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Kurt Rosenwinkel Bandit65

ElectronicFusionJazz

Kurt Rosenwinkel Bandit65

Searching The Continuum

Heartcore / Mocloud / ウルトラ・ヴァイヴ

Tower HMV Amazon iTunes

小川充   Feb 04,2020 UP

 2017年に『カイピ』という素晴らしいアルバムを残したカート・ローゼンウィンケル。現代ジャズにおける最重要ギタリストのひとりと言われる彼だが、Qティップをプロデューサーに迎えた出世作『ハートコア』(2003年)を皮切りに、ブラッド・メルドー、ジョシュア・レッドマンらと組んだディープなモダン~コンテンポラリー・ジャズ集の『ディープ・ソング』(2005年)、盟友のマーク・ターナーらを含む自己のグループで現代ジャズとロックの中間をいくライヴ盤『ザ・リメディ』(2006年録音、2008年発表)、エリック・ハーランドらとのトリオによるスタンダードなバラード・アルバム『リフレクションズ』(2009年)、ポルトガルのビッグ・バンドと共演してラテン音楽へのアプローチを見せた『アワー・ワールド』(2010年)、アーロン・パークスらと共演してジャズ・ロックやプログレ的な演奏を披露した『スター・オブ・ジュピター』(2012年)と、作品ごとに異なった表情を見せてきた。そんな彼が『カイピ』ではペドロ・マルティンス、アントニオ・ロウレイトといったブラジル人の新世代ミュージシャンたちと組み、ミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタなどのミナス・サウンドに通じる世界を作り出した。先日サンダーキャットのインタヴューをおこなう機会があったのだが、彼もこの『カイピ』を大好きなアルバムだと述べている(ちなみにサンダーキャットは新作でペドロ・マルティンスと共演している)。

 そして『カイピ』のリリース後、カートは過去をリセットするかのごとく、新たなバンドを組んで活動を開始する。それがバンディット65というグループで、メンバーはデヴィッド・シルヴィアンらとの共演で知られるティム・モッツァー、ビラルやウータン・クランのサポート・ドラマーを務めたこともあるジンタス・ジャヌキソスと組んでいる。
 バンディット65はまずライヴ活動から始まって、2017年から2018年にかけて世界中をツアーしている。ヨーロッパからアメリカを回り、2018年初頭には日本でも公演をおこなった。そうした公演をまとめたものが本ライヴ録音の『サーチング・フォー・コンティニュウム』である。残念ながら日本での録音は収められていないが、ストックホルム、マドリッド、ウィーン、ベルリン、ロサンゼルス、フィラデルフィアでの録音を収録。バンディット65はこれまでカートが組んできたグループとはまた異なるタイプのバンドで、最大の特徴はカートとティムのギター・デュオをフィーチャーし、シンセはじめエレクトロニクスをふんだんに取り入れている点だろう。インプロヴィゼイションに重点を置き、音響やエレクトロニクスを最大活用したポストロック的な側面を見せるプロジェクトと言える。

 柔らかで暖かみに満ちた『カイピ』の世界とは一変し、『サーチング・フォー・コンティニュウム』は全体に先鋭的で緊迫感に満ちたアルバムとなっている。バラバラな日時の録音を集めたアルバムであるのにかかわらず、バンディット65のコンセプトが明確であるがゆえ、統一した世界や空気感を生み出している。
 アブストラクトな音響の中でディープなギター・トーンが広がる “イノリ” は、そのタイトルのようにまさに「祈り」を思わせるスピリチュアルな世界が広がる。ギターとシンセと声をハーモナイズした空間は、現代ジャズとアンビエントの結びついた先を見せてくれる。マドリッド録音の “サグラダ” では、オルガンの音がまるで教会の大聖堂でライヴがおこなわれているかのような錯覚に陥らせる。微妙なノイズを含んだファズ・ギター、波のきらめきを思わせるようなギター音、メタリックで宇宙の孤独を感じさせるギター音など、さまざまな音響を作りだすギターの可能性を導き出した曲だ。アフロ・ラテンなポリリズムとギターの重層的なメロディが織りなす “ブルーマー”、静寂と幻想のコズミックな音世界が広がるフリー・インプロヴィゼイションの極致 “インターステラー”、ギターのテクニカルな早弾きとワードレスなヴォイスのユニゾンがエモーションを掻き立てて疾走していく “アット・ザ・ゲイツ” などが並ぶ中、アコースティックで抒情的なギター演奏を見せる “イン・タイム” は比較的『カイピ』の世界に近いだろうか。そしてミニマル・ミュージックを通過した演奏からドラマティックな終幕へと向かう “マジカル” と、ギターのテクニック、エモーション、音響などあらゆるものを駆使し、アンビエントでありながら濃密な世界が作り出されている。

小川充

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