「Nothing」と一致するもの

SCARS - ele-king

 先日、入手困難だったファースト・アルバムがリイシューされ、話題沸騰中の日本を代表するヒップホップ・グループ SCARS。こたびの完全復活にあわせなんと、オフィシャルTシャツの発売が決定した。本日7月5日より販売受付がスタート。SからXXLまで、各サイズしっかり取り揃えられているのが嬉しい。完全限定生産とのことなので、締め切られてしまう前に急げ!

A-THUG を筆頭に SEEDA、STICKY、BES、bay4k らが名を連ねる日本語ラップ・シーン最重要グループ、SCARSのオフィシャルTシャツが完全限定で発売!

 A-THUG を筆頭に SEEDA、STICKY、BES、bay4k らが名を連ねる日本語ラップ・シーン最重要グループ、SCARS! 奇跡の復活を果たし、またファースト・アルバム『THE ALBUM』、セカンド・アルバム『NEXT EPISODE』のリイシューも実現して再びシーン内で大きな注目を集める中、オフィシャルのTシャツが完全限定で発売!
 その『THE ALBUM』のジャケットでも使用された赤をベースとする SCARS ロゴを用いたデザインで、ボディは GILDAN (6ozウルトラコットン)を使用し、ブラック・グレーの2色、S~XXL サイズが発売。本日7/5(金)正午から下記サイトのみの完全限定生産での発売となります。受注受付期間は7/22(月)正午までを予定しており(※変更になる可能性もあります)、発送は8月上旬頃を予定しております。また期間中にオーダーしていただいた方にはTシャツのデザインでも使われたSCARS ロゴのステッカーが特典としてついてきます。お買い逃しなく!

*SCARS ロゴTシャツ - 販売サイト
https://anywherestore.p-vine.jp/?pid=144029904

アイテム: SCARS ロゴTシャツ
カラー: ブラック / グレー
サイズ: S / M / L / XL / XXL
販売価格: 3,800円(税抜)
受注締切: 2019年7月22日(月)正午
発送予定: 2019年8月上旬

※ご購入のお客様には SCARS ロゴ・ステッカーが特典としてつきます。
※ボディは GILDAN (6ozウルトラコットン)になります。

参考サイズ (単位:cm):
Sサイズ:身幅 46.5 / 身丈 70.5 / 袖丈 17 / 肩幅 44
Mサイズ:身幅 51.5 / 身丈 72 / 袖丈 17.5 / 肩幅 47.5
Lサイズ:身幅 55.5 / 身丈 75.5 / 袖丈 19 / 肩幅 51
XLサイズ:身幅 60.5 / 身丈 79.5 / 袖丈 20 / 肩幅 58
XXLサイズ:身幅 65 / 身丈 81 / 袖丈 21.5 / 肩幅 65

 というわけで、B面はコーネリアス“未来の人へ”(作詞は坂本慎太郎の曲)のカヴァーだそうで。また、今回フィーチャーされているゑでゐ鼓雨磨は、姫路を拠点に活動するバンド、ゑでぃまぁこんのメンバーということです。
 このシングル、2019年8月28日(水) zelone recordsより発売。夏の終わりかぁ、まだ夏休み前だっていうのに……待ち遠しいですな。

小舟 / 坂本慎太郎 feat. ゑでゐ鼓雨磨

Side A 小舟 (Boat)
(作詞 / 作曲: 坂本慎太郎)
Side B 未来の人へ (Dear Future Person)
(作詞: 坂本慎太郎 / 作曲: 小山田圭吾)

Vocals & Guitar: 坂本慎太郎 
Bass: AYA
Drums: 菅沼雄太 
Vocals & Chorus: ゑでゐ鼓雨磨 (from ゑでぃまぁこん)

Produced by 坂本慎太郎 
Recorded, Mixed & Mastered by 中村宗一郎 @ Peace Music

Aura Safari - ele-king

 ブラッドリー・ゼロ主宰の〈リズム・セクション・インターナショナル〉やテンダーロニアス主宰の〈22a〉など、ジャズ・ミュージシャンと結びついたり、ジャズ色を感じさせるリリースをおこなうクラブ・ミュージック系レーベルの躍進が目立つ近年のサウス・ロンドン。DJ/プロデューサーとして作品制作をおこなうセブ・ワイルドブラッドが主宰する〈チャーチ〉もこうしたレーベルのひとつである。〈リズム・セクション・インターナショナル〉や〈22a〉同様にディープ・ハウスやビートダウン、テクノ、ブロークンビーツなどとジャズを繋ぐような作品が特徴で、セブ以外にイシュマエル(ブリストルのピート・カニンガムのユニットで、イシュマエル・アンサンブルというバンドも組んでいる)、ベン・ホーク、ローレンス・ガイ、モール・グラブ、ハッパ、FYI・クリスなど、なかなか通好みで渋いところをリリースしている。最近ではヒドゥン・スフィアーズがオスカー・ジェローム(ココロコ)とコラボした12インチを出しているが、ロンドンやUKのアーティストだけでなくニュージーランドのカオス・イン・CBD、カナダのジェシー・ファターマン、フランスのフォラムールなどいろいろな国のアーティストもリリースするインターナショナル・レーベルである。今回〈チャーチ〉からデビュー・アルバムをリリースしたオーラ・サファリもイタリアのアーティストである。

