ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Roy Montgomery & Martha Skye Murphy - Nebular | ロイ・モンゴメリー、マーサ・スカイ・マーフィー
  2. Juan Atkins ──デトロイト・テクノの創始者、ホアン・アトキンスが日韓ツアー、来日は13年ぶり
  3. Félicia Atkinson - Sans Visage | フェリシア・アトキンソン
  4. R.I.P. Sensational (Colin Julius Bobb) センセーショナルとの思い出
  5. 自転車日記 - デヴィッド・バーン 著 / 東辻賢治郎 訳
  6. The Durutti Column - Renascent | ザ・ドゥルッティ・コラム
  7. DMBQ ──恒例の自主企画、2026年はkanekoayano、LAUSBUB、YPY、Hedigan'sと競演
  8. Various - Peace Anthems | レッド・フック・レコーズ
  9. Cornelius ——コーネリアスがアルバム『Refractions』のリリースと新曲“Aeons”の配信開始を発表
  10. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  11. interview with Toru Hashimoto 橋本徹がブラジリアン&ブリージンなコンピに込めた渋谷系の哲学 | 『Free Soul』&『Cafe Apres-midi』最新作をめぐって
  12. Cornelius ——コーネリアス、ニュー・アルバム『REFRACTIONS』の詳細を発表
  13. 野田 努
  14. Columns スクエアプッシャーはいつだってテクノロジーの限界を超えていく ――7月20日(月祝)@昭和音楽大学、特別講義のレポート
  15. heykazmaの融解日記
  16. Cornelius ──ドキュメンタリー映像シリーズ第4弾が公開
  17. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  18. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  19. Martha Skye Murphy - Um | マーサー・スカイ・マーフィ
  20. Technics ──SL-1200シリーズ誕生55周年記念、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$UによるDJが配信

Home >  Reviews >  Album Reviews > Declan McKenna- What Do You Think About The Car?…

Declan McKenna

PopUK Rock

Declan McKenna

What Do You Think About The Car?

Columbia/ソニー

Tower Amazon

野田努   Aug 04,2017 UP

あんたは携帯と髪の毛いじりに時間を取られる過ぎているんだよ。 “ヒュモンガス”

 年を食っちまった人間は、こういうときについつい、この青年の18という年齢のことを必要以上に考えてしまうのだろうか。実際のデクラン・マッケンナのキャリアは数年前からはじまっている。“ブラジル”という、ブラジル・ワールドカップ時のFIFA汚職事件を糾弾する曲が2年前。それは16歳の少年の作る歌の主題として……、イングランドに生まれながらワールドカップを醒めた目で見ているというだけでも非凡なのかもしれない。が、しかし、16歳の澄んだ目だからこそ狂騒に飲み込まれず、大人の堕落を見抜く観察眼を忘れない。

 アルバムの最初の3曲は、かなり良い。くだんの“ブラジル”も、歌詞を知らなくても充分に魅力的な曲で、“ヒュモンガス”も“ザ・キッズ・ドント・ワナ・カム・ホーム”も、ファーストの頃のプライマル・スクリームというか、90年代風というか、ある世代が聴いたら懐かしいことこのうえなく、丘の上を駆け上がるかのような高揚感の、フックのあるメロディを持ったUKインディ・ロックらしい曲だ。アルバムの多くの曲をプロデュースしているのはジェームス・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ/ザ・ラスト・シャドウ・パペッツ)。

 しかしながら、ドレイクの新作を聴いていても感じることだが、USのR&B/ヒップホップ大人気のUKにおいて、自国のインディ・ロックの脈を全開する若者なんていうのは、いまとなっては少数派になるのではないだろうか……。

ぼくとは、(あなたが思っているようなぼく以外の)ほかの誰かみんなだ。 “アイ・アム・エヴリワン・エルス”

 ラップだけがユース・カルチャーを代弁しているわけではない。ハートフォードシャー生まれの18歳のシンガー・ソングライターは、彼の目を通して見える社会と、そして怒りや抗議,不満を歌う。言葉を持った音楽は、英語力のある方ならともかく、まあ、さすがにchavは訳注を入れるべきだと思うけれど、それでも歌詞対訳のついた日本盤がいい。デヴィッド・ボウイ的な挑発的だが曖昧な言い回しのなかに、それこそスリーフォード・モッズではないが緊縮と福祉、宗教、暴力、性、これら社会的トピックが彼の言葉で描かれているように思われるる。“イソンバード”でのリフレイン「歩けないなら走ればいいさ」は暴動を望んでいるかのようでもあり、「君のクイーンになりたい」も(これこそボウイを意識しているのかもしれないが)面白いし、『車についてどう思うか?』というアルバム・タイトルもリスナーに“考えること”を促しているわけだが、何にせよ、本作で歌われる力ある(生意気な)言葉もUKインディ・ロックの、言うなればお家芸である。

 デクラン・マッケンナはフェイクかリアルか? 

 数年前の「公営団地のボブ・ディラン」ではないが、マッケンナに関してメディアは「世代の声」といっているようだ。“ザ・キッズ・ドント・ワナ・カム・ホーム”における子どもたちの祝福的なコーラスを聴いていると、たしかに「世代」と言いたくはなる。が、それはひとつの演出だろう。「世代の声」とは、年を食っちまった人間の願望(フェイク)だ。

 デクラン・マッケンナはフェイクかリアルか? 

 『ホワット・ドゥ・ユー・シンク・アバウト・ザ・カー?』は、まだ手なずけられる前の、若者らしい自信と反抗心、そして疑いがあり、まとまりには欠けるが、言いたいことが詰まっている、若さゆえの輝きがある、素晴らしい10代の作品だ。ぼくはリアルだと思う。第一基準は満たしている。歴史は「NO」という人たちによって作られるのだから。

野田努