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interview with Kelela and Total Freedom

interview with Kelela and Total Freedom

わたしたちは、シーンになった

──ケレラ&トータル・フリーダム、インタヴュー

斎藤辰也    翻訳:Sem Kai   Mar 28,2014 UP

それこそが歴史的にシーンと呼ばれるものが生まれてきたポイントだと思うんだ。そこにあるんだと言ってしまうこと自体がそれを生むというか。

■あなたがキュレーターを務めたプロジェクト『ブラスティング・ヴォイス』(Blasting Voice)はLPとエキシヴィションの両方の形で発表されましたが、あのヴァリエーション豊かなキュレーションは、何かのシーンを総括するようなものだったのでしょうか?

アシュランド:違うよ。コンピレーションを依頼されたときに「君のシーンにすごく興味があるから何かそれを総括するような物を作ってくれないか」って言われたんだけど、実際それを聞いてすごく笑ってしまったんだ。「それっていったいどういう意味?」って。依頼してきた人のこともまだよく知らなかったし、そのときはそれがすごくおかしくてさ。彼が想像していたようなシーンはそこには存在しなかったし、それぞれのアーティストもその作品もお互いに影響しあわずにすでにそこにあった。だからきっとすごくおもしろい仕事になるなって思ったよ。互いに繋がりのないさまざまな人たちの作品をそこに何か関連があるって想像しながらひとつにまとめていくんだから。でもそれこそが歴史的にシーンと呼ばれるものが生まれてきたポイントだと思うんだ。そこにあるんだと言ってしまうこと自体がそれを生むというか。だから、それはレコードを作る理由としてはじつに楽しいアイデアだったよ。本来のゴールとは違う形だったとはいえどもね。内容の時間軸もバラバラで、2005年頃に知り合いからもらった作品もあればリリース直前に完成した楽曲も入ってる。でもコンピレーションが出るまで誰も聞いたことがなかったものばかりだよ。エキシヴィジョンも同様で、すでに存在していたシーンをリプリゼントしたようなものではないんだ。
どちらもできる限り広範囲から選ぶように努力はしたんだけど、実際思ったより狭い範囲でのキュレーションになってしまったかな。みんな僕の知っているアーティストだったからそういった意味で偏りがあるのはどうしようもないけどね。

わたしが表現した「心地の悪さ」というのは、そこにまた戻ってきたいと感じさせる類いのものなの。それはただ無益に人を傷つけることとは違うのよ。

■ケレラは、『ファクト』誌のインタヴューで、「ほとんどの人に共鳴されるとともに、リスナーを心地わるく(uncomfortable)させ」たいという旨をおっしゃっていましたが、それには何か理由があるのですか?

ケレラ:それは、「不安を感じること」には「成長すること」が伴うというわたしの考えから来ていると思う。いままで心地の悪さを経験したときにはいつも、「どうして不安になるんだろう?」って考えさせられてきた。だってもうそんな気分味わいたくないじゃない? たとえそれが意図的に経験させられたものじゃなかったとしてもよ。
わたしが表現した「心地の悪さ」というのは、そこにまた戻ってきたいと感じさせる類いのものなの。それはただ無益に人を傷つけることとは違うのよ。わたしが言いたいのは、他人のパフォーマンスを見ることによって自分が成長できるような瞬間があるということなの。単に「きみは歌がうまいね」とか「あの曲を見事に次の曲にミックスしていたね」とかそういうことじゃなくて、わたしはあなたに関与したいし、あなたにも関わりを感じてほしい。わたしは芸術というフォーマットを通して人との繋がりを得たいし、それだけが人が歌を歌う理由だと思わない? もしも誰にも触れることができないのだとしたら、わたしにはこれを続ける理由がわからないわ。

■心地の悪さ、不安感などを伝えることで表面的な部分だけでなく、より深い部分でコミュニケーションを取りたいということでしょうか?

ケレラ:そうね。他にいい言葉がきっとあるはずなんだけど、思い浮かばないな……。とにかく人に関わりを感じて(feel engaged)ほしい。それは「OK、いまのわたしはこの場を去ることはできない」とか「あぁ、いまは飲み物を買いにいけない」とか、いまここで起きていることしか考えられなくなってしまう感じ。それはとても楽しいことにもなりえるのよ。とてつもなく幸せな瞬間にも。ただわたしはそこに心地の悪さや不安感のような感情までも含めてあげたいと思うの。クラブだけじゃなくてどんな場所でも言えることだけど、わかりきった内容のものなんてぜんぜんおもしろくないでしょう。そのために、わたしはいつもそこにある空気を破れるように、みんなのスペースに割って入ることができるようにトライしているわ。

■『カット・4・ミー』の歌詞はご自分で書かれているのですか?