 オーラ・サファリに関しては詳しいバイオがないのだが、アレッサンドロ・デレッダ、アンドレア・モレッティ、ロレンゾ・ラヴォラトリ、ダニエレ・メローニ、ニコラス・ラマッテオという5人のDJ/プロデューサーからなるユニットで、ペルージャを拠点に夏はイタリアの国際的なジャズ・フェスとして知られるウンブリア・ジャズ・フェスに出演し、冬はレッド・ゾーン・クラブというところで活動しているそうだ。5人のメンバーの年代や音楽的バックグラウンドは様々で、ジャズ・ファンク、フュージョン、ディスコ/ブギー、ワールド・ミュージック、イタロ・ハウス、バレアリック、コズミックなどがルーツとなる。この中でニコラス・ラマッテオはハウス系プロデューサーとして結構知られた存在で、ニコラス名義で〈チャーチ〉からも作品を出しているので、オーラ・サファリについてもその流れでリリースが決まったのだろう。
 1990年頃に一世を風靡したイタロ・ハウスの代表的アーティストとして、ソフト・ハウス・カンパニーやキー・トロニクス・アンサンブルといったジャジーなテイストのユニットが上げられるが、これらにかかわったフランチェスコ・モンテフィオリは実際にジャズ・ミュージシャンであったし、クラウディオ・モーツァルト・リスポリはアフロ・スタイルと呼ばれる独自のクロスオーヴァーなDJスタイルを作り出したイタリアの伝説的DJだった。ニコラスが彼らの影響を受けたのは明白で、オーラ・サファリはそれをさらにジャズ方向へシフトしていったユニットと言えるだろう。

 “ミュージック・フォー・ザ・スモーキング・ルーム”で聴かれるメロウでオーガニックなフェンダー・ローズ、ハウス・ビートのBPMにシンクロするパーカッシヴなジャズ・ファンク・リズムというのが、まずはオーラ・サファリの基本的なスタイルとなる。エレピに絡むベース・ラインが印象的な“サハラ”は、1980年頃のブギーを取り入れたアジムスを彷彿とさせる曲だ。パーカッションを有機的に絡めたバレアリックな“ジャングル・ジャズ”もかなりアジムスを意識した楽曲だ。ブロークンビーツ調の“ザ・ロスト・リール”でもベースが核となり、オーケストラルなシンセとのコンビネーションで奥行きのある空間を作り出す。ラテン・タッチの“サターン&カリプソ”に見られるように、ワールド・ミュージック的なアプローチも随所に感じられる。トランペットのソロをフィーチャーした“ミッドナイト・ディシプリン”は、ジャズのストイックなムードに包まれると共に、パル・ジョーイやDJスマッシュなどかつてのジャズ・ハウスに通じる楽曲だ。
 最近のイタリアのディープ・ハウス~クロスオーヴァー・シーンでは、ジャックス・マディシン、ターボジャズといったジャズの生演奏を取り入れたアーティストが活躍している。オーラ・サファリもそれらと同じようなベクトルを持つが、演奏の深みやハウス・ビートに縛られない音楽的幅広さという点で、さらにジャズ寄りの位置にいるアーティストと言えるだろう。

Girlpool - ele-king

 インディ・ロックといえば、80年代はザ・スミスやフェルトのようなミゼラリビストが主流だったものだが、21世紀の合衆国においてはすっかりドリーマーたちのスタイルになりつつあるようだ。今年の初頭に出したニュー・アルバム『What Chaos Is Imaginary』が、インディ・ドリーマーたちから賞賛されているロサンゼルスのドリーミー・ポップ・デュオ、ガールプールが来日する。音楽事務所DUM-DUM野村とフォトグラファー、ライターとしても活躍中のYUKI KIKUCHIさん(旧名:キクリン)がいまプッシュしたいアーティストこそ彼ら。まあ、ドリーミーというか、ジーザス&メリー・チェインを彷彿させるバンドです(つまりそうとう良い)。注目しましょう。
 なお、新代田FEVER での対バンは東京インディ・シーンで頭角を現してきているTAWINGSとNo Buses。とても格好いいバンドなので、この機会にぜひ見てください!

GIRLPOOL Japan Tour2019

大阪 9/1(日) 心斎橋CONPASS
Girlpool Japan tour 2019
LINE UP:Girlpool(From CA)
OAアリ!
DJ:DAWA(Flake Records)
出店;Distro Now!
Open 18:00/ Start 18:30  
Ticket:¥4,800(前売/1ドリンク別 先着来場者特典アリ)
お問い合わせ # 06-6243-1666 心斎橋CONPASS

● 出演イベント
東京 9/2(月) 新代田FEVER
Girlpool Japan tour 2019

LINE UP:Girlpool(From CA)
SUPPORT ACT:TAWINGS、No Buses、BYE CHOOSE(Dj)
出店;Distro Now!
Open 18:30/ Start 19:00  
Ticket:¥4,800(前売/1ドリンク別 先着来場者特典アリ)
お問い合わせ # 03-6304-7899 新代田FEVER

東京 9/3(火) 下北沢BASEMENTBAR
Girlpool Japan tour 2019

LINE UP:Girlpool(From CA)
OAアリ!
出店;Distro Now!
Open 18:30/ Start 19:00  
Ticket:¥4,800(前売/1ドリンク別 先着来場者特典アリ)
おい合わせ # 03-5481-6366 下北沢BASEMENTBAR

