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edbl

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@Blue Note Tokyo

2024年3月23日(土)

文:小渕晃 撮影:古賀恒雄 Mar 28,2024 UP

 1st、2nd ステージともにチケットはソールドアウト、客席はおおよそ男女半々、多様で熱心なファンが詰めかけた edbl 初のバンド・セットでの来日ライヴ。3月23日、BLUE NOTE TOKYO での 1st ステージを観た僕がまず感じたのは、イギリスのバンドならではと言える伝統的なステージ運びのさすがのウマさと、そして、ヒップホップ・ビートをベースとするライヴにおける演じる側、聴く側、双方の成熟度合いの高さだった。

 打ち込みメインのクールなヒップホップ・ビートと、元々はギタリストである edbl 自身が奏でるギターや、キーボード、ホーン、そしてヴォーカルといったメロディアスな要素の組み合わせの巧みさで、サウス・ロンドンの地から世界中でのブレイクを果たした edbl。ヒップホップ・ビートを用いるアクトでもいまや通例となったバンド・セットでのライヴは、インストの “Seven Eleven” で幕を開ける。ドラムスの Andrew Finney、ベースの John Wright、キーボードの Jim Baldock に続いてステージに上がった edbl は、他のメンバーとともにコーラスも担いつつ、やや高い位置に構えたテレキャスターのサウンドで曲をリードしていく。大半の曲でリード・ヴォーカルと、そしてラップもひとりで担う大活躍を見せた Jay Alexzander も登場し始めた次曲は “I'll Wait”。早くも Jay と edbl が客席煽りのウマさを発揮し、場内の熱気はグングンと高まっていく。つくりだす音楽とは裏腹に edbl はとてもアツい人で、彼のテンション高めの言動が周りの人々を巻き込んで、驚異的なリリース量の原動力になっているんだなと、謎がひとつ解けた感もあった。


 出し惜しみなし、人気曲のオンパレードだったこの日のライヴ。“No Pressure” に “Just The Same” と続けた後は、ゲスト・ギタリスト、Kazuki Isogai がステージに呼び込まれる。彼と edbl の共作アルバム『The edbl × Kazuki Sessions』から “Worldwide” と “Lemon Squeezy” をプレイ。共作はインターネット上のやり取りでなされたもので、面と向かっての共演はこのときが初となった両者。それでもやはり、同じ時代に同じタイプの音楽を嗜好するふたりのギター・プレイの相性は抜群で、弾きすぎない、ヒップホップ時代ならではのクールなかけ合いで客席を魅了した。
 そう、この夜の edbl バンドは、ヒップホップ・ビートのレコードをライヴでどう聴かせる(再現する)かという、かれこれ30年に及び演じ手側に突きつけられてきた命題の、最適解のひとつを示していたように感じた。2022年7月に、ロンドンの PizzaExpress Jazz Club でおこなわれた彼らのライヴはその音源が公開されている。トランペッターがいないだけで他のプレイヤーはこの夜と同じだけど、そのおよそ2年前の演奏に比べても全体のサウンドは、はるかにブラッシュアップされていた。「すべての楽器を打楽器のように」扱いアフリカン・アメリカンのファンク・ミュージックを確立したのはジェイムズ・ブラウンだけど、この夜の4人の演奏はまさにそれだった。ドラムスもベースもキーボードも、とにかく最小限の音しか奏でない。皆がパーカッシヴで、サステインはほとんど聞かせず、ビートを紡ぐことに専念。主役である edbl だけは時折、エモいソロなども交えギター・ヒーロー的な姿も演じて見せたけど、他の3人がミュージシャンズ・エゴ的なものを見せたのはメンバー紹介時のソロだけだ(それでも3人は終始、とても楽しそうに演奏していた)。90年代半ばにザ・ルーツがブレイクしてきた際、ドラム・マシンのように叩くクエストラヴが話題になったけど、「いまのロンドンのバンドは、ここまで来ているんだ!」と感嘆するほど、ヒップホップ・ビートの生バンド演奏はもはや次の段階に達していると感じられた。そして、そんなバンドが聴かせるミニマルなビートのウマみを感じとり、全員がノリノリだった客席を見ていると、聴く側の進化があってこその、演じる側のさらなる進化だとも思えた。

 “If There's Any Justice” “Be Who You Are” に続いて披露されたデビュー曲 “Table For Two” で改めて客席が沸く。ミニマルなサウンドながら、ギター・インストのジャジーなヒップホップからR&B、ソウルと多彩な曲の数々を連発し、飽きさせないステージングはこれもさすがだ。“Temperature High” “Cigars” “Never Met” に続けたアシッド・ジャズなノリのダンサブルな “Too Much” で盛り上げた後、“Lemonade” で本編は終了。“Nostalgia”、リミックスが最新シングルとしてリ・リリースされた “The Way Things Were” を演じたアンコールも大盛り上がりで、最初から最後まで実に心地よく楽しいショウだった。

文:小渕晃