ケレラ:基本的には。でも自分ひとりではどうしたらいいかよくわからなくなるときもあって。そんなときにはアズマ(=ングズングズのメンバー)がよく助けてくれる。“エネミー”の歌詞は彼女といっしょに書いたのよ。それからスタジオでもときどきみんなに「ここはこうじゃなくてこう言うべきだ!」って強く言われるときがあった。わたしも「あー! うるさいな!」って感じになっちゃうんだけど、それがよりいい結果に繋がることも多くて(笑)。だからひとりで書いているつもりはないし、みんなでクリエイトした結果だと思ってる。

■パートナーとしてングズングズのアズマを選んだのは何か自分と似ているところがあるからですか?

ケレラ:そう。彼女とは知り合ってまだ1年半くらいだけれど、彼女はわたしとまったく同じところからやってきた人のように感じるの。お互い両親が移民だってことも関係しているのかもしれないけれど、彼女もわたしと同じで、ある種のコンテキストに挑戦しながら生きてきた人だし、いまはともに挑戦していける同士だと思ってるわ。だから彼女とはとても深い関係にあるわね。とくにふたりでいっしょに歌詞を考えてるときは、彼女はとても利口で立ち回りの上手な女の子だって気づかされる。英語的表現で言うところの、「Girl in da hood」ね(笑)。とても頭が良くて、必要なときにさりげなく気を利かせてくれる。それは彼女も同じ経験をしてきたから。そしてわたしも同じことを経験しているということにとても重きを置いてくれている。だから彼女と歌詞を書くことは大好きだし、彼女のフィードバックを聞くのも大好き。「ここはこのままで大丈夫よ~」 「なんでここ変えちゃったのよ~?」「ここはこうするべきだわよ~」って。彼女の意見には反発できっこないわ(笑)。

(そっくりなアズマの声真似に一同笑)

アシュランド:いつもそんな感じだよね。みんな自信ないときは「本当にこれで大丈夫なの? アズマに訊かないと……」ってなっちゃうんだ(笑)。

ケレラ:アシュランドもそういう立ち位置だけどね。

■〈フェイド・2・マインド〉のアネゴ的存在なんですね(笑)。

ケレラ:わたしにとってアシュランドが父親でアズマが母親みたいな感じなのよ。

■みなさん本当に仲良しですね。インク(inc.)のスタジオでおふたりは出会ったときいていますが……

アシュランド:インクのスタジオが初めて会った場所だったっけ?

ケレラ:そうよ。はっきり覚えてるわ。エレベーターの中でふたりで話していて、「友だちがフューチャー・ブラウン(Future Brown)って名前のグループやってるんだけどさ」って言われて、「『フューチャー・ブラウン』だって!? 一体どうしてこのわたしがそのバンドのメンバーじゃないのよ。どこにデモ送ればいいの?」って話したのよ。

アシュランド:(笑)

■そのときのお互いの印象はどうだったのですか?

アシュランド:僕はすでにそのときレコーディングしていたティーンガール・ファンタジー(Teengirl Fantasy)のデモで彼女の歌声を聴いていたから、その印象が強かったかな。ケレラはたぶんなんで僕がそこにいたのかも知らなかったと思うよ。僕がニック(筆者註:ティーンガールのニックだろう)の彼氏だったってことは知ってたんだっけ?(笑)

ケレラ:わたしはそう聞いてたわよ。アシュランドが素晴らしいDJだってことも聞いてたけど、プレイを見たことはなかったし、彼がそこにいることの背景とかをまだぜんぜん理解してない状況だった。

アシュランド:彼女はインクのことも知らなかったんだ。その時ティーンガール・ファンタジーがスタジオを探していたから僕がインクのふたりに頼んで使わせてもらっていたんだけれど、それでその日に知ったんだよね。

ケレラ:インクも知らなかったし、トータル・フリーダムも知らなかったの。そのときにはティーンガール・ファンタジーのことも知ったばかりだったし、その背景にある世界っていうのもわたしにはまったく新しいものだった。〈フェイド・2・マインド〉も〈ナイト・スラッグス〉もぜんぜん知らなかった。

アシュランド:君はいったいどこからやってきたのさ(笑)? ティーンガール・ファンタジーの“EFX”のデモを聴いたときに、「これはいますぐにでもヴォーカルを見つけてきて完成させるべきだ! 宅録じゃ駄目だよ、絶対にスタジオでだ!」って言ったんだ(笑)。ケレラはそのときにはもうティーンガール・ファンタジーのふたりとは知り合いだったのかな?

取材:斎藤辰也(2014年3月28日)

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Profile

斎藤辰也/Tatsuya Saito斎藤辰也/Tatsuya Saito
破られたベルリンの壁の粉屑に乗って東京に着陸し、生誕。小4でラルク・アン・シエルに熱狂し、5年生でビートルズに出会い、感動のあまり西新宿のブート街に繰り出す。中2でエミネムに共鳴し、ラップにのめり込む。現在は〈ホット・チップくん〉としてホット・チップをストーキングする毎日。ロック的に由緒正しき明治学院大学のサークル〈現代音楽研究会〉出身。ラップ・グループ〈パブリック娘。〉のMCとKYとドラム担当。

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