ツアーチケット先行販売はこちらから受付しております→https://peatix.com/group/44011/view#

Lifted - ele-king

 もうすぐ2010年代が終わる。この約10年はインターネットによって音楽が歴史的な変化を被った時期であった。
 まずは10年代初頭の映像中継配信、次いで10年代中盤のサブスクリプションの普及。そして00年代全般を通底する無数の YouTube の動画たち。これらの普及と浸透を経て、音楽はインターネット上に漂う新たなエーテルになった。どのような音楽も等しく音のアンビエンスになった。
 新しい音楽を聴くことが日常的になり(情報のようになり)、日常に音楽というアートの扉は広く開かれた。くわえて地理的制約も歴史的な条件も外され、過去に生まれた音源がいまのモードによって再発見されるようになった。現実世界もインターネットからフィードバックを経て、数百円で投げ売りされていたアルバムに新たな価値が付与される。
 その結果、当然のことながら、すぐれたディガーによる興味深いミックス音源が生まれた。ヴィジブル・クロークスのスペンサー・ドーランによるジャパニーズ・エレクトロ・ポップ、ジャパニーズ・アンビエントのミックス「Fairlights, Mallets And Bamboo Vol. 2」が話題になり、欧米を中心にディガーたちのトレンドになった(この「ディガー」もまた10年代中期的以降の存在だと思う)。
 リフテッドが2015年にリリースしたモーション・グラフィックスのアルバムとともに10年代中期の電子音楽の重要作といえる。
 リリース当時は、いまや使い古された「OPN以降」という言葉で(間違って?)消費されてしまった感もあるが、本当は先に書いたような「10年代的なディガーの感性」を15年の段階でまとっていたことが重要に思える。何しろ、『1』には〈ミュージック・フォー・メモリー〉が再発見したことで、ニューエイジ再評価の波を作ったといっても過言ではないジジ・マシンがゲスト参加しているのだから。

 そんなリフテッドのニューアルバム『2』がリリースされた。前作『1』が2015年リリースなので4年ぶりである。とはいえ「待ちわびていた」というと、そういうわけでもない。まさかセカンド・アルバムが出るとは思ってもいなかった。
 リフテッドは、あのマックス・Dと、コ・ラ(マット・パピッチ)のコラボレーション・ユニットである。それぞれレーベル主宰やソロとしても重要な仕事を残しているし、先に書いたモーション・グラフィックスまで参加している。いわば『1』限りの企画的なユニットと勝手に思い込んでいた。しかし誰が続編を予想できただろうか。
 だが、1があれば2もある。よく考えなくとも次回作の存在は、前作の名に示されていた。むろんこれは冗談だが(彼らの意図はどうあれ)、この新作が2019年という時代にリリースされる意味はとても大きいと私は考える。そう、このアルバムは「10年代の最後」を飾る音楽なのだ。

 前作と大きく違う点はビートが大幅導入されている点だろう。しかしそのビートはM1 “Now More Than Ever”に代表されるように、どこかずれているように聴こえるし、サウンドの中に綺麗に融解しているようにも聴こえた。また、ジャズと民族音楽とアンビエントがインターネット空間でセッションしているようなM4 “Blackpepper”、M5 “Purplelight Wish なども極めて独創的な音楽であった。90年代初頭的なヒップホップと80年代的なフュージョンが融合したようなM6 “Rose 31”もサイバーエレガントなトラックとでも称したいほどだ。ラストのM7の“Near Future”など、完璧にジャズ+エレクトロニックなトラックで、特にモーション・グラフィックによるピアノの巧みさにも驚いてしまった。
 しかし、どの曲も、地上から浮いているような非現実的なズレや浮遊感に満ちている。そのサウンド空間は、記憶のように、曖昧であり、具体的だ。そのムードは確かに前作『1』を継承している。前作に続きモーション・グラフィックスや、ジェレミー・ハイマン、ジョルダン GCZ、ダウィット・エクランドなどの〈Future Times〉周辺のミュージシャンらも参加している。アルバムには全7曲が収録されており、どのトラックも創意工夫に富み、立体的な音像のミックスもスリリングにして優雅だ。

 そう、本作においてアンビエント、ヴェイパーウェイヴ、ニューエイジ、ジャズ、ゲーム音楽、民族音楽などのサウンド・エレメントがまるで幽霊のように交錯している。その音は仮想空間の中にしか存在しない架空のミックス音源のようでもあるし、時空間の離れた者同志のセッション音源のようにも聴こえる。存在するのに、存在しない。消失しつつあるような音楽。リフテッドの音楽性は、このすべてがインターネットの中に消失していったこのディケイドの終わりを飾るに相応しいように思えてならない(輪郭線が滲んでいくようなアートワークのミニマリズムも10年代的だ)。
 2010年代は、インターネットの中に漂う音楽があった。それらは常に消えかけているし、幽霊のように再生したりもする。じじつ、2010年代の音楽は、ポスト・インターネットという死語が表しているように、どこか実体を欠いた空気のように、エーテルとなってインターネット空間/世界を漂っていた。そのような意味でこの『2』は、まるで2010年代音楽における最後尾のアトモスフィアを放っているように感じられる。この10年の先端的音楽にまつわる事柄が走馬燈のように展開するアルバムといえる。

いま最も注目を集めるカリスマ経済学者
実際に危機を経験したギリシャ元財務大臣の代表作
世界中のメディアから称賛を浴びた起死回生への道筋

14ヶ国で翻訳のNo.1ベストセラー、待望の邦訳がついに登場!

解説:松尾匡

通貨統合が招いた悲劇──
強い者はやりたい放題、弱い者は耐えるのみ?

