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Home >  Interviews > interview with DARKSIDE (Nicolás Jaar) - ニコラス・ジャー、3人組になったダークサイドの現在を語る

interview with DARKSIDE (Nicolás Jaar)

ニコラス・ジャー、3人組になったダークサイドの現在を語る

interview with DARKSIDE (Nicolás Jaar)

電子音楽家ニコラス・ジャーとジャズをルーツにもつデイヴ・ハリントンがはじめたプロジェクト、ダークサイド。彼らは新たなメンバー、トラカエル・エスパルザを迎えトリオ編成となり、新局面を迎えている。

質問・序文:小林拓音 Takune Kobayashi    通訳:青木絵美 Emi Aoki
photo: Lefteris Paraskevaidis
Mar 03,2025 UP

われわれはいつだって「未来の残響」のなかで生きている。音楽はそうした「未来の残響」を「物質」に変える手段のひとつなんだ。

新作『Nothing』の「Nothing=なにもない」には、ハリントンさんが娘さんと一緒に試みた、「なにもしない」というマインドフルネスの体験もこめられているそうですが、他方で、気候変動にたいする無策や偽善的な政治も含まれているようですね。歴史的な大火災の直後にこの新作がリリースされることの意味について、なにか考えたりしましたか?

NJ:(しばらく、1分近く、考えている)大災害というものは、悲しいことに毎年起きている。自分たちが暮らす世界では、イスラエルによるパレスチナ人にたいする大量虐殺のような人災が起こっている一方で、自分たちの消極的な態度や、消費主義的な生活様式を変えることができないことが原因で、地球の気候が急速に変化し、自然災害が頻発するようになっている……。この地球上で危機のない瞬間はないと思う。いつだって、どこかで危機が起きている。スタジオでこの音楽をつくっていたとき、自分たちは世界の残酷な現実から目を背けず、現実を遮断しないようにしていた。できる限り現実を直視しようとしていたんだ。アルバムが発表されたのは、火災がロサンゼルスの大部分を破壊し、地域の広範囲が瓦礫と無に帰したのと同じ日だったと記憶している。自分たちはそのようなことが起こるとは予想もしていなかったし、それは明らかにたんなる偶然の一致ではある。だが、破壊という行為が24時間365日、自分たちの目の前で繰り広げられているという事実は、偶然ではなく、自分たちが自らとった行動、あるいは行動しなかったことの結果なんだ。

2018年に録音され2021年にリリースされた前作『Spiral』には、パンデミックの状況を歌っているかのような “Lawmaker” という曲が収められていました。今回のリリースのタイミングもそうですが、ダークサイドには予言者めいたところがあると感じたことはありませんか?

NJ:あなたの話を聞いて鳥肌が立ったよ。なぜなら大半のひとは、音楽が過去につくられたものであっても、不思議な形で現在を語っていることがあるという事実を見逃しているから。それは予言とかそういうことではないし、デイヴや自分がなにかをしたからでもない。われわれはいつだって「未来の残響(echoes of the future)」のなかで生きているという事実に起因しているんだ。そしてわれわれはつねに「未来の残響」と「過去の残響」とともに歩んでいる。そして、音楽はそうした「未来の残響」を「物質」に変える手段のひとつなんだ。

ふたつのパートに分かれている “Hell Suite” は、おどろおどろしい曲名とは裏腹に、むしろ天国のような雰囲気をもった落ちついた曲です。この曲ではどのようなことが歌われているのですか?

NJ:“Hell Suite (Part I)” について……。ときどき歌詞を忘れてしまうのでデータを確認する、ちょっと待ってて。“Hell Suite (Part I)” は、自分たちがいる場所が地獄であることから、服などを持って、遠い旅に出なければならないひとたちのことを歌っている。彼らは故郷から遠く離れすぎて、いまでは故郷がどんなところかわからなくなってしまったと言う。この曲はじつは7年ほど前に書かれたんだ。この曲のデモは7年ほど前に書かれたもので、当時自分は「やめるのはまだ遅くない(It's not too late to stop)」と歌った。今日、ライヴでこの曲を演奏するときは歌詞を変えていて、「どうやって彼らをやめさせるか?(How will we make them stop?)」と歌っているんだ。この世に地獄をつくりだした人びとに責任を負わせるという意味で。それは多くの場合、ナルシシストで強欲でエゴイスティックな政治家たちだ。“Hell Suite (Part II)” は、ある意味、最初の曲の続きであり、主人公と彼が話している相手が湖で出会うという内容。湖とは、「たったいま」つまり 「いましかない瞬間」。そしてそのふたりが出会うと、互いにあることに気づく──双方とも壊れてしまっているということに。だが、その壊れた姿こそが、二者を分断するのではなく、互いを理解する方法となるかもしれない。

あなたは積極的にガザの状況についてリポストしています。音楽にはつらい現実からわれわれを守ってくれるシェルターの役割がある一方で、逆に音楽は現実へ意識を向ける契機にもなりえます。現代のような大変な世界のなかで音楽活動をやっていくことについて、あなたはどのように考えていますか?

NJ:つねに矛盾を抱えている。そのことについては毎朝、自分と向き合って納得させなければならないものだと思っている。簡単な答えはないけれど、自分がいまでも音楽をつくっているのは、感情的、精神的な理由からであり、心が音楽を必要としているから。自分がこの世界で生き続けるためにはそうするしかないんだ。

最後の曲 “Sin El Sol No Hay Nada” は、太陽がなければなにもない(Without the Sun there is nothing)という意味のようですね。逆にいえば太陽は希望ともとれそうですが、あなたにとっての太陽とはなんでしょう?

NJ:この小さな惑星に生きる人間として、太陽を見上げ、太陽がなければ自分たちは存在しないということを理解できるという事実。これは非常に強力な感覚だと思う。自分たちは生命の源の片鱗を見ることができる。地球上の生命を可能にしているのは太陽からの近さだけでなく、太陽からの適度な距離でもあり、そのバランスには、深く謙虚な気持ちにさせられると同時に、なにか美しいものを感じる。

これまでアルバムを出すごとにライヴ音源もリリースしてきましたが、今回もその予定でしょうか? いつか日本でもあなたたちのライヴが見られる日を待ち望んでいます。

NJ:日本にはぜひ行きたいね。いいアイディアだと思う。『Nothing』のライヴ・アルバムをつくれたらいいなと思うんだけど、その現実からはとても遠い。なぜなら、ほとんどの曲をライヴでどう演奏したらいいのか、まだわかっていないんだよ!

質問・序文:小林拓音 Takune Kobayashi(2025年3月03日)

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