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思い出野郎Aチーム

FunkSoul

思い出野郎Aチーム

夜のすべて

カクバリズム

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小沼理   Oct 20,2017 UP

 いかにこの夜を楽しむか? 彼らにとってその問いは、「いかに人生を善く生きるか」と同じなのかもしれない。生き急ぐ男たちにもたらされる、ナイト・ライフの祝福。7人組のソウル・ファンク・バンド、思い出野郎Aチームの2ndアルバム『夜のすべて』は、ダンスフロアへの敬虔な信仰にあふれている。

 思い出野郎Aチームは2009年の夏、多摩美術大学の仲間たちで結成された。大学卒業後はそれぞれが働きながら多数のライヴやフェスをこなし、2012年には新人アーティストの登竜門とも呼べるFUJI ROCK FESTIVALのルーキー・ア・ゴー・ゴーに出演。2015年には1stアルバム『WEEKEND SOUL BAND』をリリースした。Ovallのmabanuaプロデュースによる洗練された音の中に泥臭さが残るサウンドで、限られた週末を音楽に捧げる生活への焦燥と愛しさをシャウトに滲ませる。まだ自分たちにもはっきりと掴みきれていないようなバンドの美学を必死に貫こうとしているような、情けなさと気高さが混在する1枚だった。
 『WEEKEND SOUL BAND』が彼らの日々全体のサウンドトラックだったとすれば、2年半ぶりにリリースされた今作『夜のすべて』の舞台は週末のダンスフロアとその周辺だ。終わらない仕事を切り上げた金曜の夜から、再び満員電車に乗って職場へ向かう月曜日の朝までのストーリー。やけのはら、VIDEOTAPE MUSICら多彩なゲストを迎え音楽的にも幅広かった前作に対し、今作はソウル~ファンクで全体を統一し、メンバーのみで作り上げたことで、物語としての没入感を高めている。

 彼らは夜を謳歌する。それが限られていて、人生のすべてではないことを知っているからだ。タイトルトラック“夜のすべて”でヴォーカル・高橋一がしゃがれた声で繰り返す「スゲー自由 朝まで」というフレーズは、自由じゃない時間を予感させるし、昼夜が逆転していく様子を歌ったメロウ・ナンバー“生活リズム”は、規則正しさから逸脱する甘やかな背徳感が最大のスパイスになっている。退屈な毎日は続く。だけど、今だけはそこから逃れられる。有限の逃避行が生み出すのは、ベッドルームにはないグルーヴとドラマだ。だから美しいスウィート・ソウル“ダンスに間に合う”では、手遅れなことで溢れた世界を憂いながら、音楽が鳴り続けているフロアに希望を託す。

 そしてフロアを見渡せば、同じような切実さを抱えた隣人が踊っている。このところ、CM起用されたモデルに人種差別的な誹謗中傷が飛び交ったり、偏見を助長する前時代的なキャラクターをテレビ局が突如復活させたり、本当にうんざりする話ばかり耳にした。そんな中で、思い出野郎Aチームの音楽はダンスフロアを現実に対するシェルターにする。

君が誰でも良いぜ
スポットライトに照らされて
僕らの肌はまだら模様
話す言葉は歌に溶けて
聞いたことのないラブソング
信仰よりもコード進行
右左よりも天井のミラーボール “フラットなフロア”

 ここでは国籍も、人種も、信仰も関係なく、スポットライトに照らされた人々の肌が同じまだら模様に染まる。かつて黒人やゲイたちの解放運動へと結びついたナイトクラブの歴史が、2017年の日本と接続されるように。フロアの亡霊の力を借りて、踊りながら拳を握りしめる。

 抑圧された日常からの解放。その時間はあっという間に過ぎていく。週末のあっけなさを象徴するかのように、アルバムは明るいラウンジ・ファンク調の“月曜日”を最後にたったの42分で終わってしまう。
 10月1日にWWWで行われた彼ら初のワンマン・ライヴでも、高橋は翌日が月曜日であることを嘆いたあとにこの曲をプレイしていた。その嘆きは観客の多くに親しみを感じさせただろうし、バンド・メンバーが働きながら音楽を続けていることは、このアルバムの物語に大きな説得力を与えているだろう。彼らが「週末はソウルバンド」な生活をこれからもずっと続けていくかはわからないが、バンドが着実に成長を遂げていく中で、『夜のすべて』が今の彼らのリアリティを昇華させた1枚であることは間違いない。

 息継ぎのような夜が終われば、再び遠泳のような一週間がはじまる。退屈で、理解しがたいラベリングに溢れ、これがすべてと言い表せない複雑な日常を、どうにかまたやり過ごす。だけどどんなにひどい時代でも、生き抜く人のために輝く時間があり、諦めなければ必ずそれに間に合う。そして遊び疲れた明け方にミラーボールから放たれた光線は、重たいドアの隙間から漏れ出て太陽の光と溶け合い、この日常の中をたしかに照らしているのだ。

小沼理