鋭い洞察と鮮やかな筆致が浮き彫りにする、各国リーダーたちの苦悩と策略、次々と覆される通説、知られざる戦後世界経済の壮大なドラマ

欧州の危機的状況を疑う人は、ヴァルファキスの説明を読むべし ──『ガーディアン』
卓越した経済学者で、政治アナリスト。その並外れた才能が全開になっているのが、欧州危機に関する最近の研究だ。過去半世紀にわたる世界経済の展開と、それがもたらした深刻な影響が欧米社会を脅かしている現状についての、もっとも開明的で鋭い分析 ──ノーム・チョムスキー
素晴らしい本……ヤニスは欧州プロジェクトが民主主義の欠損を原初の設計段階から抱えていたことを見事に説明する……当代のトゥキディデスだ ──ジェフリー・サックス
数少ない私の英雄のひとり……彼の成し遂げたことはとてつもなく重要だ……欧州で守る値打ちのあるものを救うため、ヤニスは正しいことを試みた……EUにとどまり内部から撹乱することだ。それゆえ彼は大きな脅威だったのだ……この見事に書かれた複雑な書物が、わたしたちを憤激させ、思考させる。それこそ、いまわたしたちに必要なことだ。ヤニスのような人々がいる限り、まだ希望はある ──スラヴォイ・ジジェク
才気あふれる人物、欧州で起きていることについて彼の基本的な主張は正しいと思う ──マーティン・ウルフ
ヤニス・ヴァルファキスのように経済学の才に恵まれた財務大臣は稀だ ──ジョセフ・スティグリッツ(ノーベル経済学賞受賞者)
BBCニュースにとって最大の悪夢は他局がヤニス・ヴァルファキス・ショーを流すこと ──マーク・ローソン(『ガーディアン』)
世界的なセレブ ──『エコノミスト』
彼はユーロ圏の複雑な歴史に登場する重要人物の内面に切り込み、彼らの危惧や願望、外的制約などを明らかにする……まるで面白いスリラー小説……倫理感のめざめを促す ──『オープン・デモクラシー』
世界一興味深い男 ──『ビジネス・インサイダー』
堂々とした、読ませる文体。この本の読みどころのひとつは、登場人物の個性が果たす役割が重視されているところだ。 ──『タイムズ・リテラリー・サプリメント』
誠実で知的な正直さをもつ人……卓越した金融経済学者。その業績は欧州各国の政府高官たちをたぶらかしてきた連中を霞ませる……彼の経済学のロジックは論破できない ──マイケル・ブレナー
純粋に進歩的な大義のために立ち上がる彼の勇気と情熱には賞賛を禁じ得ない ──マイケル・ゴーヴ(『サンデー・タイムズ』)

サブプライム住宅ローン危機を予言し、シリザ政権時にギリシャの財務大臣を務めた反緊縮派の筆頭、現在は「Diem25」*を指導する経済学者によるベストセラーがついに翻訳刊行!

* 哲学者のスラヴォイ・ジジェクやアントニオ・ネグリ、言語学者のノーム・チョムスキー、社会学者のサスキア・サッセン、経済学者のジェイムズ・K・ガルブレイス、アクティヴィストのスーザン・ジョージやフランコ・ベラルディ(ビフォ)、ジャーナリストのナオミ・クライン、ジュリアン・アサンジ、音楽家のブライアン・イーノやジャン=ミッシェル・ジャール、ボビー・ギレスピー、映画監督のケン・ローチなど、錚々たる面子が名を連ねる、欧州の民主主義改革運動。

ブレグジットに揺れるヨーロッパ、その危機の原因を三つの歴史的な出来事──ブレトンウッズ会議、欧州の通貨統一、リーマン・ショック──にスポットライトを当てながら、大国アメリカとの関係で入念に考察、ウィットに富んだ筆致で巧みに分析していく本書は、グローバル資本主義経済の歪みを解き明かす希望の光であり、国の借金がことさらに強調され格差が広がり続ける日本、そこに暮らすわれわれにとっても非常にリアルな1冊と言える。

ギリシャ元財務大臣が贈るNo.1ベストセラー、待望の翻訳がいよいよ刊行!

■ ヤニス・ヴァルファキス (Γιάνης Βαρουφάκης / Yanis Varoufakis)

1961年アテネ生まれ。ギリシャの経済学者、政治家。アテネ大学教授。2008年のサブプライム住宅ローン危機を予見したことで知られる。2015年、シリザ政権時にギリシャの財務大臣を務め、債務帳消しを主張。2016年にヨーロッパの民主主義改革運動「DiEM25」を起ち上げる。邦訳に『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社)、『黒い匣──密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』(明石書店)、「ヨーロッパを救うひとつのニューディール」(松尾匡編『「反緊縮!」宣言』所収、亜紀書房)がある。

■ 中野 真紀子 (なかの まきこ)

ニューヨークの独立報道番組デモクラシー・ナウ!の日本語版グループの代表。翻訳業者。訳書にエドワード・サイードの『ペンと剣』(ちくま学芸文庫)、『遠い場所の記憶 自伝』(みすず書房)、『バレンボイム/サイード 音楽と社会』(みすず書房)、ノーム・チョムスキーの『マニュファクチャリング・コンセント──マスメディアの政治経済学』(トランスビュー)など。

■ 小島 舞 (こじま まい)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)哲学科修了。日系シンクタンクを経て、現在外資系企業に勤める。

■ 村松 恭平 (むらまつ きょうへい)

ル・モンド・ディプロマティーク日本語版の会代表理事・翻訳者。フランス語講師。2017年、東京外国語大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。

