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ベニー・ブランコと組んで2・ライヴ・クルーに捧げたミニ・アルバム『バンガーズ&キャッシュ』があいだに挟まっていたとはいえ、『ヨー・ヨー・ヨー・ヨー・ヨー』からは5年ぶりとなるセカンド・アルバム。半分ほどの曲と全体のミックスはジャーマン・エレクトロのボーイズ・ノイズが手がけており、不仲説が伝えられていたXXXチェインジも2曲に参加している(単にやりかけの曲が残っていただけかもしれないけれど......)。アナログ盤は異なるのか(?)、 CDのジャケット・デザインに使われていたアレックス・ダ・コルテのインスタレイション「ガーリック・プッシー」には、権利問題にうるさい「キティちゃん」が使われているため、トモちゃんやあゆのファンが買い占めたり、まさかだけど、回収になったりする前に買っておこうかなと(そうです、ヴォルフガング・フォイトに続いてジャケ買いの要素が強かったでした)。
ダブステップが大きく浮上してきた2006年、スパンク・ロックを聴いて最初に思ったことは、ようやくアメリカからエレクトロニクスの比重が異常に高いヒップホップ・サウンドが出てきたということだった。スウィズ・ビーツやネプチューンズなど部分的に電子音を取り入れていたプロデューサーも少なくはなく、Eに手を出したエミネムがその動きを加速させたということもあったのかもしれないけれど、アフリカ・バンバータの導入部を思わせるほど全編にエレクトロニクスを導入したヒップホップ・アルバムは、それまではヨーロッパにしか存在しなかった。808ステイトがバック・アップしたMCチューンズやルースレス・ラップ・アサシンズ、あるいはベティ・ブーやTTCなど「そんなものはヒップ・ホップじゃない」と思われていた人たちばかりである。
ボルチモア・ビートを代表するのかしないのかよくわからなかったスパンク・ロックも、しかし、受け入れられたエリアがアメリカだとはとても言いがたい。リミックスのオファーもCSS、TCCのテキ・ラテックス、コールドカット、レディ・ソヴリンと基本的にはイギリスで、ハード・ファイのミックスCDにフィーチャーされたかと思えば、ビヨーク"アス・イントゥルーダーズ"へとキャリアは続いていく(トム・ヨークが興味を示したことも驚きだった)。僕もサマー・ソニックのために来日した彼らにインタヴューの機会をもらい、オール・タイチを聴かせてみたりした。要するに「違うこと」をやると果てしなく「違うこと」に付き合わされてしまうという好例である。ちなみにMCスパンク・ロックは非常に静かな人物で、とても卑猥な歌詞で有名になった男とは思えなかった。どこか哲学的な雰囲気さえ漂わせていた。『すべては退屈で、誰もがひどい嘘つきだ』というアルバム・タイトルは、しかし、そのような印象を持っていたせいで、どこか説得力を感じさせるものではある。"ナスティ"や"クール・シット"など従来のイメージを上書きするだけの曲名にも事欠きはしないものの、"人種暴動"や"降りる"などという曲名も目には飛び込んでくる。歌詞が載っていないので詳細は判然としないけれど。
サウンドに大きな変化はない。オープニングからエレクトロ・ヒップホップの連打。用途不明のバカバカしさは失われていない。"カー・ソング"は初期の電気グルーヴみたいなシンセ-ポップで、"ベイビー"は同じくプリンスにしか聞えない(なんとなく、なるほどと思わせる)。"ザ・ダンス"はXXXチェンジのプロデュースで、スーサイドにはほど遠いエレクトロニック・ロックン・ロール。同じくダニエル・ミラーのザ・ノーマルに通じる"DTF DADT"や先行シングル"エナジー"は唐突にに歌い上げるパターン(笑)。"レイス・ライオット"や"ホット・ポテト"にはいつになくモンド色が加味されている(!)。
それにしても軽薄この上ない。楽し...い。
三田 格