのは間違いない。
 前作ではケンドリック・ラマーやスヌープ・ドッグ、プッシャ・T、J・コールといった錚々たるメンツをゲストに迎えたアダーソン・パークであるが、本作では参加しているアーティストがそれぞれビッグネームであることは変わらないものの、ゲストの器用の仕方がより自然なものになっており、良い意味で曲のパーツとしてゲスト・アーティストが見事に機能している。その効果は、前作でも1曲目のプロデュースを手がけたジャイラス・モジーとアンダーソン・パークとのコンビネーションによる“Come Home”から如実に現れており、この曲では終盤にアンドレ3000(アウトキャスト)が参加したパートがあるのだが、ジャイラス・モジー自身によるギターのリフとアンドレ3000のラップの絡み具合が実に見事で、畳み掛けるようなテクニカルなラップの立ちっぷりが、アルバム全体への期待度も上げている。プロデューサーとしてアルケミストが参加したノスタルジックなR&Bチューン“Make I Better”では、スモーキー・ロビンソンを贅沢にもコーラスとして起用して、ベテランならではの大人の色気が加えられ、一方、曲の前半部で大胆に展開する“Reachin' 2 Much”ではレイラ・ハサウェイを同じくコーラスに迎えて、曲の厚みを増すことに成功している。ゲスト起用の巧みさという意味では、ジャスミン・サリバンをフィーチャした“Good Heels”やブランディが参加した、個人的には本作中最も好きなブギーチューン“Jet Black”も実に魅力的であるが、今回、最も注目すべきはネイト・ドッグとのコラボレーションによるラスト・チューン“What Can We Do?”であろう。Gファンク・シーンを代表するシンガーであり、2011年に亡くなったネイト・ドッグであるが、この曲のプロデューサーであるフレッドレック自身が以前、プロデュースを手がけた未発表のヴォーカルを今回使用し、まるでネイト・ドッグが現代に蘇ったかのような、実にフレッシュなアンダーソン・パーク流のGファンク・チューンを完成させている。
 他にも前作『Oxnard』でもコンビを組んでいたカルム・コナーと〈ストーンズ・スロウ〉のアーティストでもあるキーファーによる先行シングル曲“King James”や、ファレル・ウィリアムスがプロデュースおよびコーラスでも自ら参加している、ちょっと変則的なビート感のダンス・チューン“Twilight”など、聞きどころは多数ある。ただ、個人的にはまだ『Oxnard』の余韻が残っている状態でもあり、今後、もう少しじっくりと時間をかけてこのアルバムを聞き込んでいきたいと思う。

大前至