わたしたちを救う経済学──破綻したからこそ見える世界の真実

目次

序章──赤い毛布
拒絶された手/丘の上のかがり火/「お金はいつ返ってくるの?」/キリギリスはそこら中に/欧州とアメリカ──本書の3つの出来事/わたしたちの1929年/借金と罪/共通の過去の亡霊

1 弱い者は耐えるのみ
ずっと前からわかっていた/荒廃した欧州のための単純なアイデア/弟子が師匠を打ち負かす/メロス人の返答/晴れの日だけの還流システム/政治的な黒字還流か、野蛮に委ねるか/「われわれの黒字、われわれの還流メカニズム」/領分の防衛/米国の赤字、ドイツの不安、フランスの慢心

2 とんでもない提案
フランスの抱擁が二度退けられる/二度目の抱擁/別の手段による戦争/アメリカのグローバル・プラン/ド・ゴールの洞察/ギリシャの引き金/ドル化したカルテル/ラインをまたぐ動乱

3 不安な巡礼者
タガの外れた世界でヘビが這いずる/妙にまともな提案/「ヴォルカーのくそ野郎」、再び/選んだわけじゃない/コンドルセの小さな秘密/ヴォルカーが決闘を挑む/楽観主義の勝利?/時を超えた獣/アテネ巡礼

4 トロイの木馬
サッチャーの間違い/本来の性質ではない/ドイツ連銀の影響力/厚かましい連中/フランスの緩慢な凋落/残酷なグライドパス

5 捨てられたもの
メージャーの愚行、ラモントの入浴/結末/金融化が後押しする/加入の礼儀/共有される通貨、共有されない欠点/ヨーロッパ贔屓、ドイツ嫌い、フランスのエリート

6 逆戻しの錬金術師
熱狂/「否」の3乗/欺瞞/拒絶/財政的水責め/ポンジの緊縮/無力/ドミノ倒しか、それとも登山家の滑落か/無知/ポンジの緊縮の拡大/独裁支配/モンティの抵抗/モンティは行動の必要性を知っていた。そして、彼は行動した!/不履行/何がなんでも?/北と南/帝国の反撃/不穏な緩和/非常にヨーロッパ的なクーデター/悪意

7 バック・トゥ・ザ・フューチャー
ヘビのDNA/移民の夢、ポンジ詐欺による成長、不満の増大/入閣せずに、ナチが権力を掌握/ロトスの実を食べる者たち(すべてを忘れ至福の境地で暮らす)/メッテルニヒの残響/合衆国に戻る/ショイブレの計画/主権なくして民主主義はない/民主主義と裁量権の対決/分権的な欧州化、またはティナをタチアナに置き換える秘訣

8 欧州の危機、アメリカの将来
ヴェルサイユの亡霊/米国の将来が危機にさらされる/ガイトナーの憤怒からルーの懊悩まで/エピローグ──宗教支配の機が熟する

あとがき──不協和音からハーモニーへ

謝辞

補遺──ささやかな提案
どんな解決策にもかかってくる政治的な制約/ささやかな提案──四つの危機、四つの政策/結論──四つの現実的な政策が五つの誤った選択肢にとって代わる

解説 (松尾匡)
訳者あとがき (中野真紀子)

参考文献
索引

Koji Nakamura - ele-king

 きっちり時代に呼応している。まずはそのことを確認しておくべきだろう。数えきれないほど多くのプロジェクトを抱えるナカコーこと Koji Nakamura だけれど、『Masterpeace』以来5年ぶりとなるソロ名義の新作『Epitaph』は、初っぱなから“Emo”のノイズや教会的なドローンが体現しているように、あるいは“Wonder”や“Influence”や“Hood”といった曲の電子音から聴きとることができるように、ジェイムス・フェラーロOPN 以降のアンビエント~エレクトロニック・ミュージックのモードとリンクした作品に仕上がっている。おそらくは近年の Nyantora 名義での活動や福岡の duenn との交流、さらにそこにメルツバウを加えた 3RENSA での経験が大きくフィードバックされているのだろう。『Epitaph』はアンビエント~電子音楽の作り手としてのナカコーの、ひとつの到達点を示している。
 プロデューサーに抜擢された Madegg の尽力も大きい。随所に挿入されるさまざまなノイズや加工された音声、ドローンや具体音の数々は、彼とナカコーとのキャッチボールの賜物であり、ふたりの試行錯誤はたとえば、印象的なストリングスと ACO の筆による押韻の合奏から一転して美しいドローンへと変容する“Reaction curve #2”や、キャッチーなピアノの反復が不穏なノイズを巻き込みつつ徐々に昂揚感を煽っていく“Open Your Eyes”、甘美なハープがシューゲイズ・ノイズに呑み込まれていく“Sense”のようなトラックに見事に実を結んでいる。
 他方でこの新作でナカコーは、驚くべきことに、ブラック・ミュージック的なヴォーカルを披露してもいる。その最良の成果は“Lotus”によく表れているが、そのような「黒い」コード感とリズムがもたらす穏やかなソウルの情性は、いわゆるクワイエット・ウェイヴの流れに連なるものと捉えることも可能だろう。ようするにこの『Epitaph』は、一方でフェラーロや OPN 以降の電子音楽の状況を踏まえながら、他方でいまの静かなソウル~ポップのトレンドとも合流する、きわめて時代的かつ二重に「アンビエント」な作品である、とひとまずは整理することができる。

