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Duenn

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Duenn

A Message

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デンシノオト   Jul 12,2016 UP

 京都の電子音楽レーベル〈シュラインドットジェイピー〉から、福岡のカセット・レーベル〈ダエン〉主宰ダエンの新作ソロ・アルバム『ア・メッセージ』がリリースされた。

 このリリースは必然であろう。なぜなら近年の〈シュラインドットジェイピー〉と〈ダエン〉は協働関係を深めているように思えるからだ。たとえば〈ダエン〉から発表されていた〈シュラインドットジェイピー〉主宰、糸魚健一のサイセクス『アペックス』のカセット・ヴァージョンや、ショータ・ヒラマのカセット作品『モダン・ラヴァーズ』(2014)も本年になり〈シュラインドットジェイピー〉から単独CDとしてリリースされた。また、6月27日にドミューンにて放送された「duenn "A message" Release SPECIAL!!!「HARD CORE AMBIENCE 5HOURS」に糸魚が出演したことも記憶に新しい。この電子音楽の新しい潮流を生み出す活発な協働関係には、今後も注目していきたい。

 さらには、東京の〈サッド rec〉から、ダエン・中村弘二(ニャントラ)・中原昌也(ヘア・スタイリスティックス)らが山口のYCAMで慣行したライブ盤『ワイカム・ライブ』(2016)がリリースされたことも忘れてはならない。そう、この2016年は、まるで西と東(国外と国外も)を貫通するように日本電子音楽の「新しい協働と実践」が頻繁に行われているような印象を強く持ってしまうのだが、いかがだろうか。そして、そのシーンにおいて「ダエン」という名の才能豊かなアンビエント・アーティストの名が刻印されていることに、私は何より注目したい。本年、彼の作品を続けてレヴューしている理由はそこにある。

 じじつ、〈シュラインドットジェイピー〉からリリースされた彼の新作『ア・メッセージ』は、アンビエント作品として出色の完成度を示していた。写真家、横田大輔の「untitled」という作品にインスピレーションを受けたという本作は、いまや飽和気味となった西欧的なアンビエント/ドローン・シーンを更新させてしまう作品ですらあると思う。私は、ダエン作品の魅力は繊細な音量設定とサウンドのレイヤー/コンポジションの絶妙な交錯にあると考えているのだが、本作『ア・メッセージ』は、まさに、その「音量の美学」が極まっているように感じられた。急いで付け加えておくが、彼は、いわゆるマイクロ・スコピックな「弱音響」ではない。かといって音の大きさを誇示するものでも、それによって快楽を与えるものでもない。そうではなく、「音が空気を変える」ために、もっとも適切な音量を追求しているように思える。その音響が時間と空間のなかに融解するかのごときアンビエンスの聴取効果は絶大だ。流しておくと部屋の空気を変えてしまうような、美しい香水のような音響作品に仕上がっているのだ。あきらかにアンビエント/ドローンやインダストリアル以降のサウンドなのである。
 
 本アルバムは、“ア・メッセージ(サイドA)”と“ア・メッセージ(サイドB)”の長尺2曲から構成されている。各トラックの印象をひとことでまとめるならば、1曲め“ア・メッセージ(サイドA)”は「硬質でやわらかい時間の横溢」、2曲め“ア・メッセージ(サイドB)”は、「鋭さとやわらかさの生成変化」となるだろうか。それらの楽曲は、それぞれの「世界」が反転するような音響を展開しており、「同じ場所の、違う時間で流れていた空気」のような関係のようにも聴こえてくるのだ。この『ア・メッセージ』のアンビエンスは、霧のように、雲のように、空気のように音のカタチを変えていく作品である。澄んだ「大気」のような音響だ。本作を聴いていると、朝の空気の中にいるような、清冽で、時の流れが変わっていく感覚を覚えてしまう。聴覚は研ぎ澄まされつつも、心身がリラックスしていくような、もしくは、まるで朝方の神社の空気のように、非日常的な時間の手前に立っているような音響的生成変化の持続。このような「神社」的な感覚こそ、ロマンティックに音楽化していった西欧アンビエント/ドローンとは違う、新しい「アジア」的なアンビエント音響のように思えてならない。清冽な空気や水を摂取するように聴くことで「浄化」されるアンビエント。まさに本作は「心と体に作用するアンビエント」である。音楽/音響による聴覚と身体のリセット/クリーニングはたしかに可能なのだ。

 それにしても〈シュラインドットジェイピー〉は充実のリリースが続いている。先に書いたように糸魚健一のサイセクスの2015年作品『アペックス』カセット・ヴァージョンのCD化『アペックス ~マグネティズム・アンド・アングラー-モーメンタム』(これは一種のダブ・ミックスだろう)やショータ・ヒラマの『モダン・ラヴァーズ』のCD化、日本を代表するアンビエント・アーティスト、ハコブネがこれまでリリースした膨大な楽曲をまとめるヒストリカルCD『2007-2008』『2009-2010』『2011』(計6枚が予告されている)に加えて、アイ・チューンズ限定リリースであるカフカ『ポリヘドロン』、 Ingern『スモール・ユニヴァース』、ジュンヤ・トクダ『ア・ディ・イン・ザ・アレイ』など、どれもエレクトロニカ/電子音楽の「現在」の魅力が横溢している素晴らしい作品ばかりである。未聴の方は、ぜひとも聴いていただきたい。

デンシノオト