ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. ele-king presents HIP HOP 2025-26
  2. TechnoByobu ──テクノ屏風、第2弾は『攻殻機動隊』
  3. 坂本慎太郎 - ヤッホー
  4. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  5. DIIV - Boiled Alive (Live) | ダイヴ
  6. IO ──ファースト・アルバム『Soul Long』10周年新装版が登場
  7. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  8. Columns 1月のジャズ Jazz in January 2026
  9. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  10. interview with Sleaford Mods 「ムカついているのは君だけじゃないんだよ、ダーリン」 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー
  11. Reggae Bloodlines ——ルーツ時代のジャマイカ/レゲエを捉えた歴史的な写真展、入場無料で開催
  12. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  13. aus - Eau | アウス
  14. 見汐麻衣 - Turn Around | Mai Mishio
  15. HARU NEMURI ──ラッパー/シンガー・ソングライターの春ねむりによる、参政党さやへの憤怒の一撃
  16. 電気グルーヴ - and the ARENA ~みんなとみらいのYOUとぴあ~ @みなとみらいのぴあアリーナMM
  17. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  18. 野田 努
  19. interview with Shintaro Sakamoto 坂本慎太郎、新作『物語のように』について語る
  20. interview with Kneecap (Mo Chara and Móglaí Bap) パーティも政治も生きるのに必要不可欠 | ニーキャップ、インタヴュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Shafiq Husayn- The Loop

Shafiq Husayn

FunkHip HopJazzSoul

Shafiq Husayn

The Loop

Eglo

Bandcamp Spotify HMV iTunes

大前至   Apr 22,2019 UP

 ジュラシック5、ファラオ・モンチからN.E.R.D.、エリカ・バドゥまで、様々なアーティストのプロデュースやリミックスを手がけ、さらに自らの名義でもシングルやアルバムを多数リリースし、一時はカニエ・ウェストのレーベル、〈グッド・ミュージック〉と契約を結ぶなど、2000年代のLAシーンにて飛ぶ鳥を落とす勢いであった、オマス・キース、タズ・アーノルド、シャフィーク・フセインからなるグループ、サーラー・クリエイティブ・パートナーズ(以下、サーラー)。ヒップホップをバックボーンにしながら、フューチャリスティックなR&Bやファンクの要素も巧みにミックスしたサーラーのサウンドは、まさに時代を先取ったものであった。さらにサーラーの活動停止後も、メンバー3人の幅広い人脈によって、ケンドリック・ラマーアンダーソン・パーク、さらに現行のLAジャズ・シーンに至るまで、実に幅広く影響を及ぼしている。そんなサーラーのメンバーの中で、当時はキャラクター的に一番目立たない存在でありながらも、実はサウンド的には最も重要なポジションにいたのがシャフィーク・フセインだ。その彼がソロ・アルバムとしては約10年ぶりとなるセカンド・アルバム『The Loop』をリリースした。

 前作『Shafiq En' A-Free-Ka』ではサーラーのサウンドから、さらにアフロビートやミニマルなエレクトロニック・サウンドの要素を強く取り入れるなど、攻めた音作りを行なっていたシャフィークだが、時代がようやくサーラーに追いついたとも言えるこのタイミングだからこそ、本作での彼のサウンドはいまの時代のムードに見事にフィットしている。サンダーキャットカマシ・ワシントンクリス・デイヴ、ミゲル・アトウッド・ファーガソンといった名うてのミュージシャンとのセッションを基盤に、エリカ・バドゥ、アンダーソン・パーク、ロバート・グラスパー、ビラル、ハイエイタス・カイヨーテ、ファティマ、ジメッタ・ローズなど実に多彩なゲスト・アーティストを迎え(さらにフライング・ロータスが一曲プロデュースで参加)、この有機的なコネクションによって構築されたサウンドには、プリミティヴでありながらも、宇宙や未来、あるいは宗教的な要素までも、全てを内包する。日本人アーティストの青山トキオ氏が手がけたジャケット・カバーも、本作のそんなイメージを見事に表現しており、アルバム全体から溢れ出る厚みと温もりのある豊かな音の広がりは、ダイレクトに聴き手の心を揺さぶる。さらに加えると、低音の効いたシャフィークの声もひとつの大きな魅力になっており、要所要所で出てくる彼のヴォーカルと女性コーラスとの絡みは、実に刺激的だ。3曲目の“My-Story Of Love”はそんな彼の声の魅力を堪能出来る一曲であり、さらにこの曲から“DTM (The Whill)”、ビラルをフィーチャした“Between Us 2”へと続く流れは、個人的にも本作のピークとも言えるほどの輝きを放つ。

 アルバム後半にはサーラーのオマス・キースもゲスト参加しているが、本作リリースから数日後にシャフィークは自らのサウンドクラウドのアカウントで、オマス・キースとタズ・アーノルドのふたりがゲスト参加した“If You Miss You Kiss You”という曲を公開した。サーラー的スローバラードとも言えるこの曲は、おそらく本作のために制作されたものの残念ながら未収録となった一曲と思われるが、彼らのSNS上ではサーラーの復活を匂わせるような投稿も見られ、彼らのファンとして、今後の動きに期待したい。

大前至