 興味深いのは、この『Epitaph』という作品がもともとはフィジカルや配信での販売を想定したものではなく、サブスクリプションのプレイリストとしてはじまったものであるという点だ。曲は任意のタイミングでアップグレイドされ、オーダーも随時入れ替わる──そのような移ろい、一時性への着眼は、けっして同じ音の組み合わせが発生しないイーノの『Reflection』とはまた異なる位相で、はかなさのなんたるかを知らしめようとしているかのようだ。当たり前だが、更新されるということは、以前のものが聴けなくなるということで、そのような不可逆な試みに「エピタフ」という題が与えられているのも重要なポイントだろう。墓碑銘とは、未来に向けてではなく、過去に向けて贈られるプレゼント=現在なのだから。
 と、まさに過去こそが『Epitaph』の主題になっているわけだけど、それは Arita shohei の詞によって補強されてもいる。全体をとおしてもっとも多く登場するのは「あの時」という、かつての瞬間や出来事や体験を想起させるための言葉で、他にも「変わる/変わらない」「巻き戻す」「帰る/帰れない」「記憶」といったフレーズの頻出するこのアルバムは、そもそも音の聴取というものが少し前に鳴っていた音の忘却によって成り立っていることを、そしてアンビエントやドローンという着想ないし手法がそのような時間の流れを攪乱するものであることを思い出させてくれる。そう、「思い出さ」せてくれるのだ。だからこそ、一見ナンセンスで、他の曲たちと毛色が異なっているように見える最終曲“No Face”が、カオナシを題材にした abelest のラップをフィーチャーしていることも、強烈な意味を伴って立ち現れてくる──『千と千尋の神隠し』におけるクライマックスが「思い出す」ことだったことを思い出そう(ちなみに abelest は昨年“Alzheimer”という曲で、ザ・ケアテイカーとはまた異なる角度から記憶や忘却と向き合っている)。

 このように、尖鋭的な音響工作と、過去や記憶をめぐる思索──空間と時間双方にたいするアプローチが織り込まれた『Epitaph』は、ちょっと他に類例の思い浮かばない独自の強度を具えているわけだけど、この特異な作品を生み出したのがナカコーであるという外在的な事実もまた無視してはならないポイントだろう。思うに、『Epitaph』には二本の糸が絡み合っている。一本は日本と海外を繋ぐ横の糸。もう一本はメジャーとアンダーグラウンドを結ぶ縦の糸だ。
 Madegg との共謀による海外の同時代的なサウンドの換骨奪胎作業と、どこまでもナカコーのものとしか言いようのないヴォーカルや主旋律、あるいはゆるふわギャングや abelest や ACO や Arita shohei による、日本からしか生まれえないだろう諸要素との類まれな共存は、近年ますます洋楽を聴かない層が増えているというこの国の音楽をとりまく状況において、どう「外」からの影響と「土着性」との折り合いをつけるかということの、ひとつの希望だと言えるし、またそのような作品がアンダーグラウンドではなくメジャーから発表されたことも、デビュー当時からすでにボアダムスや中原昌也に心を奪われていたというナカコーが自然に身につけた、オルタナティヴなスタンスの表れのように思えてならない。

 というわけで、結論。20年以上におよぶキャリアのなかでナカコーは、いまこそもっとも輝いている──過去へのプレゼント=現在たる『Epitaph』には、そう思わせてくれるだけの実験精神と想像力とパッションとそして、音楽にたいする愛がぎゅっと詰め込まれている。

冴えわたるベンジー・Bのセンス - ele-king

 2019年6月20日、ルイ・ヴィトン、メンズの2020春夏コレクションが発表された。ランウェイの舞台はドフィーヌ広場、「少年時代の楽しみ」をコンセプトとし、会場の外観は春の訪れを感じさせる濃い緑で統一された。ラッパーのオクテヴィアンブラッド・オレンジのデヴ・ハインズ、クリス・ウー、スワエ・リー(Swae Lee)といったミュージシャンもランウェイを歩き、話題を集めた。ヴァージル・アブローがアーティスティック・ディレクターを務め、ミュージック・ディレクターを務めるのはベンジー・B。本稿ではこのランウェイで使われた音楽をレヴューした。

 一聴してわかるが、2020SS のコレクション音楽の主役はヴァイオリンだ。ヴァイオリンを主役としつつ、シンセサイザーやサンプリングが絡み合った音楽がヘリテイジ・オーケストラによって再解釈されて演奏される。パリという都市で、ヴァージルのもつサンプリング・再解釈・再構築といった彼の理念を表現しようと思ったとき、ベンジー・Bはヒップホップだけでなくジャズ、コンテンポラリー・クラシック、グライムといった様々な現代的な要素を織り交ぜ調和させることを選んだ。

 演奏を手がけたのはUKのジュールス・バックリーとクリストファー・ウィーラーによって設立されたオーケストラ「The Heritage Orchestra」。ジャイルス・ピーターソン のフェスティヴァル出演、BBC Live Lounge の演奏を務めるなどBBCとの関わりも強く、ピート・トン(Pete Tong)とのコラボレーション・アルバムでは、イビザ・クラシックスを再解釈したアルバムを発表している。

Max Richter - Spring 1 (Four Season Rework)
 コンテンポラリー・クラシックの音楽家、マックス・リヒターが手がけた「春」、この曲がランウェイ全体の文脈を作り上げ、雰囲気をセットしている。マックス・リヒターは66年ドイツ生まれ、英国育ちのコンポーザーで、クラシックとエレクトロニクスを結びつけた音楽性で注目を集め、映画音楽なども手がける。人気を得たのは2018年に公開された映画『メッセージ』で使用された“On the Nature of Daylight”、そしてこの曲で使われたのはヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」をリメイクした『Recomposed by Max Richter: Vivaldi – The Four Seasons』(2012)より“Spring 1”だ。

