ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Flying Lotus ──フライング・ロータスが新作EPをリリース
  2. shotahirama ──東京のグリッチ・プロデューサー、ラスト・アルバムをリリース
  3. Shintaro Sakamoto ——坂本慎太郎LIVE2026 “Yoo-hoo” ツアー決定!
  4. IO ──ファースト・アルバム『Soul Long』10周年新装版が登場
  5. interview with Shinichiro Watanabe カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツに声をかけた理由
  6. CoH & Wladimir Schall - COVERS | コー、ウラジミール・シャール
  7. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  8. ele-king presents HIP HOP 2025-26
  9. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  10. Thundercat ──サンダーキャットがニュー・アルバムをリリース、来日公演も決定
  11. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  12. 坂本慎太郎 - ヤッホー
  13. Columns 1月のジャズ Jazz in January 2026
  14. KEIHIN - Chaos and Order
  15. Nightmares On Wax × Adrian Sherwood ──ナイトメアズ・オン・ワックスの2006年作をエイドリアン・シャーウッドが再構築
  16. 「土」の本
  17. Meitei ——来る4月、冥丁が清水寺での「奉納演奏」
  18. interview with Sleaford Mods 「ムカついているのは君だけじゃないんだよ、ダーリン」 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー
  19. 『ユーザーズ・ヴォイス』〜VINYLVERSE愛用者と本音で語るレコード・トーク〜 第四回 ユーザーネーム kanako__714 / KANAKO さん
  20. VMO a.k.a Violent Magic Orchestra ──ブラック・メタル、ガバ、ノイズが融合する8年ぶりのアルバム、リリース・ライヴも決定

Home >  Reviews >  Album Reviews > Parliament - Medicaid Fraud Dogg

Parliament

Funk

Parliament

Medicaid Fraud Dogg

C Kunspyruhzy/Pヴァイン

Amazon

野田努   Sep 12,2018 UP
E王

 若い頃は1ヶ月のレコード代で5万は使っていたが、いまは1年間カミさんと合わせて医療費10万以上は使っている。そのぐらいで済んでいるだけでもラッキーかもしれない。若い頃はジョギングなんかしているミック・ジャガーを死ぬほど軽蔑していたものだが、いまは毎週末区民プールで泳いでいる。悲しいよのぉ。歳を取るとは診察券が何種類も増えることであり、医療をより身近に考えることである。悲しくもしかしリアルな、そして我々が生きていく上で必要不可欠な問題をサブジェクトに、パーラメントがこの名義では38年ぶりとなる新作をリリーする──というのはなんともファンキーだ。題して「医療詐欺の犬(メディケイド・フロード・ドッグ)」。
 オバマケアの喪失も大きいし、ジョージ・クリントンは数年前に長年のドラッグ中毒から立ち直り、そしていまは合法的なドラッグ治療に身をさらしていると、70を越えたファンケンシュタイン博士はそう言っていた。アメリカの医療費はハンパなく高額だし。こうした医療/健康という観点から社会を覗いたときの違和感/憤りを音楽に込めるというのは、さすが。というかパーラメントがこんな社会派だったことがあったのだろうか。ジョージの観察眼は、習慣病からSNS文化、保険勧誘員にまでおよんでいるようだ。なんにせよ、ジョージはその鋭さを失っていない。これはアメリカの闇夜への逆襲だ。1曲目の“医薬用クリープ”のシンセベースとトラップのリズム(それは本作で何回か出てくる)、不気味な童謡コーラス、ホーン、そして堂々たるトロンボーン。格好いいけれど……しかし決して楽観的ではない。なにせ「お母さんが昨晩、廊下で倒れて寝てしまった……」のだから。
 本人によれば、ケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』への参加は大きかったようで、ジャズへのアプローチを見せている“アンチソーシャル・メディア”は完全にその影響だという。ちなみに歌詞のほうはソーシャル・メディアの病みを扱っていると思いきや、嫌っている人間ほどソーシャル・メディアをやっているということらしい。それから“69”は、1969年を主題にした曲で、こんな時代だからこそあの頃の理想主義を思い出そうということらしいです。
 パーラメントならではの宴会のりというか、“On Fire”や“Loodie poo Da Pimp”(ケンドリックに捧げたと思われる)のような、そしてかなりキラーな“Kool Aid”のような、教会でゴスペルやりながらトリップしていくようなヨコ揺れ感覚はもちろん健在で、4年前のファンカデリック名義のアルバムはCD3枚だったが、こんどはこんどでCD2枚でおよそ2時間ある。全23曲+1、ゆるゆるではあるが、なぜか心強くなるサウンドが惜しみなく収録されているというわけだ。とくに1枚目のCDの後半から2枚目の最後までは、P-ファンク節満載。まあ、泥臭い音楽である。つまり商品として加工される前の生々しさ、ムーディーマンのようなそれがここにもある。

 ところで、こないだの来日時に編集部はジョージ・クリントンに対面取材しました。10月発売の「フライング・ロータスとブレインフィーダー」特集号に掲載されるので、どうぞお楽しみに。(取材時にもっともシュールだったのは、撮影のためジョージ・クリントンと小林さんが同じエレヴェイターに乗ったことだった。お互い無言でただ笑みを交わしただけだったというが、想像しただけでもオソロシイ……)
 

野田努