《四季》の原曲の楽譜を検討した結果、リヒターは既存の音源を使うのではなく、音符単位でリメイクしたほうがと判断。その結果、原曲の75%にあたる素材を捨て、残りの25%の素材に基づきながら新たに楽譜を書き下ろし、ヴァイオリン独奏と室内アンサンブルで演奏可能な“新作”を完成させた
* https://www.universal-music.co.jp/max-richter/products/ucch-1037/

 印象的なヴァイオリンのフレーズは原曲の音符をつなぎながら、再構築されており、確かに原曲の雰囲気を踏襲しているものの異なった響きを得ている。さらにヴィヴァルディの原曲と異なるエッセンスとして、Moog シンセサイザーのベースラインが敷かれている。ヒップホップとは異なる形で、サンプリング・再構築・コラージュといったアプローチが表現されているといえるだろう。

Arthur Verocai - Sylvia
 ブラジルのサイケ・レアグルーヴと呼ばれるアルトゥール・ヴェロカイの1972年リリースの2ndアルバムより。2016年にリイシュー盤が発売されている。ヒップホップとのつながりといえば、リュダクリス、カレンシー(Curren$y)、スタティック・セレクター、スクールボーイ・Qといったラッパーが2000年代中頃にこぞって同曲が収録されたアルバムからサンプリングしたことだ。この曲でも、ホーン使いにはむしろその頃のヒップホップ・チューンを連想させられた。

Arca - Wound
 アルカのアルバム『Xen』より。Xジェンダーやフェミニズムといったモチーフを加工した声によって表現する。原曲では重低音とシンセ、そしてヴァイオリンが鳴らされている。「I am not the wound type」というアルカのメッセージこそ演奏されないものの、性を超えた多様性への目配せがあるのだろう。

Nick Drake / Andy Bay - River Man
 UKのシンガーソングライター、ニック・ドレイクによる“River Man”のアンディ・ベイによるアレンジカ・カヴァー。ここでもギターの後ろでヴァイオリンが奏でられている。ここで、この会場となったドフィーヌ公園自体がパリのセーヌ川の三角州に位置していることと、この曲のタイトル「River Man」とは情景のレヴェルでつながっているはずだ。

Slum Village - Fall in Love
 NYのジャズ・ピアニスト、ギャップ・マンジョーネの“Diana in the Autumn Wind”をサンプリングしたJ・ディラ・プロデュースの1曲。ベンジー・Bの頭の中にはジャズ・ミュージシャン=アンディ・ベイのカヴァーからの、ジャズ・ピアニストの音楽をサンプリングするという連想があったのかもしれない。このランウェイの中でもっとも普通に北部のクラシックなヒップホップであるが、弾き直されることで雰囲気を変え、ランウェイの雰囲気とよくマッチさせている。

Treble Clef - Ghetto Kyote
 UKのグライム・アーティスト=トレブル・クレフ(Treble Clef)による2000年代のインスト・グライム・クラシック。原曲のチープなサンプルベースのヴァイオリンの原曲をオーケストラで再現することでクラス感を醸し出している。ランウェイではフランス移民の出自をもつUKのラッパー、オクテヴィアンが映され、UKのサウンド・カルチャーの新旧世代がランウェイでコラボレーションした瞬間だった。

Tyler, the Creator - Igor’s Theme
 カルフォリニア発のコレクティヴ=オッド・フューチャーのタイラー・ザ・クリエイターの最新作、『 IGOR』のテーマ。「彼がこの街にやってくる」(あるいは裏側の意味としては、「この曲に集中しろ」という言葉が鳴り響いている)というメッセージが鳴り響き、コラージュ的なサウンドスケープが展開された原曲。演奏はヴァイオリンを軸にシンプルなインストゥルメンタル。

 一聴すると、パリ・ヨーロッパという文脈に合わせて、ヴァイオリンという楽器の共通点のみでジャズ、コンテンポラリー・クラッシック、グライムをごちゃごちゃと混ぜているように見える。しかしリサーチを重ねていくと、選曲の裏側にサンプリング・再構築・コラージュといったヴァージル・アブローの基本哲学が透けて見えるのが、このランウェイの面白さであった。

Cabaret Voltaire - ele-king

 リチャード・カーク、クリス・ワトソン、スティーヴン・マリンダーの3人によって結成されたキャバレー・ヴォルテールは、パンクの波が来る前からダダイズムに傾倒し、イーノが標榜した「ノン・ミュージック」を実践するプロジェクトだった。テープループやオシレイターを使って、アブストラクなサウンドコラージュをしていた彼らは、ポストパンク以降のインダストリアル・サウンドを先取りしていたと言えるだろう。
 そんなキャブスの、まさにパンク前夜の貴重な音源『1974-76』、そしてパンク以降に映画のサントラとして制作された『チャンス・ヴァーサス・コーザリティ』の2作が〈ミュート〉よりリイシューされる。前者は、結成初期にバンド自身で録音した音源の中からセレクトされた楽曲集で、1980年にインダストリアル・レコードからカセットでリリースさてあもの。その後1992年に〈ミュート〉からCDで発売され現在は入手困難となっていたが、今回新たにマスタリングされ発売されることとなった。後者は、1979年に同名映画のサントラとして制作された『チャンス・ヴァーサス・コーザリティ』 。これは今回が初のリリースとなる。
 2枚ともに、8月30日(金)にリリースされる。


キャバレー・ヴォルテール
1974-76 (1974-76)

Mute/トラフィック

リマスター作品。1980年にインダストリアル・レコードからカセットで発売され、その後1992年にMute傘下のThe Grey AreaよりCDで再発され現在は廃盤となっていた。本作は、バンド結成初期の音源の中から自身でセレクトされた楽曲集である。それらは全てクリス・ワトソンの自宅屋根裏にあるオープンリールのテープレコーダーで録音されたのだが、その中の数曲が1976年、バンド自身によってカセットテープで限定数リリースされ今となっては伝説のお宝バージョンとなっている。


キャバレー・ヴォルテール
チャンス・ヴァーサス・コーザリティ (Chance Versus Causality)

Mute/トラフィック

初商品化。リマスター作品。1979年、バベット・モンディーニ監督による同名映画のサウンドトラックとして制作された作品。この作品は即興演奏で構成されており、「リズムを減らし、より多重録音を」という当時の一文が残されている。勢いがあり即興的ながら茶目っ気たっぷりで温もりが感じられるこの作品は、この時期におけるキャバレー・ヴォルテールの刺激溢れる瞬間を切り取ったものであり、ヴォーカル・サンプリング等の技法やサウンド全体を通して『Nag, Nag, Nag』と『Voice of America』 のリリースの間を強く結びつけるアルバムとなっている。ジャケットに関しては過去のアーカイブから蔵出しされた素材を使用し、その当時の画像、ライヴ演奏時の写真などを含めそれらをモンタージュ的に配置し、リチャード・H・カークとフィル・フォルステンホルムによってデジタル加工が施されている。

◼︎キャバレー・ヴォルテール
バンド名の由来:1910年代に既成の秩序や常識に対するカウンターとして起こった反芸術運動(ダダイズム)の活動拠点であったスイスのキャバレーの名前にちなんでいる。既存の音楽の解体、再構築という彼らのサウンドと共鳴している。

73年結成。シェフィールド出身。バンド名は1910年代に既成の秩序や常識に対するカウンターとして起こった反芸術運動(ダダイズム)の活動拠点であったスイスのキャバレーの名前に由来する。既存の音楽の解体、再構築という彼らのサウンドと共鳴している。オリジナル・メンバーはリチャード・H・カーク(guitars, keyboards, tapes)、スティーブン・マリンダー(vocals, bass, keyboards)、クリス・ワトソン(81年に脱退/ keyboards, tapes)。79年にデビュー・アルバムをリリースし、15枚のスタジオ・アルバムをリリースしている。82年初来日公演実施。95年以降は活動休止中だが、最も再結成が望まれるバンドのひとつ。現在実に1994年以来のオジリナル・アルバムを制作中である。

www.mute.com
www.facebook.com/CabaretVoltaireOfficial

vol.116 : プライド月間 2019 - ele-king

 NYの夏は野外コンサートが盛りだくさん。先週末はTortoiseが1998年のアルバム『TNT』を通して演奏、その2日前は、テキサスのKhruangbinが雨の中、日本のKikagaku Moyoと一緒にライヴ、そして今週頭はJapanese BreakfastとHatchie、水曜6/26はカナダディで、トロントのAlvvays、カルガリーのthe courtneys、オンタリオのEllis……といった具合だ。

 野外ショーはフリーが多く、がっつりバンドを見たい人は前、雰囲気を楽しんだりまったりしたい人は後ろの方でシートを敷いてピクニックをしている。アルコールは持ち込めないが、スナックや水なは大丈夫。出店の飲み物やフードなどもあり、友だちとハングアウトするには持ってこいである。
 ここ何年かは、プロスペクトパークの野外ショーが気に入ってよく通っていたが、今年はセントラルパークのサマーステージによく来ている。3年前にはUnknown Mortal Orchestraも観たし、良いインディのラインナップが揃っている。
 こういったショーは、寄付をするパトロンで成り立っているので、VIPエリアやメンバーエリアがあるために、私たちは、フロアでぎゅうぎゅうになりながら見るのであるが、ショーがフリーで楽しめるので文句はあまり言えない。
 私が普段行くDIYショーは、若者、クィアが多く、まだまだ少数派だと感じるが、野外ショーはNYという街をここに持ってきたかのように、いろんな種類の人がいる。白人、黒人、アジア人、ラテン系、ユダヤ系、アラブ系など、野外コンサートに来るとあらためて自分はメルティングポットといわれるNYにいる、と感じる。今年は、LGBTと女性が良く目につく。6月はプライド月間ということもあり、マーメイドパレードやイベントがあったり、たくさんの企業がこぞってレインボー旗を掲げている。サマーステージのスポンサーのひとつのキャピタルワン銀行などは、ユニオン・スクエア支店が、レインボー柄になっていたし、他の銀行や企業も自分だけ取り残されたくないというように次々レインボーに染まっている。


 プレイするバンドも女性フロントのバンドが多く、オーディエンスもLGBTに対してとてもオープンに感じる。その背後では、まだまだコンサバな人も多く、この多様性をまとめるのは一筋縄ではいかないのだろうとも感じる。
 今月初めにポルトガルに行ってからというもの、アメリカのエキセントリックさが目に付くようになった。ポルトガルの人はめったなことでは声を上げないが、アメリカの人は小さなものにでもすぐ声を上げる。人種や国の違いと言えばそれまでだし、どちらが良いという問題でもないのだが、NYにいると、NY的にならないと生きていけない。今月最後の日曜日には5番街でLGBTの大きなパレードが行われるそうなので、NYの新たな団結を見れることを願う。


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